テレビ朝日系 火曜21時ドラマ『星降る夜に』の感動を完全収録したシナリオブックがついに発売!
心ときめく大人のピュア・ラブストーリーから、一部試し読みをお届けします。
★人物紹介★
雪宮 鈴(吉高由里子)……産婦人科医。常に冷静に振る舞い、誰かに頼ることが苦手。息抜きに行ったソロキャンプで、10歳下の柊一星と運命の出会いを果たすことに。
柊 一星(北村匠海)……遺品整理士の青年。感情豊かで明るい性格。音のない世界を生きる。手話や筆談などで会話をする。偶然出会った雪宮鈴に一目惚れする。
佐藤 春(千葉雄大)……一星と同じ職場に勤める遺品整理士。親友であり、先輩でもある一星のことを心から尊敬している。
麻呂川 三平(光石 研)……「マロニエ産婦人科医院」の院長。道化した言動も多いが器が大きい男。釣りが好き。
佐々木 深夜(ディーン・フジオカ)……45歳の新米医師。美しい風貌とは裏腹に、衝撃的なヘタレポンコツで、病院中のスタッフから毎日叱られている。
8話ラストより
海辺。
静空が「お父さ~ん」と叫び、そして一星が伴を抱きしめる。
美しい夕陽が、一星と伴、鈴、深夜、そして春と静空を照らしている。
伴 「(一星に抱きしめられたまま、泣いている)」
深 夜「(泣いている伴を見ている)…………」
一 星「…………」
鈴 「…………」
静空を抱いた春が、鈴たちの方へ歩き出す。
深夜、伴に近づき肩を叩き、その方向を示す。
伴 「…………(静空の方を見る)」
伴、立ち上がる。それを支えようと歩み寄る深夜。
しかし、突然………。
深 夜「ふぇっくしょえい!!!」
シリアスな空気をぶち壊す、とんでもないくしゃみをかます深夜。
伴 「えっ」
一 同「…………」
深 夜「あ………すみません………」
銭湯・外観
同・男湯の湯船
湯船に一星、深夜、春、伴。
冷え切った体を温めている一同。
一 星「…………」
深 夜「…………」
伴 「…………」
なかなか温まりきらない。
震えている深夜、それに申し訳なさそうな伴。
春 「何この状況」
伴 「(申し訳なさそう)…………」
春 「ていうかこの寒さで海に入ったら、死んじゃいますからね普通」
伴 「すみません」
深 夜「(急に)ビーチボーイズですね!」
春 「は………?」
一 星「(手話で)何?」
春 「(手話で通訳)ビーチボーイズ」
一 星「………?」
深 夜「あ、すみません。知らないですよね。昔のドラマです」
春 「知ってますけど、見たことないですね。すいません」
一 星「(知らないという顔)」
深 夜「…………(伴を見る)」
伴 「すみません、知ってます………すみません………」
深 夜「(春に)…………僕、今滑りました?」
春 「そうですね、それはもうきれいに。ええ」
その時、壁の向こうから静空の声がする。
静空の声「お父さ~ん」
伴 「(思わず)は~い!」
静空の声「気持ちいい~?」
伴 「気持ちいいよぉ~! あ………(申し訳なさそうにする)」
深 夜「…………」
春 「…………」
伴 「すみません」
一 星「(何が起こっているかわからず、手話で)何?」
春 「(手話で)あっちから声がした、気持ちいいって」
一 星「!(なぬ!? と思わず女湯の方を見る)」
伴 「あの、ホントに………すみません………」
一 星「(伴の肩を叩き、手話で)女湯って覗いたことある?」
伴 「え?」
春 「女湯覗いたことありますかって」
伴 「え!?」
一 星「(伴の肩を叩き、催促。手話で)ある? ない?」
伴 「(首を振り)いやないです、すみません」
一 星「(な~んだと天井を仰ぎ、また何か思いつき、再び伴の肩を叩き、手話で)じゃあ『喪服でイェイ!』は見たことある?」
伴 「あ? え?」
一 星「(手話で)駅弁!」
伴 「(ジェスチャーを見て推理)………駅弁?」
一 星「(伝わったことに喜んで指差し)そう!」
伴 「(正解したらしいことに喜んで)おお! ………え、駅弁が何ですか?」
春 「(一星を殴り、手話と声で)困らせんなよ」
一 星「(顔で春に)いってーな!」
同・表の道
湯上がり状態の面々がぞろぞろ出て来る。
伴 「…………(一体全体どうしたら)」
一 星「(伴の肩を叩き、手話で)またな」
伴 「え?」
鈴 「(伴に通訳)またね、って言ってます」
深 夜「…………」
静 空「(真似しながら手話と声で)またね~!」
鈴 「(手話と声で)またね」
伴 「…………」
伴、深く深く、頭を下げる。
やがて顔を上げると、静空の手を引いて、帰って行く。
途中で振り返って、手を振る静空。手を振り返す鈴と一星。
黙って見ている深夜。そして春。
深 夜「…………」
一 星「…………」
