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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2023.07.07 公開 ポスト

大河ドラマ『どうする家康』の最強の宿敵・武田勝頼には「家康の首を取るチャンス」が一度だけあった武器になる教養30min.編集部

現在、放映中のNHK大河ドラマ『どうする家康』。松本潤さん扮する徳川家康の「最強の宿敵」として登場するのが、武田信玄の息子・武田勝頼です。そんな勝頼には、家康の首を取るチャンスが一度だけあったといいます。その後の歴史がガラリと変わっていたかもしれない戦いの裏側を、『どうする家康』の時代考証者で、新刊『徳川家康と武田勝頼』の著者でもある平山優さんに解説していただきました。

*   *   *

なぜ勝頼は長篠の戦いに挑んだのか?

── 『徳川家康と武田勝頼』を執筆しようと思ったきっかけについて教えてください。

(写真:iStock.com/Studio-Annika)

現在、放映中の大河ドラマ『どうする家康』で、徳川家康にとって「最強の宿敵」とされているのが武田勝頼です。およそ9年間、父・信玄の時代から数えると10年間にわたって戦いを続け、しかも敗北寸前まで追いつめられたのは、家康の生涯の中でも勝頼しかいません。

勝頼と抗争していたころの家康は、生涯の中でもっとも苦しく、悩みの多い時期でした。同盟を結んでいた織田信長との関係がしだいに従属関係へ変化し、いち織田大名へとなり下がっていく。ところが本能寺の変によって、その流れが大きく転換する……。

こうした苦悩の時代の家康をちゃんと書いてみたい。そんな思いから、『徳川家康と武田勝頼』の執筆をお受けしました。

 

── 家康と勝頼、両者の存亡をかけた戦いが長篠の戦いです。この戦いには、「なぜ勝頼は重臣たちの反対を押し切って、織田・徳川連合軍に戦いを挑んだのか?」という大きな謎があります。

私も答えを求めて資料を漁り続けているのですが、完全には解明できていません。ただ、『三河後風土記』という江戸時代の軍記物にたった一行、「戦いの前日まで雨が降っていた」という記述があるんです。

雨が降っていれば、火縄銃の使用は非常に困難になります。雨の中なら、織田・徳川の鉄砲隊に勝つことができるのではないか。そう考え、勝頼は戦いに踏み切った可能性があります。

 

── 結果的には晴天になり、織田軍の新戦法「鉄砲三段撃ち」の前に、武田軍は敗退することになります。

また、武田家中における勝頼の立ち位置も関係していると考えられます。もともと勝頼は、武田家ではなく諏訪家の当主でした。ところが信玄の死によって、はからずも武田家の当主を継ぐことになってしまった。

信玄が残した重臣たちは、外様である勝頼を認めていませんでした。そこで勝頼は、戦いに勝ち続けることで権威を確立しようと考えたのでしょう。

そんな中、宿敵である信長と家康が目の前に現れたわけです。これは父・信玄が望んでも叶わなかった絶好のチャンスです。ここで勝つことができれば、自分の権威を不動のものとすることができる。その魅力に、勝頼は抗えなかったのではないでしょうか。

天下人になるには運も必要?

── お話をうかがって、本当に家康は運の強い武将で、勝頼は運のない武将という印象を受けました。

(写真:iStock.com/kuremo)

その通りだと思います。大河ドラマの仕事で家康の生涯を追っているのですが、家康は滅亡の危機に何度も直面しています。ところが状況がうまく作用して、ぜんぶ乗り切っているんです。

一方、勝頼の場合、決して悪手を打っているわけではないのに、打つ手、打つ手がみんな裏目に出てしまっている。調べれば調べるほど、勝頼という人は運が悪かったなと思います。

 

たとえば、勝頼には長篠の戦いのあと、沼津の戦いにおいて、家康に一矢報いるチャンスがありました。ところが、重臣から自重するよう諌められてしまうんです。「長篠の戦いの二の舞いになったらどうするんだ」と。それで、勝頼は躊躇してしまうんですね。

その結果、勝頼は家康をすんでのところで取り逃してしまいました。歴史に「もし」はありません。けれども、このとき判断をためらうことなく対決に踏み切っていたら、家康の首を取っていた可能性は否定できません。

天下人になったいわゆる三英傑、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の生涯を見ると、ここで転んでもおかしくないという状況をみごとに乗り越えています。あまりこう思いたくはないのですが、歴史にはやはり運も必要なのかなと思うことがあります。

 

── 平山さんは『どうする家康』の時代考証を担当していますが、ドラマの見どころを教えてもらえますか。

今回のドラマには、「どうする」というちょっと変わったタイトルがついています。なぜと思われる方も多いかもしれませんが、家康の生涯を知っている方でしたら、「なるほど、言われてみればそうかもしれない」と腑に落ちるのではないでしょうか。

家康の幼少期は、非常に不遇なものでした。織田家に人質として送られ、のちに今川家に人質として送られました。故郷・岡崎の地で、両親とともに成長することはできなかったわけです。

その後の人生でも、いろんな困難と対峙してきました。つねに生きるか死ぬかの選択に迫られる、そんな生涯だったんです。

 

そんな家康が、圧倒的に有利な状況で相手と対峙できたのは、大坂の陣だけでした。天下を獲った関ヶ原の戦いでも、家康は少数派でした。人生すべてにおいて「どうする」と判断を迫られる、その連続だったわけです。

そう考えてみると、『どうする家康』というタイトルは、家康にふさわしいタイトルだと思います。家臣とともに悩み、苦しみ、そして成長していく家康の姿を、ぜひみなさんに楽しんでもらえたらと思っています。

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】平山優と語る「『徳川家康と武田勝頼』から学ぶ徳川vs武田の歴史と時代考証という仕事」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら

 

書籍『徳川家康と武田勝頼』はこちら

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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。

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武器になる教養30min.編集部

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『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにした番組です。

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