楽しみにしていた休暇、意気揚々と出かけた旅先なのに、ついちょっとしたことでモヤモヤ、イライラしてしまったりしていませんか。小池龍之介さんの『しない生活』は、そんな乱れた心をスーッと静めてくれる一冊。本書が説く108のメッセージの中から、いくつかピックアップしてお届けします。
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「ありえない!」という決めゼリフ(のようなもの)をよく耳にするようになったのは、筆者が高校生くらいのときですから、十五年くらい前からのことでしょうか。今ではすっかり日常語として定着して、「何それ、ありえないよねー」などと、対象を完全否定しつつ、微妙にバカにする使い方をされていますね。
ふつうは失敗しないだろうと思える簡単な仕事でミスをした部下に、「ありえない」。みんなが笑っている場で急に暗い自分語りをする、空気を読めない子に、「ありえない」。あるいは、テレビで報道される凶悪犯罪についても、「ありえない」。
このセリフは文字通りに取ってみれば、「それは起きるはずがない」とか、もう一歩進んで「起きてはならない」「非常識な、起こるべきではないことだ」という意味となりましょう。
そう考えてみますと、「ありえない!」という言葉に、ほんのり傲慢な響きが含まれているように思われる理由も見えてきます。なにせそれは、「起こるべきことと、起こるべきでないことは、全部、このワタクシの常識に沿って、決まるのである。他人と世界は、それに従いなさい」というニュアンスをはらむのですから。
この傲慢さは、現実に目の前で起きている事実を、「ありえない」と拒絶することによって、私たちの心を不寛容にさせ、いら立たせます。しかし現実は、自分の思惑を超える、あらゆることが起こるのが、当たり前なのです。地震も起こる。火事も起こる。犯罪も起こる。裏切りも起こる。理不尽な扱いも起こる。原発事故も起こる。戦争も起こる。
そう、すべては「ありえる」と開き直れば、心は強くなるのです。
しない生活
メールの返信が遅いだけで、「嫌われているのでは」と不安になる。友達がほめられただけで、「自分が低く評価されたのでは」と不愉快になる。つい私たちは、ちょっとしたことでモヤモヤ、イライラしがちです。小池龍之介さんの『しない生活』は、そんな乱れた心をスーッと静めてくれる一冊。本書が説く108のメッセージの中から、いくつかご紹介しましょう。