テレビ朝日系 火曜21時ドラマ『星降る夜に』の感動を完全収録したシナリオブックがついに発売!
心ときめく大人のピュア・ラブストーリーから、一部試し読みをお届けします。
★人物紹介★
雪宮 鈴(吉高由里子)……産婦人科医。常に冷静に振る舞い、誰かに頼ることが苦手。息抜きに行ったソロキャンプで、10歳下の柊一星と運命の出会いを果たすことに。
柊 一星(北村匠海)……遺品整理士の青年。感情豊かで明るい性格。音のない世界を生きる。手話や筆談などで会話をする。偶然出会った雪宮鈴に一目惚れする。
麻呂川 三平(光石 研)……「マロニエ産婦人科医院」の院長。道化した言動も多いが器が大きい男。釣りが好き。
佐々木 深夜(ディーン・フジオカ)……45歳の新米医師。美しい風貌とは裏腹に、衝撃的なヘタレポンコツで、病院中のスタッフから毎日叱られている。
マロニエ産婦人科医院・外来診察室
6話ラストからリフレイン。
入って来る男性(伴宗一郎)。
伴 「久しぶりですね」
鈴 「…………」
伴 「元気でしたか、先生」
鈴 「…………」
伴 「また人殺してませんか」
鈴 「…………」
鈴の回想フラッシュバック。
裁判所で『人殺し!!!』と叫ぶ伴。
SNSの『人殺し』の文字。
割れるマンションのガラス。
うっすら笑っている伴。
鈴 「……」
伴を見たまま、固まっている鈴。
伴 「今日はね、院長とお約束して来たんです。妻の妊娠について相談したいです~ってね。あ、でも妻は5年前に先生に殺されちゃったんでした。ハハハハハ」
鈴 「…………」
伴 「今どこ住んでんですか?」
鈴 「…………」
伴 「どっちの男と住んでんのかな~?」
鈴 「…………」
伴 「つかピンクのおばさん達、あれ何ですか? うざいんですけど。何とかして下さいよ」
鈴 「…………」
伴 「そんな不機嫌な顔してえ………ホントはご機嫌でしょ?」
鈴 「…………」
伴 「本命は若い方の(手話の真似して)これの人ですか?」
鈴 「…………」
伴 「手話教室まで通っちゃって、浮かれるのもいい加減にして欲しいな………人殺しなのに」
伴の回想
5年前。
◇町の医院。
下 田「ちょっと出血が多いんで、念のため、大きな病院に搬送します」
伴 「え。七海、そんな悪いんですか?」
下 田「念のためです。医学部の同期の雪宮ってやつに電話して、千代田医科大学付属病院、手配しました。大学病院に行けば安心ですので」
◇千代田医科大学付属病院・救急入り口。
出血で血だらけの妊婦が救急車から寝台のまま、下ろされる。
まだ妊婦の意識はある。伴も同乗して来ている。
同じく同乗して来た下田の産科医院の看護師が状況を伝える。
鈴 「(看護師に)産婦人科の雪宮です。CTG の所見は?」
看護師「遅発一過性徐脈や遷延性徐脈が見られます」
鈴 「(容態を見て、厳しい表情になる)……そんなこと聞いてないけど」
伴 「頑張れよ」
七 海「うん、心配しないで」
伴 「(鈴に必死で)妻をよろしくお願いします」
◇同・手術室の前の廊下。
鈴が出て来る。伴が近寄る。
伴 「(鈴を見つめる)会えますか、もう」
鈴 「お子さんは女の子です、これからNICUに移します」
伴 「妻は?」
鈴 「残念ながら、お亡くなりになりました」
伴 「え……?」
鈴 「……胎盤が子宮から剥がれてしまっていて、ここに着いた時には母子ともに危険な状態でした。それが原因でDICという状態になって、出血がコントロールできなくなり」
伴 「は!? いやいや、前の病院を出る時は元気だったし……救急車がここに着いた時だって、まだ意識があって……なのに何で死んだんですか? え? すみません意味がわからないんですけど」
鈴 「あちらでくわしくご説明いたします」
伴 「何があったんだ! この中で!!! あんたが殺したのか?」
鈴 「……」
伴 「答えろ、答えろよ」
つかみかかる伴。抵抗しない鈴。
◇裁判所。
裁判官が判決を言う。
裁判官「それでは判決を言い渡します。主文。一、原告らの請求をいずれも棄却する。二、訴訟費用は原告らの負担とする。三、理由の朗読については省略します。言い渡しは以上です。では、これで閉廷します」
鈴 「…………」
傍聴席の伴。赤ん坊を抱いている。
伴 「………違う、殺されたんだ、そんなはずない」
裁判が終わる。
伴 「(裁判官に向かって叫ぶ)あんたはそれでも人間か! 法律は何のためにあるんだ!」
泣き出す赤ん坊。
駆け寄って来る裁判所の職員。止まらない伴。
