テレビ朝日系 火曜21時ドラマ『星降る夜に』の感動を完全収録したシナリオブックがついに発売!
心ときめく大人のピュア・ラブストーリーから、一部試し読みをお届けします。
★人物紹介★
雪宮 鈴(吉高由里子)……産婦人科医。常に冷静に振る舞い、誰かに頼ることが苦手。息抜きに行ったソロキャンプで、10歳下の柊一星と運命の出会いを果たすことに。
柊 一星(北村匠海)……遺品整理士の青年。感情豊かで明るい性格。音のない世界を生きる。手話や筆談などで会話をする。偶然出会った雪宮鈴に一目惚れする。
北斗 千明(水野美紀)……「遺品整理のポラリス」の社長。一星が遺品整理士になるきっかけを作った人物。
佐々木 深夜(ディーン・フジオカ)……45歳の新米医師。美しい風貌とは裏腹に、衝撃的なヘタレポンコツで、病院中のスタッフから毎日叱られている。
駅近く(5話振り返り)
街はバレンタインモード。
歩いている鈴。
その手にさっき購入したらしい、チョコレートの小さな紙袋。
遺品整理のポラリスのトラックの中
5話ラストの手前に時間を戻して――トラックの運転席に一星。助手席に桜。
車が駅の近くに停まる。
桜 「鈴先生とデート?」
一 星「(聞こえていない。手話で)今日どこ行くの?」
桜 「(手話で)どこだっていいじゃん」
一 星「(手話で)何怒ってんだよ(と、桜の頬をぶにっとつかむ)」
桜 「いった」
一 星「(鼻で笑い、手話で)ガキだな」
桜 「…………」
一 星「(何で降りないのかな)………?(手話で)あ。そういえば昨日差し入れで桜餅もらってさ。お前子どもの頃桜餅好き過ぎて、(思い出し笑いしながら)食い過ぎて腹壊したことあった(よな)」
桜 「(一星に衝動的にキス)」
一 星「………!!」
駅近く
トラックを見つけた鈴、一星と桜のキスを見て立ちすくむ。
鈴 「………!!」
ポラリスのトラックの中
一 星「(桜の気持ちに、まったく気づいていなかったので、たまげる)」
桜 「(手話で)もうガキじゃない」
一 星「…………」
桜 「(手話で)一星が好き」
一 星「…………」
桜 「(手話で)初めて一星が家に来て、『桜』って手話を教えてくれた日から、ずっと」
桜の回想・遺品整理のポラリス事務所・駐車場
自転車を修理している一星。
小学校中学年の桜が、走って来て一星に抱き着く。
桜 「一星」
一 星「(妹のように抱きしめる)」
桜 「(手話と声で)一星、こんばんは」
一 星「(手話で)すごい!」
桜 「(大きく口を開けて)さ・く・らはどうやんの?」
一 星「(手話で)桜」
桜 「(手話と声で)桜。一星、桜」
一 星「(うなずく)よきよき」
微笑ましく見ている北斗。
遺品整理のポラリスのトラックの中
桜 「(一星を見つめ、手話で)気づかなかった? 一星鈍感だもんね」
一 星「(桜を見つめ、手話で)俺は」
桜 「(一星の手をつかんで、手話を止め、声で)言わないで」
一 星「…………」
桜 「わかってるから」
一 星「…………」
桜 「(手話と声で)一星が鈴先生を好きなの、わかってる」
駅近く・電信柱の陰
桜の手話がわかる鈴。
鈴 「…………」
遺品整理のポラリスのトラックの中
桜 「………あああ違う、こんなことするつもりなかったのにな、あ~わけわかんない。とりあえず(手話と声で)わたしは一星が好きだから! 返事はいらない! じゃ(トラックを降りて走って行く)」
一 星「…………」
ふと見ると、助手席に紙袋が残っている。
桜を呼び止めようとするが、袋の中を見るとバレンタインのチョコレートだ。
一 星「…………」
駅近く
駅に向かって走って行く桜。
鈴が身を隠している電信柱の前を通過。
桜が泣いているのが、鈴にも見える。
鈴 「…………」
遺品整理のポラリスのトラックの中
一 星「…………(呆然)」
その時、ドンドンとドアが叩かれて、振動で我に返る一星。
鈴が乗り込んで来る。
鈴 「(明るく)よっ!」
シートに座る鈴。
一 星「…………」
鈴 「…………」
微妙な間の後、一星の手元にある紙袋に気づく鈴。
一 星「(鈴の視線に気づき)………!(紙袋をどこかにしまう)」
鈴 「…………」
一 星「(手話で)行こうか」
鈴 「うん」
北斗の家・LDK
北斗が郵便物を見ている。
北斗千明宛で、原田すみれという人から封書が来ている。
住所は須羽市木津原町だ。
北 斗「(ドキッとして、その封筒を眺める)」
桜が帰って来る。
桜の声「ただいま」
北 斗「(思わずその封筒を隠す)お帰りなさい」
桜、弁当箱をキッチンに出して、
桜 「後で洗うから(と自室に向かう)」
北 斗「…………」
同・トイレ
北斗が入って来て、原田すみれからの封書を開く。
『突然、こんな手紙を差し上げることをお許し下さい。
実は来月、南アフリカに移住することになりました。