鈴 「…………!(と、くしゃみをする)」
一星・深夜「!」
深 夜「湯冷めしちゃいますね、僕らも帰りましょう」
春 「(手話と声で)じゃ、お疲れした~」
春と深夜も、それぞれ帰ってゆく。
2人になった途端、一星、突然不機嫌な表情になり、プイッとひとりで、歩いて行ってしまう。
鈴 「え? 何? 一星(と呼びかけるが聞こえない)……(走って追いかけ、一星の前に回り込む)ちょっと!」
一 星「(ブスッ)」
鈴 「(手話と声で)何?」
一 星「(手話で)俺、怒ってる」
鈴 「え?」
一 星「(手話で)何でひとりで静空のところに向かった?」
鈴 「あ…………」
一 星「(手話で)何で俺を置いてった? どんだけ心配したと思ってんだ!」
鈴 「………(手話と声で)ごめん………」
一 星「(手話で)ひとりで突っ走んな!」
鈴 「(あまりに一星が怒るので、逆ギレ。手話と声で)じゃ、ほっとけばよかったの!?」
一 星「(は?)(手話で)そんなことは言ってないよ」
鈴 「(手話と声で)わたしは一星のせいでおせっかいになったんだから!」
一 星「(手話で)俺のせい?」
鈴 「(手話と声で)そうだよ」
一 星「(手話で)何だそれ!(頭をぐしゃぐしゃして座り込み)もおおおお!」
鈴 「………(顔を覗き込むため、しゃがみ込む)」
一 星「………(手話で)鈴が死んじゃったらって想像したら、すごく怖かった。どれだけ俺が鈴を大事に思ってるか、鈴はぜんぜんわかってないんだ(むすっ)」
鈴 「(手話と声で)わかってるよ」
一 星「…………」
鈴 「(もう一度、手話と声で)ありがとう。来てくれて」
一 星「(ため息)…………(手話と顔で)あーあ、ムカつく! 惚れた方がいっつも負けだ」
鈴 「(笑って立ち上がり、手話と声で)帰ろう。(そのまま一星に手を伸ばすが、またもやくしゃみをする)う~冷えた」
一 星「(と、急に立ち上がり、コートの前を広げて、がばっと鈴をいとおしそうに包み込む)」
鈴 「あったか~………」
一星の腕の中にうもれる鈴。
それから一星を見上げる鈴。
鈴 「…………」
一 星「…………」
2人、見つめ合い、微笑み合う。
東京・深夜の昔の家・表
昔の家の前に立っている深夜。
同・リビング
10年前で、時が止まっている部屋の中。家の中をじっと見回す深夜。
亡き妻・彩子との新婚時代の写真が入った写真立てを手に取る。
深 夜「……………(遺品整理をしようと、心に決める)…………」
(日替わり)
マロニエ産婦人科医院・前
翌朝。
ピンクの特攻服を着たオバサン達を前に、犬山が演説している。マロニエの面々が遠巻きにそれを眺めている。
犬 山「本日をもって、ピンクエンペラーは解散する!」
元ピンクエンペラー達「………!?(動揺)」
元ピンクエンペラー1「なぜですか、総長!」
元ピンクエンペラー2「うちら、まだ総長とてっぺん目指したいっす!」
犬 山「昔のうちらは、このピンクの鎧がねえと生きられなかった。だけど、今は違うだろ?」
元ピンクエンペラー達「…………」
犬 山「普通のオバハンとして、胸張って生きていけんだろ? こんなトップクで絆を確認しなくても、そこらのファミレスで集まれんだろ!」
元ピンクエンペラー1「イヤです、総長!(泣き出す者あり)」
犬 山「制服を脱げ! 総長、最後の命令だ!」
苦しげにピンクの服を脱ぎ出す面々。その下から現れたのは、普通のおばさん服だ。
犬 山「今日からあたしは総長じゃない。ただの犬山さんだ。じゃあな」
実にカッコよく特攻服を脱ぎ捨て、マロニエの面々のところにやって来る犬山。
犬 山「お騒がせしました。最後に雪宮先生を守って戦えてよかったです」
別にピンクエンペラーが守ったわけでもないが、一同、そんな気分でうなずく。
蜂須賀「(もらい泣きしている)師長はカッケーっす」
鈴 「解散しないでもいいのに」
深 夜「もったいない気もします」
犬 山「物事には始まりと終わりがあるからね。さて、仕事戻ります!」
一 同「(なぜかピンクエンペラーのように)うぃっすッ!」
犬山について、鈴、蜂須賀、伊達、外来診察室の方に行く。
2人になる深夜と麻呂川。
麻呂川「みんな変わって行くんだな………」
深 夜「…………院長」
麻呂川「ん?」
深 夜「今度、何日かお休み頂きたいんですけど」
麻呂川「(察して)………ああ。もちろんだよ(微笑む)」
* * *
ついに家を整理する決心をした深夜。命の“はじまり”と“終わり”をつかさどる2人の結末とは―ー。続きは本誌にてお楽しみください。
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