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2023.05.02 公開 ポスト

「ありえない」という否定語は傲慢で不寛容小池龍之介

楽しみにしていた休暇、意気揚々と出かけた旅先なのに、ついちょっとしたことでモヤモヤ、イライラしてしまったりしていませんか。小池龍之介さんの『しない生活』は、そんな乱れた心をスーッと静めてくれる一冊。本書が説く108のメッセージの中から、いくつかピックアップしてお届けします。

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「ありえない!」という決めゼリフ(のようなもの)をよく耳にするようになったのは、筆者が高校生くらいのときですから、十五年くらい前からのことでしょうか。今ではすっかり日常語として定着して、「何それ、ありえないよねー」などと、対象を完全否定しつつ、微妙にバカにする使い方をされていますね。

ふつうは失敗しないだろうと思える簡単な仕事でミスをした部下に、「ありえない」。みんなが笑っている場で急に暗い自分語りをする、空気を読めない子に、「ありえない」。あるいは、テレビで報道される凶悪犯罪についても、「ありえない」。

このセリフは文字通りに取ってみれば、「それは起きるはずがない」とか、もう一歩進んで「起きてはならない」「非常識な、起こるべきではないことだ」という意味となりましょう。

そう考えてみますと、「ありえない!」という言葉に、ほんのり傲慢(ごうまん)な響きが含まれているように思われる理由も見えてきます。なにせそれは、「起こるべきことと、起こるべきでないことは、全部、このワタクシの常識に沿って、決まるのである。他人と世界は、それに従いなさい」というニュアンスをはらむのですから。

(写真:iStock.com/monkeybusinessimages)

この傲慢さは、現実に目の前で起きている事実を、「ありえない」と拒絶することによって、私たちの心を不寛容にさせ、いら立たせます。しかし現実は、自分の思惑を超える、あらゆることが起こるのが、当たり前なのです。地震も起こる。火事も起こる。犯罪も起こる。裏切りも起こる。理不尽な扱いも起こる。原発事故も起こる。戦争も起こる。

そう、すべては「ありえる」と開き直れば、心は強くなるのです。

関連書籍

小池龍之介『しない生活 煩悩を静める108のお稽古』

メールの返信が遅いだけで「嫌われているのでは」と不安になる。友達が誉められただけで「自分が低く評価されたのでは」と不愉快になる。人はこのように目の前の現実に勝手に「妄想」をつけくわえ、自分で自分を苦しめるもの。この妄想こそが、仏道の説く「煩悩」です。煩悩に苛まれるとき役に立つのは、立ち止まって自分の内面を丁寧に見つめること。辛さから逃れようとして何か「する」のでなく、ただ内省により心を静める「しない」生活を、ブッダの言葉をひもときながらお稽古しましょう。

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メールの返信が遅いだけで、「嫌われているのでは」と不安になる。友達がほめられただけで、「自分が低く評価されたのでは」と不愉快になる。つい私たちは、ちょっとしたことでモヤモヤ、イライラしがちです。小池龍之介さんの『しない生活』は、そんな乱れた心をスーッと静めてくれる一冊。本書が説く108のメッセージの中から、いくつかご紹介しましょう。

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小池龍之介

1978年生まれ。山口県出身。東京大学教養学部卒業。元僧侶。ウェブサイト「家出空間」主宰。2019年に還俗し、現在は「月読お稽古場」道場主。著書に『しない生活』(幻冬舎新書)、『沈黙入門』『もう、怒らない』(ともに幻冬舎文庫)、『考えない練習』『苦しまない練習』(ともに小学館文庫)、『超訳 ブッダの言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『平常心のレッスン』(朝日新書)、『“ありのまま" の自分に気づく』(角川SSC新書)などがある。

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