伴 「俺の妻は、(鈴をさし)あいつに殺されたんだ!!!」
鈴 「…………」
マロニエ産婦人科医院・外来診察室
鈴と伴。
伴 「ここのみなさんは知ってるんですか? 知ってますよね。みんなどう思ってんだろ? 人殺しなのに、先生って呼ばれて、高給取りで、恋に仕事に充実しちゃって」
鈴 「…………」
伴 「僕なんか、育児と仕事両立できなくて、会社クビになったんですよ。貯金も食いつぶしちゃって」
深夜が「失礼します」と入って来る。
深 夜「鈴先生。金子さん、そろそろ陣痛が……(途中までしゃべって、奇妙な空気に気づく)」
伴 「彼氏その2発見~!(深夜に)あなた、二股かけられてるの、知ってます? こいつ恐ろしい女ですから、気をつけた方がいいですよ」
深 夜「(状況を理解する。鈴を庇い)……鈴先生、外に出て下さい。ここは僕が」
伴 「(手を叩いて笑い)おおおっ~! カッコいいですね~」
深 夜「……マンションのガラスを割ったり、誹謗中傷の書き込みをしているのは、あなたですか」
伴 「(派手に笑う)ハハハハハ、悪いのは僕じゃなくて、この先生ですよ。人殺しはそっち。僕じゃないんですけど。間違わないで下さいよ」
深 夜「…………」
鈴 「…………」
伴 「また来ま~す(と、すっと立って出て行く)」
同・表の道
伴が出て来る。
海沿いの道路で、ひとりポツンと待っている女の子がいる。伴静空・5歳だ。
伴は静空の手を引いて、歩いて行く。
同・外来診察室
深 夜「鈴先生、午後の外来、僕が代わりますので、あちらで少し休んで下さい」
鈴 「大丈夫です。ああいう人が次々来るわけじゃないし」
深 夜「でも………」
鈴 「(毅然と)わたしは大丈夫。仕事してないと落ち着かないしね」
鈴、椅子をくるっとデスクの方に向けてPCに向かうが、動揺から、机の上の何かをバサバサ落としてしまう。
深 夜「あ………」
鈴と深夜、2人同時に落としたものを拾う。
鈴、顔を上げると、深夜の顔が近くにあり――。
深 夜「…………(心配そうな表情で)」
鈴 「………ありがとう、深夜先生……」
犬山がドアの隙間から、チラッと鈴と深夜の様子を見る。
犬 山「…………(イチャイチャしていると思う)」
同・廊下
犬山が振り返ると、麻呂川と蜂須賀がいる。
犬 山「いい今、雪宮先生と佐々木先生が、患者も呼び込まないでイチャイチャしてるんですけど」
麻呂川「いい感じじゃないの~」
蜂須賀「いい感じなんすか?」
麻呂川「わたしの夢はね、うちの病院からカップルが生まれて、結婚式に呼ばれて、スピーチすることなんだよね、むふっむふふっ」
犬 山「……何だか美男美女でつまんねぇ」
蜂須賀「それな。ま、師長には誰よりかわいいチャーリーがいるんだからいいじゃないすか」
犬 山「赤ん坊の頃はさ、あの子抱いて寝てると、好きな男と寝てるような気分になったもんだけど、あんな大きくなると、それもできないからさ、寂しいもんよ」
蜂須賀「………添寝してもらえばいいんじゃないすか? 金払って」
同・表
夜。
どことなく疲れた様子の鈴が、ため息をつきながら出て来る。
と、そこに一星がいる。
なぜか一星は、見たこともないスーツ姿でキメている。
鈴 「ん………!?」
一 星「(スカした感じだが、ドヤ感があふれている)」
鈴 「(手話と声で)これからパーティーでも行くの?」
一 星「(手話で)別に。俺も大人の男だから、たまにはスーツ着てみっかと思って」
鈴 「(笑って、ジェスチャーしながら)……… ネクタイ変だよ」
一 星「え…………(と慌てる)」
鈴が近寄ってネクタイを直す。大人しくなる一星。
一 星「(うれしそう)…………」
鈴 「(つぶやく)背伸びしなくても、いつもの一星が好きなのに」
一 星「(手話で)何?」
鈴 「(首を振って)何でもない」
一 星「(手話で)深夜から連絡があった。ひとりで帰すのは心配だから、迎えに来いって」
鈴 「…………」
そのままおどけて、シャルウィダンスのように鈴に手を差しのべる一星。
一 星「(手話で)行きますか、姫」
鈴 「姫かよ」
苦笑して、自身の手を乗せる鈴。
2人、そのまま手をつなぎ歩いてゆく。
* * *
鈴の過去に恨みを持つ男、伴。鈴を守れるのは、一星か深夜か……⁉ 続きは本誌にてお楽しみください。
星降る夜に
テレビ朝日火曜よる9時放送のドラマ『星降る夜に』のシナリオブック。
感情を忘れて孤独に生きる産婦人科医と、音のない世界で自由に生きる遺品整理士。
対照的な2人が織りなす大人のピュア・ラブストーリー。