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しない生活

2023.05.04 公開 ポスト

心のこまやかな変化を見つめればイライラから抜け出せる小池龍之介

楽しみにしていた休暇、意気揚々と出かけた旅先なのに、ついちょっとしたことでモヤモヤ、イライラしてしまったりしていませんか。小池龍之介さんの『しない生活』は、そんな乱れた心をスーッと静めてくれる一冊。本書が説く108のメッセージの中から、いくつかピックアップしてお届けします。

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本項を記す前夜、筆者にはしばらくぶりに腹立たしい出来事があり、うっかりイライラを反復していますと寝つけなくなり(いやはや)、それからようやく我が怒りを見つめ、受け止めようとし始めたのでした。

それまでは切れ間なく怒りが自分を支配していたように見えます。ですが、面白いことに、自分の怒りを観察し始めますと、それ以外の感情が多数混ざっているのが見えてくるものです。たとえば「一時間くらいは怒っていたなあ」と悔やむ思いや、「明日起きたら仕事しなきゃなあ」と未来へ走る思念、などなど。

それらを経てから、再びとらわれの強い感情(この場合は立腹)が現れる。ただし、心は「怒っている自分」という自我イメージを固定したがり、強い感情のみを記憶して弱い感情を無視して忘れるため、同じ感情が持続していると錯覚します。

つまり、実際の心は一瞬一瞬、変動する(無常である)のに、自我はそのうちの目立つもののみに気を取られ、いわば変化がなかったことにして、一色に塗りつぶしてしまうのです。

(写真:iStock.com/frantic00)

裏返しますと、強く反復する怒りの合間に、別の弱い感情が入ってくることを見つめると、怒りが永続していないことに気づく。すると「怒っている自分」という確固たる自我イメージは崩れ、楽になる。悲しみが続くときも、その合間に「あ、天気が良いな」といった別のことを思う自分に気づくと、抜け出せます。

この脳には、ものごとを雑に見て情報を一色に塗りつぶす癖があります。それに抗して、こまやかな変化、心が無常であることに気づくよう、意識の解像度を上げるお稽古をすることです。「無常を智慧(ちえ)によって体感すると、苦しみから離れ心が清まる」(『法句経(ダンマパダ)』二七七偈)と。

関連書籍

小池龍之介『しない生活 煩悩を静める108のお稽古』

メールの返信が遅いだけで「嫌われているのでは」と不安になる。友達が誉められただけで「自分が低く評価されたのでは」と不愉快になる。人はこのように目の前の現実に勝手に「妄想」をつけくわえ、自分で自分を苦しめるもの。この妄想こそが、仏道の説く「煩悩」です。煩悩に苛まれるとき役に立つのは、立ち止まって自分の内面を丁寧に見つめること。辛さから逃れようとして何か「する」のでなく、ただ内省により心を静める「しない」生活を、ブッダの言葉をひもときながらお稽古しましょう。

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しない生活

メールの返信が遅いだけで、「嫌われているのでは」と不安になる。友達がほめられただけで、「自分が低く評価されたのでは」と不愉快になる。つい私たちは、ちょっとしたことでモヤモヤ、イライラしがちです。小池龍之介さんの『しない生活』は、そんな乱れた心をスーッと静めてくれる一冊。本書が説く108のメッセージの中から、いくつかご紹介しましょう。

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小池龍之介

1978年生まれ。山口県出身。東京大学教養学部卒業。元僧侶。ウェブサイト「家出空間」主宰。2019年に還俗し、現在は「月読お稽古場」道場主。著書に『しない生活』(幻冬舎新書)、『沈黙入門』『もう、怒らない』(ともに幻冬舎文庫)、『考えない練習』『苦しまない練習』(ともに小学館文庫)、『超訳 ブッダの言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『平常心のレッスン』(朝日新書)、『“ありのまま" の自分に気づく』(角川SSC新書)などがある。

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