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京大芸人シリーズ最新刊『京大中年』

2023.06.07 公開 ポスト

ロザン菅さんに聞いた!ファン待望の京大芸人シリーズ最新刊。笑って泣ける『京大中年』発刊にあたって菅広文(ロザン)

菅広文はやっぱり天才だ!京大中年を読んだ誰もがそう思うだろう。文章の巧みさはいわずもがな。“過去の自分”や“過去の宇治原”に手紙で語りかける手法や構成も見事。

「少年」だったふたりは、「芸人」になって人気者になり、いまや中年。46歳の菅さんから18歳の宇治原さんへ。そして、受験に失敗した19歳の自分へ。芸人になったロザン、クイズ番組で活躍する30代の宇治原さんへと、年代を追いながら、今現在の目線で綴られる物語。

そこには、相方への愛や芸人としての矜持と悲哀、人には何が大切かという「ロザン的生きるヒント」が詰まっている。読み進むうちにぐいぐい引きこまれ、ときに笑い、ときに涙する。そして、読んだ後には、明るい気持ちになっている。こんな文章を書ける人はそうそういない。

菅広文氏に『京大中年』執筆秘話をお聞きした。

(インタビュアー:中井シノブ)

*   *   *

受験生にとってのバイブルとなり、将来に迷う若者や親世代にも突き刺さった『京大芸人』

――『京大中年』は、京大芸人』からはじまる連作小説の第三弾です。前作から14年の月日には意味があったのでしょうか?

  1作目の『京大芸人』を書いたときから、連作にできたらと考えていました。だから『京大中年』は、実際に中年になってから、その時の目線で書こうと。実はこの後に『京大老人』の予定もあります。僕が63歳になったら書こうかと。ロザン(=63)ですから(笑)。その頃は、どんな老人になってるんでしょうね……

 

――最初の作品『京大芸人』は、どんな小説ですか?

  タイトルは『京大芸人』ですが、芸人としての仕事のことは書いていないんです。というのも、当時は、芸人としてのキャリアが、そんなになかったから。まわりにいた“芸人の卵”は、お笑いが好きで芸の世界に入っているのに、僕たちは違った。売れる売れないよりも、「ふたりでしゃべってお金がもらえたらいいか」というかんじだったんです。そんな当時の日々も含め、「“京大生で芸人”は面白い」と思った高校生ふたりが、受験に臨む姿や勉強法、友達からコンビになる過程を赤裸々に綴っています。

 

――『京大芸人』は、受験生にとってのバイブルになったことはもちろん、将来に迷う若者や親世代にも突き刺さり、大ヒットしました。小説にしたことには意味がありますか?

  最初から小説でと思っていたわけではなくて。当時、いくつかのパターンで文章を書いていたんです。僕が主人公のパターンもあった。でも、出版社の方が、「これだ!」と言ってくださったのが、宇治原さんが主人公の小説だった。確かに、一番筆が進んだんですよね。出版というお話をいただいたとき、担当の編集さんに言われたのは、「最後まで書ききってください」ということ。1章、2章を書くことができる人は山ほどいると。でも職業にするには、最後まで書ききれるかどうかが肝心なんだと。

 

――『京大芸人』というタイトルも秀逸でした。

  実はパクりなんです(笑)。麒麟の田村裕さんの『ホームレス中学生』が爆発的に売れて。何故売れたのかと分析して考え至ったのが「相反する言葉を組合せれば面白いし、人を惹きつけられる」ということでした。うちだったら、京大と芸人。当時はなかった組み合わせでしたから。

 

――一方、2作目の京大少年では、IQ芸人・宇治原さんが生まれるまで。こちらも、宇治原さんへの愛があふれていました。

  そうなんですかね。自分ではそんなふうには思ってないんですが。ただ、『京大中年』と同時に文庫化することが決まって、最近になって『京大少年』を読み返してみたんです。やっぱり面白かった。よく書けてますよね~(笑)。

 

――子供の頃から、書くことは得意だったんですか?

 好きでしたが、小説家になりたいと思うほどではなかった。そういえば、小学生のとき、作文で学校代表に選ばれたことがありましたね。いや、今思い出しました(笑)。

「“学校の勉強”は社会では役立たない」と言う人は、表面的にしか見ていないだけ

――『京大中年』は、同じ小説でも、現在の菅さんが、過去の自分や宇治原さんへ手紙を送る手法で書かれています。

 『京大芸人』『京大少年』のような小説は、もう書けることがわかったんです。そういう小説を書くことに飽きた部分もある。『京大中年』を具現化するためには、どう書いたらいいか。飽きずに最後まで楽しく書ききれる、違った小説にしようと思いました。

 

――どんな方に読んでほしいですか?

