自分の先祖はどんな人物だったのか――? 日本人の90%が江戸時代、農民だったとされますが、さらに平安時代まで千年遡ると、半数は藤原鎌足にルーツがあるといいます。名字、戸籍、墓、家紋からたどることのできる先祖。『先祖を千年、遡る』(丸山学著)より、自分自身の謎を解く醍醐味とその具体的手法を伝授します。
今自分がここに存在している理由をひもとく
皆さまは、ふと自分が今ここに存在している不思議さを感じることはないでしょうか?
もちろん千年以上前から連綿と続く先祖の存在があることは、疑いようのない事実です。
しかしながら、自分の父母や祖父母の顔や名前は分かっていても、それより前の代のことになると名前さえ分からない。ましてや、先祖がどんな生活をしていたのかということになると全く知らないという方も多いようです。
実は、そうしたまだ見ぬ我が先祖に出会う方法というものがあります。
戸籍を丹念にたどって古いものまで取得していくだけでも幕末を生きた先祖の名前までは多くの場合判明します。その情報を基に図書館で郷土史をめくってみれば、その先祖の暮らしぶりをも感じることができます。
古い本籍地に足を運んでみれば、江戸時代から代々続く我が先祖の墓石が立ち、交流も面識もない総本家が今もそこに存在し、貴重な家の歴史が伝えられているのを知ることになります。
また、行政機関や旧家には先祖が暮らした村の江戸期の古文書(宗門人別帳や検地帳など)が存在している可能性があり、そこには先祖が所有していた土地の広さや村での立場を表すような記述も見つかるかもしれません。
武士の家であれば藩の記録の中に、我が先祖のことが記載されているはずです。
「分限帳」と呼ばれる帳面を開いてみれば、そこには全藩士の名前と給与(知行高、扶持)まで記されています。実際に調査をした中でも、分限帳を見たことによって先祖が越後国の某藩で足軽の武士であったことが分かり、米十数俵という薄給であったにもかかわらず幕末の戊辰戦争では奥羽越列藩同盟軍として最前線に送られて、最新兵器を擁する官軍の砲弾を浴びてあっけなく命を散らしてしまった記録に出会いました。
多くの先祖探しに関わっている私は、誰にも連綿と続く先祖の存在があり、その末に今ここにその人が生きているのだということを強く実感しています。調べてみたら先祖がいなかった、などという人はいないのです。
ただし、そうした昔の記録や記憶は徐々に失われつつあります。
戸籍も古いものはやがて廃棄されていく決まりになっています。
古い本籍地を訪ねても、昔のことを知る古老が時と共にどんどん少なくなっています。地方の過疎化で、古くからその地域で暮らし続けていた総本家や旧家が別の地に移住してしまっているケースも多くなっています。
複雑化した世の中で各個人としても深い悩み、迷いを抱えていることと思います。
しかし、先祖の苦しみや生き方を知った時、おのずと自らの生き方の指針が見えてくるはずです。千年以上の長きにわたり続いてきた系譜の中では自分の一生などほんの一コマ、ワンシーンにすぎません。それだからこそ、祖先が生きた「文脈」を知り、そのうえで自分の生き方を考え、次世代に伝えていくことに大きな意味があるのではないでしょうか。
貴重な先祖の記録が失われつつある今、日本人の多くが生き方に迷いが生じている今こそ先祖を知るための行動を起こしてみませんか?
これまでは一部の専門家の中だけで伝えられてきた先祖探しの手法を、本書では惜しみなく公開していきます。
具体的な古文書の読み解き方はもとより、名字や家紋などから自家の千年前の歴史を推測する方法などにも触れていますので、まずは楽しみながら読み進めていただければと思います。
ちょっとしたコツを知るだけで「過去」への扉は意外と簡単に開くものです。私と一緒にその扉を押してみましょう。
先祖を千年、遡るの記事をもっと読む
先祖を千年、遡る
『先祖を千年、遡る 名字・戸籍・墓・家紋でわかるあなたのルーツ』試し読み