AIの進化は凄まじく、多くの中高年が「自分の仕事の賞味期限はいつまでか」と戦々恐々としているだろう。AIに負けないマインドをいかに保つか? いかなる場所も時間も超えて、普遍的な価値を持ち得る仕事の「絶対値」を探る、丹羽宇一郎氏の新刊『仕事がなくなる!』から、まえがきをお届けします。
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「AI (*1)の進化がすさまじいが、自分の仕事がなくなるのではないか……」
そんなふうに思っているビジネスパーソンは多いと思いますし、ときに尋ねられることもあります。私は、こう答えます。
「はい、あなたの仕事はなくなりますよ。考え方とやり方を変えなければ……」
2023年になって「ChatGPT(*2)(チャットGPT)」をはじめとする対話型または生成AI(*3)に注目が集まっています。
これらの対話型AIは、学習した大量のデータをもとに、まるで会話をするように、利用者とAIの間で文章でやり取りができるようになったというだけで、これまでのAIと比べて何も真新しい発明があったわけではありません。
ただ対話型AIがすごいのは、学習させているデータの量が桁外れに大きいという点でしょう。学習データは24時間、加速度的に増えており、そのスピードが人間の想像を超えたものであるからこそ、対話型AIの進化ぶりに対し、多くの人が脅威に感じているのです。
現段階ですでに、文書作成、翻訳、要約、法的文書の作成、データ解析、プログラミングなどさまざまなことが行えるようですから、文字や文章に関係する仕事に携わっている人は、大きな影響を受けるでしょう。
いや、文字や文章に関係する仕事に限定するまでもなく、どんな仕事であっても、AIの影響を受けない仕事はないはずです。
リアルタイムで、ある程度の正確な回答を返すAIが、こんなに早い段階で登場するとは、専門家でも予想だにしていなかったようです。
AIが人間の能力を凌駕するシンギュラリティ(技術的特異点)は2045年頃に訪れると言われていましたが、今は再来年ではないかと予想する専門家もいるようです。
一方で、現段階では回答に不正確な部分も多く見られたりするなど、改善の余地は大きいようです。また各方面から著作権侵害や悪用のリスクについて、さまざまな規制やルールが求められています。
とはいえ、この流れはもう、誰にも止められません。
ならば、ほとんどのことをAIがやってくれるから、人間はもう用済みなのか?
そんなことはありません。
しかし、人間がAIにはないものを使って仕事をしない限りは早晩、あなたの仕事はAIに取って代わられるでしょう。
大事なことなので繰り返しますが、AIの進化は、もう誰にも止められません。
だからこそ人間は、AIをうまく利用しながら、人間特有の能力を使った仕事に注力することが大事になるのです。
AIに使われるのではなく、AIを使うために必要なものは何か?
環境が劇的に変わっていくなかで、仕事のスタイルはどう変わらざるを得ないのか?
どのような姿勢で仕事に取り組めば、仕事を失わず、やり甲斐を感じられるのか?
いかなる場所も時間も超え、普遍的な価値を持ち得る仕事の「絶対値」を探りつつ、それらのことを本書でじっくり語っていきたいと思います。
*1─Artificial Intelligence(人工知能)の略。
*2─アメリカのOpenAIという企業によって開発された。Chatは歓談の意味。GPTはGenerative Pre-trained Transformerの略で、事前学習をして、自ら新たな文章を生成する言語モデルを指す。
*3─Generative AIといい、生成的人工知能のこと。
仕事がなくなる!
AIの進化は凄まじく、多くの中高年が「自分の仕事の賞味期限はいつまでか」と戦々恐々としているだろう。AIに負けないマインドをいかに保つか? いかなる場所も時間も超えて、普遍的な価値を持ち得る仕事の「絶対値」を探る、丹羽宇一郎氏の新刊『仕事がなくなる!』から、一部をご紹介します。