もう日本には帰らないと思います。最後に一度だけ、自分が産んだ娘に会いたいのです。
身勝手過ぎることは重々承知しておりますが、何とか―』
北 斗「(途中まで読んでやめる)」
同・桜の部屋
入って来る桜。
桜 「あ~やっちまったよ~……ううううう~(と、奇妙な体の動きで、やりきれない思いを炸裂させる)」
桜の部屋には、いろいろな写真が飾られている。
幼い桜を真ん中に一星と北斗の3ショット、深夜と北斗と桜の3ショット。桜が撮った一星と春の2ショット。一星と桜の2ショットなど……。
桜 「(はたと止まり)あれ、チョコ……。(思い出し)うーわ車の中だ、あああああ~(と更に悶絶)」
同・トイレ
北 斗「ぬうううう~(とこちらも奇妙な体の動きで悶絶)」
星空の美しい場所
鈴と一星がベンチに座っている。
鈴 「(空を見上げて)星、見えるかな」
一 星「…………」
鈴 「………(見上げている)」
一 星「(グイッと鈴の肩を持ってこちらに向かせ、手話で)この前は、ごめん(頭を下げる)」
一星の回想フラッシュ。
5話より、鈴の自宅マンション。
一 星「(手話で)何でこいつがここにいるんだ!」
一 星「(手話で)俺はそんなに頼りないのか? 聞こえないから? 年下だから?」
一 星「(手話で)俺じゃ、鈴を、守れない………!(飛び出して行く)」
一 星「(頭を下げているが、チラッと上目づかいに鈴を見る)」
鈴 「…………」
一 星「(手話で)俺は非常に器の小さい男だ。心配で駆けつけたのに、嫉妬して、八つ当たりした」
鈴 「…………」
一 星「(手話で)あっちは医者だし、大人だし、イケメンだし、聞こえるし、背もちょっと高いし、俺より先に鈴のところに駆けつけるし。だからカッと来た。でも、完全に俺が悪かった。子どもだった」
鈴 「(手話と声で)もういいよ」
一 星「(自分で自分の頭をポコポコ叩く)」
鈴 「(叩く手を止めて)もういいって」
一 星「(ホッとする)」
鈴 「……(手話と声で)それより、他に言うことない?」
一 星「………?」
鈴 「(手話と声で)桜ちゃんに、さっき告白されたでしょ」
一 星「………!(見てたんだ)」
鈴 「(手話と声で)見ちゃった。トラックの中で話してるの。手話だからわかっちゃって」
一 星「(手話で)俺が好きなのは鈴だから」
鈴 「(手話と声で)わかってる」
一 星「(手話で)わかってんなら言うな!」
鈴 「すぐすねる」
すぐカッカする一星に比べて、落ち着いている鈴。
カバンから、駅の近くで買ったチョコレートを出す。
鈴 「(手話と声で)じゃあこれはいらないんですね」
一 星「………!(チョコだ)」
鈴 「(手話と声で)桜ちゃんにも、もらってたみたいだし(と、自分のチョコをカバンにしまう)」
一 星「!(手話で)下さい、下さい、お願いします」
鈴 「(吹き出して)はい(とチョコを渡す)」
一 星「………(チョコを抱きしめ、感動を嚙みしめる)」
鈴 「(手話と声で)わたしが好きなのも、一星だよ」
一 星「(手話で)仲直り?」
鈴 「(手話と声で)仲直り」
一 星「(うれしい)…………(そのままコテンと横になり、鈴の膝枕で寝る)」
鈴 「………(かわいいと思う)…………」
一 星「(手話で)………星って生と死の境目にあるような………生と死をつなげてるような感じがする」
鈴 「………(星を見上げて)」
一 星「(手話で)俺達が見ているあの星のいくつかは、今はもう存在しない。何万年も前に放った光が、やっと今、地球に届いてるから」
鈴 「生と死の境目を今見てるんだ、わたし達」
一 星「…………」
鈴 「わたしの仕事もそうかも」
一 星「?」
鈴 「(手話と声で)壁1枚隔てて生と死が隣り合わせてるの。命が生まれた隣の部屋で、当たり前に死産がある。その間で医者は何もできない。遺された人のことも救えない」
一 星「(手話で)生と死はあまり変わらないのかも。死は絶望とか終わりじゃなくて、生の続きなんじゃないかって思う……遺品整理士やってると」
鈴 「…………」
一 星「(手話で)でも人は、明日は当たり前に来ると思うから、近しい人の死に、戸惑ってしまうことも多い」
鈴 「…………」
一 星「(手話で)だから明日死んでも悔いがないように、俺は伝え続けるよ」
鈴 「?」
一 星「(手話で)鈴、好きだ。一緒に暮らそう」
鈴 「………え?」
一 星「(手話で)鈴は俺が守るから」
* * *
一緒に暮らすことになった一星と鈴。しかし、ついに鈴の前に“あの男”が姿を現す――。続きは本誌にてお楽しみください。
星降る夜に
テレビ朝日火曜よる9時放送のドラマ『星降る夜に』のシナリオブック。
感情を忘れて孤独に生きる産婦人科医と、音のない世界で自由に生きる遺品整理士。
対照的な2人が織りなす大人のピュア・ラブストーリー。