テレビ朝日系 火曜21時ドラマ『星降る夜に』の感動を完全収録したシナリオブックがついに発売!
心ときめく大人のピュア・ラブストーリーから、一部試し読みをお届けします。
★人物紹介★
雪宮 鈴(吉高由里子)……産婦人科医。常に冷静に振る舞い、誰かに頼ることが苦手。息抜きに行ったソロキャンプで、10歳下の柊一星と運命の出会いを果たすことに。
柊 一星(北村匠海)……遺品整理士の青年。感情豊かで明るい性格。音のない世界を生きる。手話や筆談などで会話をする。偶然出会った雪宮鈴に一目惚れする。
麻呂川 三平(光石 研)……「マロニエ産婦人科医院」の院長。道化した言動も多いが器が大きい男。釣りが好き。
佐々木 深夜(ディーン・フジオカ)……45歳の新米医師。美しい風貌とは裏腹に、衝撃的なヘタレポンコツで、病院中のスタッフから毎日叱られている。
7話ラスト・リフレイン・キャンプ場
鈴を真ん中に、一星、深夜の3人が並んで花火をしている。
鈴は泣いている。
気づかない振りの一星と深夜。
どこか
幼い娘・静空の手を引いて歩いている伴。
ふと、静空が夜空を見上げる。
伴もそれにつられて、夜空を見上げる。
キャンプ場
泣いている鈴。
それに気づかない振りで花火を続ける一星、深夜。
鈴 「……」
鈴の声「何でだろう。あの人もここにいたらよかったのかなと、ふと思った」
どこか
伴 「…………」
伴の回想
◇5年前、妻の墓。
静空を抱っこ紐で抱いた状態で、妻の墓に花を供えようとするが、突然、その花を地面に叩きつけてしまう。
そして肩を震わせて泣く伴。
◇荒れ果てた伴の家。
2歳くらいになった静空が、荒れ果てた部屋の中で、ひとりで遊んでいる。死んだ妻との幸せな時代の写真が、今も置かれている。
食べ終わったカップ麺の容器などが、伴の足元に散乱している。
ぼんやりと座っている伴。
テーブルの上には、会社からの『解雇通知書』が置いてある。伴のスマホが鳴る。
伴 「(出るが、何も言わない)」
弁護士の声「弁護士の今村です、伴さんですよね」
伴 「はい」
弁護士の声「裁判所が、控訴取り下げをすすめて来ました」
伴 「…………」
弁護士の声「もしもし?」
伴 「…………」
弁護士の声「正直なところ申し上げて、控訴審を戦っても勝てないと思うんです。いかがいたしますか?」
その時、静空が何か落とし、ガチャンと、大きな音がする。
伴 「(大声で)静かにしろ!」泣き出す静空の声。
伴 「(電話を切り、静空から目をそむけて、両手で耳をふさいで、背中を丸める)」
◇3話より。
呆(ほう)けたように歩いている伴、ふと立ち止まる。
視線の先には、美しい朝陽、そしてその光の中で若い男(一星)とダンスを踊る鈴がいる。
妻が運び込まれた時のことが脳裏にフラッシュバック。
鈴から妻が死んだと告げられた瞬間もフラッシュバック。
幸せそうな鈴の表情。怒りがふつふつ湧き上がる伴。
◇4話より。
荒れ果てた自宅で、SNSに誹謗中傷を書き込む伴。
『雪宮鈴は人殺し』
◇5話より。
スーパーの袋を提げて帰って来る鈴。と、ドアに『人殺し』という紙が何枚も貼ってあるのを目にする。
鈴 「…………!」
深夜の声「雪宮先生!」
そこに一星とは違う美しい男性(深夜)が走って来る。
素早くドアの紙を剥がし、
深 夜「先生中へ」
と、鈴の肩を抱くようにして部屋の中へ消える。
その様子を見ている伴。
手には残りの貼り紙が握られている。思わず、近くにあった植木鉢を持ち上げ、窓に投げつける。
ガラスが割れる音が響く。
◇荒れ果てた伴の家。
PCに向かっている伴。
隠し撮りした写真を、どんどんアップしながら、書き込む。
伴 「(声に出しながら)何でお前が幸せなんだ」
どこか(回想あけ)
伴 「…………」
静 空「(空を見上げて)お父さん、星がきれい」
伴 「…………」