 「学校の勉強には意味がない」、「学校の時間は無駄だ」と思っているような人にこそ、読んでほしいですね。「学校の勉強は社会では役立たない」と言う人がいますが、それは表面的にしか見ていないから。「数学の公式なんて、社会では使わない」とかね。そうじゃなくて、数学的思考、国語的思考が必要なんです。たとえば、悲しいときに、その気持ちをどれだけ因数分解できるか。悲しさのなかにある感情や要因を分解して潰していけば、悲しさを乗り越えるための解決策が見えてくるでしょう。

 

――感情的にならずに冷静に分析するということですか。

菅  感情的になってもいいんです。僕も宇治原さんも実は感情的な人間です。ただ、感情的な事柄も、また別の目で、俯瞰で見ている。憂さ晴らしで飲みに行っても、結局何も解決できないでしょう。ところが、今の問題を書き出していくと、その先が見えてくる。

 

――菅さんにとっては、学校での勉強がすべて今に繋がっている。

  繋がっていないのは、ピアニカぐらいかなあ(笑)。苦手だったんですよね。つまりね、誰しも苦手なことはあるということ。勉強は、めちゃくちゃできなくてもいいんです。クラスで一番じゃなくても、平均的でいいんですよ。自分が楽しいのが一番。僕はゲーム好きなんですが、下手なんですよね。それでいいんです。できる人と比較してもしょうがないから。

 

――この3部作は、どんな順番で読んでほしいですか。

菅 『京大中年』を読んで面白いと思っていただけたら、遡って『京大芸人』や『京大少年』を読んでいただければ嬉しいですね。もちろん、『京大芸人』から順に読んでいただいてもいい。

 

――宇治原さんは『京大中年』について何かおっしゃいました?

 「めちゃくちゃ面白かった」と言ってくれました。ほっとしました。宇治原さんが良いと言ってくれるなら、きっと売れるから(笑)。

 

――お互いの仕事について話されることはありますか。

  ふたりで長くやっていくためには、お互いが独り立ちしていないといけない、と。そういう意味では、今後どんな仕事をするかは相談しますね。より長く続けるためにはどうすればいいか。ありがたいことに、僕たちは、一度いただいた仕事を長く続けられています。チープな表現かもしれませんが、そこにはおのずと感謝が生まれてくるんです。そしてまたそこから、仕事の継続につながっていく。

 

――そんなふうにブレずに生きるのは難しいことですが。

菅  自分のためになることをするってことでしょうか。人のために何かをするのは好きじゃないんですよ。「人のため」って言うと、ええように聞こえるけど、まずは自分が利益を得ることが大切でしょう。自分が利益を得ていないのに、まわりに利益を与えることなんてできません。

 

―​​​​​​​―今後、書きたい題材はありますか?

菅  子育て本は書きたいですね。僕も宇治原さんも子育て中だし、それぞれに考え方も違う。うちの家では、僕と妻と子供の3人が「並列」です。「子供が一番」という考え方でいると、誰かが損をすることになります。子供のために親が何かを犠牲にするのは、結局よくないんです。

子供が受験する時期になっても、僕は勉強しろとは言いません。ただ、「学校から呼び出されるような、俺に迷惑をかける勉強の仕方はやめてくれ」と言うかも。勉強することは大切だけど、大学がどこかは重要じゃない。受験のためにどんな勉強をしたかが大切。でも、うちの子供と宇治原さんの子供が入学する大学が逆だったら、それはそれでネタにしたいですね(笑)。

 

―​​​​​​​―『京大老人』は十数年後、手法や書き方も変わっていそうですね。

菅  15年後に世の中がどうなっているかなんて分からないですからね。書籍も形が変わって音声メディアになっているかもしれないし。逆に、その時代に合ったものにするんでしょうね。ただ、僕と宇治原さんの変わらないスタンスとか、おしゃべり感みたいなものは出したいですね。

 

―​​​​​​​―ありがとうございました。

 

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京大芸人シリーズ最新刊『京大中年』

6月8日に発売が決まった、ロザン菅のベストセラーシリーズ=35万部の「京大芸人」シリーズの最新刊!タイトルは『京大中年』。

2009年に発売の『京大少年』も、同時に文庫化!

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菅広文 ロザン

1976年10月29日、大阪府高石市生まれ。大阪府立大学(現大阪公立大学)経済学部進学。96年8月、高校時代の友人である宇治原史規(京都大学法学部卒業)と「ロザン」(吉本興業所属)を結成。高性能勉強ロボ・宇治原の勉強法や、二人が芸人になるまでを描いた爆笑小説『京大芸人』『京大少年』のほか、縄文時代から現代までの日本史が爆笑しながら一気に頭に入ると評判の『京大芸人式日本史』や、勉強に向き合う思考が変わると評判の『京大芸人式 身の丈にあった勉強法』などの「京大芸人シリーズ」はすべてベストセラーになり、累計35万部突破。ほかに『菅ちゃん英語で道案内しよッ!』、ロザンの2人で書いた初の著書『京大 芸人 ノート』も話題に。最新刊『京大中年』が話題に!

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