ポスト
生き方
2月の夜、ロンドン。まだ19時前なのに、空は何時間も前から真っ暗だった。私はフランス人投資家との接待場所に向かって急いで歩いていた。相手が選んだ場所は、ロンドンで一番有名な老舗デパート、ハロッズの近くのお店だった。
「観光客かよ！ ハロッズの隣で接待なんて」とコートのポケットに手を突っ込みながら、小声でブツブツと文句を言った。
お店に近づくと、ハロッズ前に謎の巨大な像が視野に入った。6階建てのハロッズのビルに匹敵するほどの高さだった。神秘的な女祭司のように、草間彌生は通り過ぎるお客さんの上にそびえ立ち、巨大な絵筆で焼印を押すように建物に水玉を描いていた。それはルイ・ヴィトンとのコラボレーションの広告だった。
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月が綺麗ですね 綾の倫敦日記
イギリスに住む30代女性が向き合う社会の矛盾と現実。そして幸福について。
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