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60歳からの「忘れる力」

2023.04.30 公開 ポスト

60歳を過ぎたら「やせて健康になる」は忘れていい 筋肉を増やす「フレイル予防」の重要性鎌田實

「名前が出てこない」「昨日の夕飯は何だったっけ」「また同じ本を買ってしまった」……。年をとると、とたんに増えてくる「もの忘れ」の悩み。しかし、高齢者医療の第一人者・鎌田實さんは「人生の8割は忘れていいこと」だと言います。そんな鎌田さんが説く、面倒なことは忘れて、好きなことだけで生きるヒントがつまった『60歳からの「忘れる力」』より、心がスーッとラクになるメッセージをお届けします。

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「やせて健康になる」は忘れていい

60歳は健康づくりの節目です。それまでの中年期は、メタボ対策が健康づくりの中心的な課題でした。メタボになると動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、認知症……とさまざまな病気がドミノ倒しのように増えていきます。だから、中年期はメタボにならないように、脂肪をためこまないことが重要なのです。

(写真:iStock.com/byryo)

ところが、60歳を過ぎると、加齢や運動不足によって筋肉の量が減っていきます。食が細くなる人もいて、栄養不足になることが多くなります。

「やせてうれしい」などと思っていると、70代、80代で筋肉が減るサルコペニア(加齢性筋肉減少症)や、全身の機能が低下して十分に活動できないフレイル(虚弱)という状態になってしまいます。このままでは、要介護状態へまっしぐらです。

90代になっても、歩いて好きなところへ行き、おいしいものを味わうには、60歳になったら「やせて健康になる」というメタボ対策はいったん忘れ、「筋肉を増やす」フレイル予防へと考え方をシフトする必要があります。

やせて脂肪を落とすことばかり意識していると、大事な筋肉までやせて、フレイルが加速してしまうからです。

 

自分がフレイルかどうかを知る目安として、「指輪っかテスト」というのがあります。両手の親指と人差し指で輪をつくり、ふくらはぎのいちばん太いところを囲みます。指が届かないくらいの太さがあれば、十分な筋肉があると推定できます。

けれど、指が重なってしまう場合は、筋肉がやせている可能性があり、フレイルに注意しなければなりません。若いころは、ほっそりした足を目指す人が多かったかもしれませんが、60歳を過ぎたらしっかり筋肉がついた足が重要になるのです。大根足でオーケー。少しずつ脂肪も減らせれば最高です。

筋肉はいくつになっても鍛えられる

2022年11月、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」にフレイルをテーマに出演しました。このとき指輪っかテストをしたのですが、若い女性アナウンサーから「私、指が重なります。プレフレイル(フレイルの前段階)ですか?」と聞かれました。

(写真:iStock.com/imtmphoto)

中高年のフレイルだけではなく、最近では若い人のプレフレイルも心配しています。「できるだけ筋肉をつけて、タンパク質をしっかりとって、脂肪は増やさないようにして、“貯筋”運動をしましょう」と説明しました。

年に一度とか半年に一度、指輪っかテストをして変化を追いましょう。ふくらはぎが細くなっていれば筋肉が減っている可能性があります。片足立ちで靴下を履けなくなった、椅子から立ち上がるときに「ヨッコイショ」と気合いが必要になった、という自覚症状があれば、筋肉減少の可能性が高いです。

 

ただし、ふくらはぎが太いからといって安心しきれません。一見しっかりした足でも、筋肉が少なくて脂肪が多い「隠れ肥満」の場合もあります。

さらによくないのは、筋肉が著しく減少したサルコペニアの状態なのに、脂肪が覆い隠している「サルコペニア肥満」です。隠れ肥満やサルコペニア肥満になると、筋肉にも脂肪がついてしまい、筋肉の質も低下します。

最近の体重計では、体脂肪率やBMI(体格指数)、筋肉の質などを測定できるものが普及しているので、これらの数値も意識してください。

 

筋肉のいいところは、いくつになっても鍛えられること。タンパク質をしっかりとって、ウォーキングや筋トレをする「筋活」をすれば、筋肉は確実についてきます

筋肉がつくと活発に動けるようになり、体重は同じでも脂肪は減り、しまった体になります。代謝効率もよくなり、半年から1年もすれば脂肪も落ちていくでしょう。フレイル予防の筋活が、まわりまわってメタボ対策にもなれば一石二鳥です。

関連書籍

鎌田實『60歳からの「忘れる力」』

老いへの恐怖も、古い健康常識も、年齢も、気が進まない人間関係も、「○○らしさ」も……忘れることで、幸せな老後が待っている! 「名前が出てこない」「昨日の夕飯は何だったっけ」「また同じ本を買ってしまった」……60歳を前にすると、「もの忘れ」の悩みが増えてくる。しかし、人生の8割は忘れていいことだ。長年にわたって高齢者医療を牽引する著者が実践している、面倒なことは捨てて、好きなことだけで生きるためのヒント60。

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60歳からの「忘れる力」

「名前が出てこない」「昨日の夕飯は何だったっけ」「また同じ本を買ってしまった」……。年をとると、とたんに増えてくる「もの忘れ」の悩み。しかし、高齢者医療の第一人者・鎌田實さんは「人生の8割は忘れていいこと」だと言います。そんな鎌田さんが教える、面倒なことは忘れて、好きなことだけで生きるヒントがつまった『60歳からの「忘れる力」』より、心がスーッとラクになるメッセージをお届けします。

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鎌田實

1948年、東京都生まれ。1974年、東京医科歯科大学医学部卒業。1988年、諏訪中央病院院長に就任。地域と一体になった医療や、食生活の改善・健康への意識改革を普及させる活動に携わる。2005年より同病院名誉院長。チェルノブイリ原発事故後の1991年より、ベラルーシの放射能汚染地帯へ医師団を派遣し、医薬品を支援。2004年からイラクの4 つの小児病院へ医療支援を実施、難民キャンプに5 つのプライマリ・ヘルス・ケア診療所をつくった。国内でも東北をはじめとする全国の被災地に足を運び、講演会、支援活動を行っている。近著に『鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(集英社)、『認知症にならない29の習慣』(朝日出版社)、『鎌田式健康手抜きごはん』(集英社)、『60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』(エクスナレッジ)、『ちょうどいい孤独』(かんき出版)などがある。

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