『俺はまだ本気出してないだけ』で切なすぎるオヤジの悲哀を描いた青野春秋氏の最新作は、アラサー女子と公衆電話の物語。
14年間の引きこもり生活にピリオドを打ち、生まれ変わるために旅に出た“松田夢子 28歳”は、たぶんどこにでもいる女の子だった……。周囲との繋がりを断ち、自分だけの世界で生きることを決めた日までは。その時から、あっという間に14年が過ぎていた。束縛されない、傷つかない、顔色をうかがわない。自分の部屋という温室の中での自由な暮らしは楽しかった。でも、不安という暗闇とはいつも隣り合わせ。だからだろうか、いつの間にか少しだけ薬の力を借りなければ生きられない女の子になっていた。
誰に非難されたわけではない。ひとりきりの生活が寂しかったわけでもない。
ただ、外の空気を吸いたかっただけ。誰かと話をしてみたくなっただけ。
外に出れば何かが変わるかもしれない。
誰かと繋がれば、薬を必要とする私から生まれ変われるかもしれない……。
だから、彼女は旅に出た。
大丈夫、きっと生まれ変われる───。
単行本には幻冬舎plusに連載されていた「第1話 はじまり」~「第6話 なまえ」、エンディングとなる4話分の描き下ろし作品を加えた全10話を収録。巻末スペシャル対談では青野春秋氏の創作秘話も読めちゃいます。
そんな「夢子ちゃん」の心が震えだす物語が8月27日(水)に発売。
でも、繋がるって、どういうこと? ケータイ電話やスマホがあれば、いつだって誰かと繋がっていられるじゃない。声だって聞けるし、メールで気持ちだって伝えられる。でも、それだけで大丈夫なのかなぁ……。今宵は勇気をもってケータイの電源をオフにしてから、ゆったりとお楽しみください。
『夢子ちゃん』青野春秋
A5判 並製 176ページ
青野春秋(あおの・しゅんじゅう)
1979年、茨城県生まれ。漫画家。
2001年「スラップスティック」で第45回ちばてつや賞(ヤング部門)優秀新人賞受賞。2005年「走馬灯」(月刊IKKI/小学館)で
デビュー。その後、『俺はまだ本気出してないだけ』(全5巻/小学館)は、ダメ男の悲哀をコミカルに描き上げて人気となり、2013年6月には同作品が実写映画化。現在、多くの連載作品を発表している。
夢子ちゃんの記事をもっと読む
夢子ちゃん
私が居てもいい場所はどこなんですか?
今を逃げることから始めてみる……
切なさの極限を公衆電話が繋ぐ物語。