オークション&フリマでモノの価値に対する意識も変化
日本のネットオークション元年は1999年。Yahoo! がヤフオク! の前身となる「Yahoo! オークション」を、楽天が「楽天フリマオークション」を立ち上げ、そこへソニーコミュニケーションネットワーク、DeNA、リクルート3社による「ビッダーズ(Bidders)」が続いた。
Yahoo! オークションは、1999年9月28日に“誰もが手軽に出品、入札ができるインターネットオークション”としてローンチした。そこから出品者の本人確認システムの導入、“オークションストア”の出店受付を開始、知的財産権保護の取り組み、スマートフォン・タブレットアプリの提供など、サービスをアップデートしてきた。
最近では、偽物出品対策を強化するとして、スパコン・ディープラーニングの活用を開始したり、ヤマト運輸やセブン-イレブンと組んだサービスの開発にも積極的だ。
数字を見ると、取り扱い高8899億円(2018年度通期)、常時出品数6480万品(2019年7月実績)、出品カテゴリ数4万531件(2019年7月実績)といった実績が公式サイトにアップされている。オークションとフリマの構成比は、4対6(2019年7月実績)となっている。
ヤフオク! は現在、こんなフレーズを掲げている。
「サクッと売り買いしたいものはフリマで。とっておきのものはオークションで。『安心して、楽しくリユースできる』場を提供するために、ヤフオク! は日々改善しています」
このフレーズを別の形で体現しているのが、2019年10月に登場したペイペイフリマかもしれない。かんたんにいえば、ヤフオク! のフリマ出品に特化したアプリがペイペイフリマだということができる。ヤフオク! とペイペイフリマが今後どのようなシナジーを生み出していくのか。現在のところはまだはっきりとした道筋は見えていないようだ。
楽天オークションはどうだろう。
このサービスは、1999年9月に楽天市場に開設された「楽天フリマオークション」を起点とし、2004年7月23日に「イージーシーク(Easy Seek)」のサービスを統合するなどして楽天オークションに生まれ変わった。
やがてNTTドコモが40%の株式をもつようになるが、ヤフオク! との差は歴然。競合ウェブ分析ツール「シミラーウェブ(Similar Web)」を使った株式会社ギャプライズが2015年7月に行った調査によると、ヤフオク! のアクセスシェアが92・72%と圧倒的で、楽天オークションは5・98%と大きく離された結果となっている。
そうした状況を受けて、楽天オークションは2016年にサービスを終了。2017年には法人格が消滅している。楽天オークションがサービスを終了していくプロセスと並行して、2014年11月25日に楽天のフリマアプリ「ラクマ」のサービスが開始され、2018年には買収によって存在していたもう一つのフリマアプリ「フリル」と統合、楽天の新しいフリマアプリとして一本化が図られた。
ビッダーズは、ソニーコミュニケーションネットワーク、DeNA、リクルートが合同で1999年に始めたサービス。ソニーコミュニケーションネットワークの「ソネット(Sonet)」と、リクルートのサイト「イサイズ(ISIZE)」内の、個人間商取引情報と出会い情報を有する掲示板“じゃマール・オン・ザ・ネット”と連携し、サービスの企画・運営をDeNAが担当してスタートした。
DeNAはアメリカのコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーのメンバーが中心になってこの年の3月に設立された会社で、ネットビジネス関連の戦略立案経験を企画・運営に生かすとしていた。
そこからの経緯をかんたんに辿ると、DeNAは、ビッダーズと並行して、携帯電話専用オークションサービスとして「モバオク」を開始する。モバオクが次第にパソコンにも対応し、一方ビッダーズは2013年1月に「DeNAショッピング」と改称、オークションサービスは2014年3月に終了する。
その結果、DeNAのオークションサービスがモバオクに一本化されていく。
ここまで見てきたように、個人間のモノのやりとりの経験値がさまざまなサービスを通じて徐々に蓄えられ、やがて、メルカリやラクマ、ペイペイフリマなどのプラットフォームが登場したことで、リユース品を売買する人々の経験値は加速度的に上がってきている。
ミレニアル世代(1980~2000年代初頭に生まれた世代、詳細は諸説ある)は、売ることを前提に購入前にいくらで売れるかを調べるといわれている。手持ちの品を売ることに対する抵抗は確実に減ってきているし、それを買い取る個人側にも躊躇いがなくなってきているといえる。
エスクローという、メルカリなどの第三者が売買取り引きの仲介に入る仕組みで、お金に関するトラブルを防止していることも大きい。
もう一つ、こうした個人間の売買が活発化した要因として、最近日本を襲う災害の数々が挙げられる。阪神・淡路大震災から進化してきた災害救助のアクティビティの中で、被災地へモノを届けるという運動が活発化した。このことは人々に、手元に埋もれている品でも必要とする人がいるかもしれないという、モノの新たな価値を知る経験となったのではないだろうか。
そういった流れの中で登場してきたのが、KonMariであり、断捨離やシンプリスト、ミニマリストなど、モノとの付き合い方を変容させる生き方だ。ちなみに、KonMariのときめき片づけのコンセプトは、「捨てるモノ選び」ではなく「残すモノ選び」であると語っている。
総じていえることは、かつての“もったいない”は「捨てるなんてもったいない」という意識だった。しかし時代は変わり「自分のもっているモノの価値を知らないなんてもったいない」という意識に変わってきたということもできる。
日本全体では、不要となった製品が年間で約7・6兆円も生まれているといわれている中で、ようやく2兆円規模の市場まで成長してきたところだ。逆に見れば、依然として5兆円以上のモノが毎年埋もれ続けているのである。
次のページ:国民1人当たり28万円ものかくれ資産
リユース革命の記事をもっと読む
リユース革命
日本では年間7.6兆円もの不要品が生まれる一方で、取引されるのは2兆円に過ぎない。その結果溜まってしまっているリユース品の累計総額は約37兆円にも上る。それをどう掘り起こすか。日本最大級の買い取り比較サイト「ウリドキ」創業者が明かす世界と日本のリユースのすべて。
- バックナンバー