国民1人当たり28万円ものかくれ資産
また別の興味深い調査をご紹介しよう。
人々が家庭の中にどれだけのモノを眠らせているか(退蔵)について調査したデータがある。「みんなのかくれ資産調査委員会」が株式会社ニッセイ基礎研究所の監修のもと、メルカリからもデータの提供を受け、日本の一般家庭に眠る不要品(=1年以上利用していない品物)の総量に関して調査したものだ(n=全国の10~60代の男女2536人)。
それによれば、1年以上利用していないモノの総数に、フリマアプリでの平均売買価格をかけ合わせた額を“かくれ資産”として算出したところ、日本全国で推計37兆円以上の退蔵品があることがわかった。
先ほど、不要となった製品が年間で約7・6兆円生まれているといったのは、経済産業省が2017年4月に出した「平成28年度電子商取引に関する市場調査」データに基づいている。そのデータでは、過去1年間に不要となった製品の推定価値が総額7兆6254億円であった。
整理すると、毎年約7・6兆円の不要品が生まれ、そのうちリユースに出されるのは2兆円ほど。残りの5兆円以上が退蔵されている。その累積を推定した値が37兆円以上ということになるということだ。なお、リユース品の価格は変化するので、フリマアプリの平均売買価格をかけ合わせた推計値としてはじき出している。
みんなのかくれ資産調査委員会のこの調査をもとにすれば、国民1人当たりの退蔵品の推計額は28万円あまり。1世帯当たりの平均かくれ資産は69万円あまりにも上る。平均給与やボーナスの支給額かと思えるような数字だ。
この莫大なかくれ資産は、売るべきタイミングを間違えなければ、間違いなく大きな価値を生み出す“ウリドキ資産”となる。放っておけばかくれ資産、ベストのタイミングでリユース市場に出せばウリドキ資産。どちらが有意義であるかは自明だと思うのだが、いかがだろうか。
ちなみに、このかくれ資産は、2019年の株式会社ゲオの調査によれば、携帯だけでも2兆1239億円ある。みなさんの周りにも、使わない携帯を自宅に眠らせてしまっている人はいないだろうか。その人たちの、10人に1人が携帯を売っただけで、日本の経済は2000億円以上活性化する。
同様に、2014年の株式会社コメ兵の調査では、もう使わなくなり押し入れに眠らせてしまっているジュエリー、時計、バッグ、ブランド衣料品のかくれ資産は、なんと約15兆円にもなる。こちらも、仮にその人たちの10人に1人が売っただけで、日本経済は1・5兆円も活性化するのである。
リユースが広まることで世の中に与えるインパクトを感じていただけただろうか。
これまでに述べてきたように、日本のリユース品は世界的に見れば「ユーズド・イン・ジャパン」という一つのブランドとなっている。日本人がバブルの頃に購入し退蔵させているモノがまだまだたくさんある。そう、たとえば、ルイ・ヴィトンに行列をなして買った人たちがもち続けているブランド品が眠っているのである。世界はそれがリユース市場に出てくるのを待っている。
たとえば、一時話題になった中国人による爆買い。下火になったともいわれているが、彼らは日本に来て新品ばかりを買いあさっているのではない。御徒町で宝石のオークションに顔を出すように、リユース品を大量に買い付けているのだ。なぜそんなに日本のリユース品が人気なのかといえば、これまで述べてきたように、日本人の「本物を見極める」審美眼、手に入れたらそれを「大事に使う」という民族性、働くときには極めて「真面目に働く」信頼性。この3つが揃っているからこそ、海外の人から見れば、真贋という点において、「日本のリユース品は新品より本物」だということなのだ。
それゆえ、リユース市場に注目するならば、それはまず日本なのである。
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リユース革命
日本では年間7.6兆円もの不要品が生まれる一方で、取引されるのは2兆円に過ぎない。その結果溜まってしまっているリユース品の累計総額は約37兆円にも上る。それをどう掘り起こすか。日本最大級の買い取り比較サイト「ウリドキ」創業者が明かす世界と日本のリユースのすべて。
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