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60歳からの「忘れる力」

2023.05.14 公開 ポスト

医師も「あの世」を信じている? 高齢者医療の第一人者が考える死後の世界鎌田實

「名前が出てこない」「昨日の夕飯は何だったっけ」「また同じ本を買ってしまった」……。年をとると、とたんに増えてくる「もの忘れ」の悩み。しかし、高齢者医療の第一人者・鎌田實さんは「人生の8割は忘れていいこと」だと言います。そんな鎌田さんが教える、面倒なことは忘れて、好きなことだけで生きるヒントがつまった『60歳からの「忘れる力」』より、心がスーッとラクになるメッセージをお届けします。

*   *   *

もし死後の世界があったら……

あの世の存在を信じていますか? 魂は存在しているでしょうか?

(写真:iStock.com/RomoloTavani)

いろんな考えの人がいていいと思っています。

つい最近も、あの世の話で盛り上がりました。『病院で死ぬということ』(文藝春秋)というベストセラーを書いた、緩和ケアの専門医・山崎章郎さんと対談しました。彼は大腸がんで、両肺に転移し、ステージ4と宣告されています

インタビュアーはぼくだったのに、山崎さんが突然質問してきました。

「鎌田先生は自分が死んだあとのこと、考えたことありますか?」

「考えることはあるけど、ぼくは死後の世界はなくてもいいなと思っている」と答えました。

 

山崎先生は、終末期の患者さんにも「自分が死んだらどうなると思いますか?」と聞くそうです。すると、「宇宙から生まれたんだから、宇宙に還る」などと答えてくる。そんなとき、彼はこんな質問もすると言います。

「死後の世界があるとすれば、会いたい人はいますか?」

大半の人は、「お母さんに会いたい」「お母さんに迎えに来てほしい」と答えます。

そこから先が、緩和ケアの名医の言葉だと感心しました。

「じゃあ、お母さんにバトンタッチするまでは、私がお付き合いします」

この言葉で、患者さんはとても安心するのだと言います。

人生は一度きりだからおもしろい

その緩和ケアの名医も、以前は死後の世界に関心があったわけではないそうです。

(写真:iStock.com/Jub Job)

「いままさに自分自身がステージ4のがん患者になってみると、死後の世界はあったほうがいいというか、あってほしいなと思うようになりました

終末期に強く感じる「霊的な痛み」は、あの世があると思うことによって、少しだけ緩和されるのだと思いました。「これもありだな」と思いました。

 

ぼく自身も、魂の存在は信じていないのに、青森県の下北半島の霊場で、イタコに父親の魂を降ろしてもらったことがあります。沖縄まで、ユタやノロというシャーマンに会いに行ったこともあります。魂は信じないと言いながら、魂の存在を信じることで救われている人たちがいることも理解しています

だから、患者さんのなかで、魂の存在やあの世を信じている人に対しては、その思いを受け入れ、在宅医療や緩和ケアの現場で命に伴走したいと思ってきました。

でも、自分自身の死について考えるときは、やっぱりあの世はいらないと思っています。あの世でまた新しい人生を生きなくてもいい。ニーチェのいう「永劫回帰」も、インド哲学の輪廻転生もいらない。一回かぎりで十分。

一回かぎりだから、いいことも嫌なことも、成功も失敗も、いいのだと思っています。ピンピン元気で一発勝負。そう思うようになったら、とても心が軽くなりました

関連書籍

鎌田實『60歳からの「忘れる力」』

老いへの恐怖も、古い健康常識も、年齢も、気が進まない人間関係も、「○○らしさ」も……忘れることで、幸せな老後が待っている! 「名前が出てこない」「昨日の夕飯は何だったっけ」「また同じ本を買ってしまった」……60歳を前にすると、「もの忘れ」の悩みが増えてくる。しかし、人生の8割は忘れていいことだ。長年にわたって高齢者医療を牽引する著者が実践している、面倒なことは捨てて、好きなことだけで生きるためのヒント60。

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60歳からの「忘れる力」

「名前が出てこない」「昨日の夕飯は何だったっけ」「また同じ本を買ってしまった」……。年をとると、とたんに増えてくる「もの忘れ」の悩み。しかし、高齢者医療の第一人者・鎌田實さんは「人生の8割は忘れていいこと」だと言います。そんな鎌田さんが教える、面倒なことは忘れて、好きなことだけで生きるヒントがつまった『60歳からの「忘れる力」』より、心がスーッとラクになるメッセージをお届けします。

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鎌田實

1948年、東京都生まれ。1974年、東京医科歯科大学医学部卒業。1988年、諏訪中央病院院長に就任。地域と一体になった医療や、食生活の改善・健康への意識改革を普及させる活動に携わる。2005年より同病院名誉院長。チェルノブイリ原発事故後の1991年より、ベラルーシの放射能汚染地帯へ医師団を派遣し、医薬品を支援。2004年からイラクの4 つの小児病院へ医療支援を実施、難民キャンプに5 つのプライマリ・ヘルス・ケア診療所をつくった。国内でも東北をはじめとする全国の被災地に足を運び、講演会、支援活動を行っている。近著に『鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(集英社)、『認知症にならない29の習慣』(朝日出版社)、『鎌田式健康手抜きごはん』(集英社)、『60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』(エクスナレッジ)、『ちょうどいい孤独』(かんき出版)などがある。

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