静 空「(手話と声で)星」
伴 「………?」
静 空「(もう一度手話と声で)星」
伴 「…………(驚くが、穏やかに)静空、それ、誰に習ったの?」
静 空「(うまく説明できない)ん~……」
伴 「(優しく微笑んで、静空を抱き上げる)」
帰って行く伴。
静空は伴の腕の中で、『星』と手話で繰り返す。
(日替わり)一星の家・外観
同・キッチン
翌朝。寝起きの鈴が居間に下りてくる。一星が朝食を作っているのが見える。
手慣れた様子にしばし見とれる鈴。
そっと近づき、横からひょいっと一星を覗き込んで―。
一 星「…………!」
鈴 「(手話と声で)おはよ」
一 星「(口の形で)おはよ」
鈴 「(料理を見て)何か、朝からずいぶん豪華じゃない?」
一 星「(鈴の目を手で隠そうとして)」
鈴 「え、何! 何何何!」
鈴 「いただきまーす」
鈴と一星とカネ。朝食のテーブルには、フレンチトースト、キッシュ、ビシソワーズ、サラダの他、星形にくりぬかれたフルーツポンチも並んでいる。
鈴 「(手話と声で)んー! メチャメチャ美味しい!」
一 星「(手話で)それ、自信作」
カ ネ「(鈴に手話で)鈴は料理はしないの?」
鈴 「(首を振り、声で)ぜんぜん」
カ ネ「(手話で)昔は、男の胃袋をつかめと言ったもんだけど、鈴は、何で一星の心をつかんだのかな(うふふふふ)」
一 星「(手話で)やめろエロババア」
鈴 「(食べて)……このキッシュも美味しい」
一 星「(手話で)こんなの鈴でもできるよ」
鈴 「(手を振って)無理無理無理無理」
カ ネ「(手話で)無理ではなく、やる気がないな」
鈴 「(手話と声で)他にはどんな料理、得意なの?」
一 星「(手話で)ホワイトビーフストロガノフ、スパイスカレー、ズッキーニの肉詰め、アスパラの春巻き、ボルシチ、ユーリンチー」
鈴 「(一星の手を止め)待って待ってぜんぜんわかんなかった(手話と声で)もう1回」
一 星「(あ~んして、とジェスチャーで言う)」
鈴 「え」
カ ネ「(ジェスチャーで)どうぞどうぞ」
一 星「(ジェスチャーで、あ~んして)」
鈴 「(手話と声で)自分で食べて下さい」
一 星「(あ~ん)」
鈴 「もう………(と食べさせる)」
一 星「(ぱくり。ご満悦)」
カ ネ「(無視して、黙々と食べ、飲んでいる)」
一 星「(手話で)もう1回(あ~ん)」
鈴 「(手話と声で)終わり」
一 星「(断られてもうれしそう。鈴の真似をして、手話で)終わり」
カ ネ「(手話で)ところで今度の土曜、ババ友とホムパなんだ! ご馳走頼むよ」
一 星「(手話で)またかよ」
カ ネ「(手話で)よろしくね~(とミニ小躍り)」
鈴 「(カネに応えて、ミニ小躍り)」
元気そうな鈴を見て微笑む一星。やがて2人に誘われ―。
一 星「(自分もミニ小躍り)」
マロニエ産婦人科医院・外来診察室
一般の診療が始まる前。
伊達と超音波検査の結果を見ている鈴。
鈴 「順調だね、つわりはどう?」
ノックの音がして、深夜が「失礼します」と入って来る。
深 夜「伊達さん、尿検査も問題ありませんでした」
伊 達「ありがとうございます」
鈴 「深夜先生、ありがと」
深 夜「(微笑んで出て行く)」
伊 達「お疲れなのに、わたしのことまで心配して下さって……つわりは今は、大したことありません」
鈴 「わたしは伊達さんの主治医なんだから、遠慮しないで」
伊 達「(うれしげに)はい………。あの、あれから大丈夫ですか、伴って男………」
鈴と伊達の回想
7話より、外来診察室で、
伴 「元気でしたか、先生」
鈴 「…………」
伴 「また人殺してませんか」
外来待合室で。
伴 「何でみんな、人殺しを庇うんだ」
伴 「俺は被害者なんだ!(伊達につかみかかり)わかってんのかよ」
マロニエ産婦人科医院・外来診察室
鈴 「あれからは何もない」
