2022年最も売れた本『80歳の壁』は、「我慢せず好きなことをするのが体にいい」とこれまでの高齢者の健康常識を覆す一冊で、多くの反響をいただきました。では、具体的にはどんなふうにすればいいのか? 食事や運動など具体的な生活習慣について、たくさんご質問をいただく中で生まれたのが、最新刊『80歳の壁[実践編]』です。
がくっと衰える人が多い<80歳の壁>をいかに乗り越えるのか? 食べ方・眠り方・入浴・運動など……、ちょっと意外、でもすぐに取り入れられる具体的な秘訣をつめこんだこの新書より、一部を抜粋してお届けします。
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高齢者にとって、「家事」は格好の運動になります。掃除、料理、洗濯などの家事を、便利になった機器をうまく利用しながら、なるべく自分で続けていくことをおすすめします。
健やかに老いる要諦は、「我慢しない」ことに加えて、「やめない」ことです。家事を続けて残存能力を使えば、フレイルに陥るのを防げます。また、認知症の予防にもなります。家事は、体だけでなく、頭の体操にもなるからです。
ただ、残念ながら、体に残された力は年々乏しくなっていきます。それでも、私は、なんとか工夫し、最近の便利な機器の力を借りて、またヘルパーさんに助けられながら、部分的にでも家事を続けるといいと思います。
まずは、最も体を使う「掃除」をどう続けるか、そこからお話ししましょう。
掃除をめぐる「基本方針」は、自分で掃除して疲れ果てては元も子もないので、加齢とともに「作業量」を減らしながら、続けることです。
まず、それまで使ってきた掃除機を「重い」と感じはじめたら、最近流行りの軽量型のスティックタイプに買い換えましょう。近ごろでは、1キログラム以下の掃除機も出ています。なお、この本の重さが約160グラムなので、新書6冊程度の重さしかありません。
それを扱うのも大変になってきたら、「ルンバ」などのお掃除ロボットの出番です。「ルンバにまかせると、運動にならない」と思う人もいるでしょうが、それでも高齢者には十分な運動になるのです。
お掃除ロボットは、段差や障害物に弱いので、邪魔になる物を片づけなければなりません。また、掃除をする場所までルンバを運び、ルンバ自体をクリーニングする必要もあります。そうしたことも、高齢者にはいい運動になるのです。
というわけで、70代、まだ元気な間は、掃除機を使って掃除し、80代は転倒を防ぐためにも、お掃除ロボットとヘルパーさんにまかせるというのが、ひとつの目安になると思います。
そもそも、高齢になると、どうしても掃除が行き届かなくなりがちです。すると、ハウスダストが増え、ダニが増殖し、健康面でもマイナスが生じます。
また、ゴミが落ちていると、つまずきやすく、ころびやすくもなります。
さらに、精神衛生上も、室内をきれいに保つのは大切なことで、家の中が荒れると、てきめんに老いが進みます。いろいろな方法をうまく使って、室内をきれいに保ちましょう。