「若し私が彼方へ嫁つたら、貫一さんはどうするの、それを聞かして」
「それぢや断然お前は嫁く気だね! これまでに僕が言つても聴いてくれんのだね。ちええ、膓の腐つた女! 姦婦!!」
(『金色夜叉』尾崎紅葉、新潮文庫)
(画:のぞゑのぶひさ/原作:尾崎紅葉)
時は明治30年(1897年)。日清戦争に勝利後、欧米列強が荒れ狂う世界にのみ込まれつつあった時代の元旦から、讀賣新聞で華々しく連載をスタートした尾崎紅葉作の「金色夜叉」(写真)。後世でも超有名な貫一、お宮の二人が繰り広げる愛憎のストーリーは「新聞連載中から非常に愛読され」(『金色夜叉』解説:福田清人、新潮社)、単行本になって何度も映画化、ほかにも芝居や流行歌、講談、浪曲、漫才、宴会芸とさまざまなジャンルで講演されて、「知らない人はいないという位の時代が長く続いた」(『尾崎紅葉の「金色夜叉」』山田有策、角川ソフィア文庫)といいます。
生きていくのに重要なのは愛か金か。宮に裏切られた絶望から、世間に嫌われる“高利貸し”へ身を落とした貫一と、貫一を捨て銀行家に嫁いで後悔に苛まれる宮の行く末は——。世知辛さが今もヒリヒリ迫る明治時代の“初の大ヒット新聞連載小説”を、のぞゑのぶひさ氏が完全漫画化し、WEBでの無料試し読みがスタートです(「小説幻冬」では先行し、絶賛連載中)。
のぞゑのぶひさ氏は、“漫画化絶対不可能”と言われた日本文学の金字塔、大西巨人の『神聖喜劇』を10年の歳月をかけて描き下ろし(全六巻)、2007年に第36回『日本漫画家協会賞』大賞と、第11回『手塚治虫文化賞』新生賞を受賞し、原作の世界観や歴史、風俗を見事に昇華しました。
そして今回、原文がもはや現代の日本人には難しく読みづらい『金色夜叉』でも、熱海のあの名シーンだけでなく、人間的に魅力してやまない登場人物たちの描写から、明治の歴史・空気まで、わかりやすい現代語訳で鮮やかに描いています。
本日から隔週水曜日に公開するこちらの名作劇場を、ぜひお楽しみください。のぞゑのぶひさ特集として、『神聖喜劇』第1巻も、近々、無料公開いたします。そちらも合わせてお楽しみください。
→漫画『金色夜叉』第1回を読む
【漫画】金色夜叉
漱石にも影響を与えた、初の大ヒット新聞連載小説「金色夜叉」(原作:尾崎紅葉)を完全漫画化。とことん愛していた女・鴫沢宮(しぎさわ みや)を足蹴にするほどの絶望が、間貫一(はざま かんいち)を鬼に変えた……!!