伊 達「そうですか……」
鈴 「怖い思いさせてごめんね」
伊 達「いいえ、わたしこそ、鈴先生の力になりたいと思ってます」
鈴 「そうだ、彼氏どうしてる? 真面目に小説書いてる? ナースが異世界に転生する話」
伊 達「それなんですけど」
同・スタッフ控室
鈴、犬山、蜂須賀、伊達、チャーリーがいる。
犬 山「うちの息子に取材したい!?」
伊 達「はい、うちのシンちゃんにチャーリーのこと話したら、すっごい興味持っちゃって。次回作は、添寝士が転生する話を書きたいって」
蜂須賀「不安しかないな、そのラノベ」
チャーリー「(得意げに)いやいや、いいところに目をつけましたね。添寝セラピーは、海外では新しい心理療法としても注目されてんすよ」
犬 山「何を偉そうに」
チャーリー「ん(スマホで働いているスリープ・プリンスのHPを見せる)」
蜂須賀「(読み上げる)失恋した時、孤独を感じた時、ちょっと疲れた時、誰かに傍にいて欲しい、話を聞いて欲しい、ギュッてして欲しい。そんな時、お役に立つのが添寝士です」
一 同「(は~)………」
鈴 「(読み上げる)オーディションで厳選されたイケメン添寝士が、優しい心で、あなたに寄り添います」
蜂須賀「オーディションで厳選って、チャーリーだろ?」
チャーリー「伊達さんの旦那さんも、是非一度体験してもらえれば」
伊 達「ええ何何、チャーリーとうちのシンちゃんが添寝するの、それダメ! 絶対ダメ!」
チャーリー「他にも、イケメンのキャストが何人もいるんで、俺でなくても」
鈴 「伊達さん、取材は体張ってやんないとダメなのかもよ(笑)」
伊 達「やめて下さい、鈴先生まで。シンちゃんと添寝するのはわたしだけですから」
一 同「(笑)」
声 「総長!」
と、ピンクの特攻服の中年女性達が、深夜と麻呂川をしめ上げて連れて来る。
元ピンクエンペラーの中年女性1「怪しいの捕まえました」
犬 山「院長!」
鈴 「深夜先生……!」
元ピンクエンペラーの中年女性1「え………!!」
麻呂川「僕は院長だって言っても信じてくれないのよ」
深 夜「…………(しゅん)」
犬 山「(すごむ)てめぇら! この方はマロニエの院長と、心優しき佐々木先生だ! 頭を下げろ!」
元ピンクエンペラーの中年女性達「………!! さぁせんしたぁ!!」
途端に整列して頭を下げる元ピンクエンペラー達。
ほっぽり出される深夜、麻呂川。一応駆け寄る鈴。
鈴 「(こそっと)え……何……?」
蜂須賀「(こそっと)あの男がまた来ても、中に入れないようにって、今日からパトロールさせてるらしいす」
犬 山「(すごむ)お前らの目的はなんだ!! マロニエ守ることだよなぁ!?」
元ピンクエンペラーの中年女性達「はい!!」
犬 山「(すごむ)命かけられんのか!! かけられねえやついねえよなぁ!?」
元ピンクエンペラーの中年女性達「うおおおおおお!」
足を踏み鳴らし、雄叫びを上げる中年女性達。
麻呂川「(怖過ぎる)あの、命かけなくて大丈夫なんで………」
元ピンクエンペラーの中年女性2「(麻呂川に)すんませんでした。お邪魔しました(と平身低頭で去って行く)」
鈴 「………話には聞いてたけど、ホントにピンクなんだね」
蜂須賀「カッケー総長」
鈴 「ちょっとわたしも入りたい」
麻呂川「ええ~っ」
深 夜「……………(何だか元気がない)」
鈴 「………深夜先生?」
深 夜「あ、はい。大丈夫です(と微笑む)」
鈴 「…………」
* * *
元気のない深夜を心配する鈴。次回、深夜の“複雑な本音”が溢れ出す―ー。続きは本誌にてお楽しみください。
星降る夜に
テレビ朝日火曜よる9時放送のドラマ『星降る夜に』のシナリオブック。
感情を忘れて孤独に生きる産婦人科医と、音のない世界で自由に生きる遺品整理士。
対照的な2人が織りなす大人のピュア・ラブストーリー。