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アリアドネの声

2023.06.25 公開 ポスト

ミステリー好き以外にも届けたい。抜群の「いい物語」【書店員×幻冬舎座談会③】 井上真偽

巨大地震発生。地下に一人取り残されたのは、目が見えず、耳も聞こえない女性だった――。

6月21日発売、井上真偽さん3年ぶりの新刊『アリアドネの声』が発売翌日に重版決定! 極限状態に置かれた盲ろうの女性を、ドローン一台で救出するという超難関ミッションを描く、長編ミステリ―です。大反響の本作の魅力を書店員さん×幻冬舎で語り合いました。(第三回)

参加者一覧

・宇田川拓也さん ときわ書房本店

・小泉真規子さん 紀伊國屋書店梅田本店

・本間菜月さん 三省堂書店名古屋本店

・三島政幸さん 啓文社ゆめタウン呉店(業務のため途中参加)

・太田和美 幻冬舎営業

・武田勇美 幻冬舎担当編集

地下迷宮からの脱出

太田 今回物語の舞台となる地下施設「WANOKUNI」の地図をパネルで制作したので、こちらも見ていただけますか?

作品の舞台となるWANOKUNIの見取り図

小泉 作中では目が見えず、耳も聞こえない中川さんを6時間以内に5階から3階の安全地帯まで導かないといけない。あと何分、あと何分っていうタイムリミットが伝わるので、気持ちは高まると思います。

太田 これは本間さんが作ってくれって言ってくれたんじゃなかったっけ?

本間 書店に置く拡材として、私が欲しいって言いました。地下に取り残された中川さんは危険な状態に置かれていて、上からは火が迫っていて、下からは水も来ている。逃げ場がない状況を書いた本なんだってこれを見れば一発でわかるんじゃないかと思ったんです。

 

(仕事の隙間を縫って三島さんが登場)

三島 こんばんは。すいません。ちょっとバタバタしてしまっていました。

太田 いえいえ、すいません。早速で申し訳ないんですけど、『アリアドネの声』のここがすごいっていうのがあれば教えてもらえますか?

三島 そうですね。まず地下施設で一人の女性を救うっていう大きな使命がかかるパニックサスペンスから始まる。そうすると、実はその女性は○○なんじゃないかって、疑惑が持ち上がる。面白さのベクトルがどんどん変わっていっちゃうところが、面白いですよね。(○○はネタバレ防止のため伏字)

太田 ありがとうございます。そうですよね。地下に取り残された女性をどう救うのかというサスペンスだと思っていたら、別の謎が浮上する。気になる点がどんどん出てきますよね。

三島 最初にバリアフリーの完成形のような最新鋭の地下施設が出てきたと思ったら、地震で大変なことになってしまう。そこで施設のアイドル的存在だった人に焦点が当たって、その人を助けないといけないという方に話が流れたかと思ったら、実は彼女はある嘘をついてるんじゃないかって疑惑の方向に話が流れていく。しかもその後の結末でさらに実はっていう……。物語の風景がどんどん変わっていってく感じがするんですよね。パニックサスペンスでありながら、ちょっと本格じみたところもあるし、そういう色んな要素を含めたミステリーとして僕は面白く読みました。

ミステリ―の枠を超えたエンターテインメント

太田 ありがとうございます。「胸熱」だったシーンとかありますか?

三島 目が見えないし、耳も聞こえない中川さんが行方不明になっていて、どうファーストコンタクトをとるのかって所かな。崩落で人が進入できないからドローン一台が中川さんの救助に向かう。でも目も耳も利かないから、ドローンが助けに来たのにすぐに気づくことができない。音も光も届かない中で、○○を使ってドローンに気付かせるシーンがすごく好きです。通常のやり取りができない人とのコミュニケーションの取り方を極限状況の中でどうやっていくのかってのは、少しSFのファーストコンタクトに近い物を感じましたね。(○○はネタバレのため伏字)

太田 ありがとうございます。通常の救助とは違うんだっていう現実をあそこで突きつけられますよね。

三島(ドローンに紐を繋いで中川さんを誘導する)盲導犬ならぬ、盲導ドローンだっていう場面もちょっと好きだな。メインテーマ的には障がい者をいかに救うかって話になるんだけど、ただ終わってみるとそれが覆されるからそこも面白かった。

武田 真偽さんは視聴覚障がいのボランティアにも参加したことがあるそうです。その中で「日本でもたくさんの人が障がいを抱えているけど、町中が危険だから当事者に自分たちが会うことは少ない。その現実はしっかり書かないといけない」って話をしていました。

太田 井上さんってすごい真面目な人なんだね。

武田 ボランティアついてはこの作品を書くからって参加したわけではなくて、単純に作家活動で社会との接点がなさすぎるから、何かやろうと思って参加したそうです。真面目ですね。

三島 太田さん、表紙のイメージはもうありますか? ちょっと見たい。

『アリアドネの声』の表紙

三島 ああ。良いですね。思っていた感じでした。もっとイラストチックになっちゃうと、軽く見られちゃうのかなって思ってたんです。深刻度というか、危機度の高さが伝わる表紙がいいなと思っていました。そのイメージに近かったです。

太田 ありがとうございます。それでは座談会はこの辺りにしたいと思います。皆さん、今日はありがとうございました。

本間 売るのが本当に楽しみになりました。私たちは私たちで頑張るんですけど、幻冬舎さんは幻冬舎さんで年末まで走り続けてもらいたいなと思います。

太田 もちろんです。ありがとうございます。宇田川さんどうですか。

宇田川 『アリアドネの声』の読みどころはミステリー的な驚きだけではないので、それよりも抜群に読ませるエンターテインメント小説としてアピールしてほしいですね。もちろんミステリー読者にも喜んでもらえたら嬉しいですけど。ジャンルにこだわらず小説や物語が好きだったり、いいお話が読みたいって人に広く届いてほしいなと思います。

太田 ありがとうございます。皆さんの声をいただいて励みになりました。

関連書籍

井上真偽『アリアドネの声』

救えるはずの事故で兄を亡くした青年・ハルオは、贖罪の気持ちから救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職する。業務の一環で訪れた、障がい者支援都市「WANOKUNI」で、巨大地震に遭遇。ほとんどの人間が避難する中、一人の女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。それは「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障がいを抱え、街のアイドル(象徴)して活動する中川博美だった――。 崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。およそ6時間後には安全地帯への経路も断たれてしまう。ハルオは一台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルターへ誘導するという前代未聞のミッションに挑む。

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アリアドネの声

二度読み必至の書下ろし長編ミステリ―。井上真偽さんの『アリアドネの声』最新情報をお届けします。

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井上真偽

神奈川県出身。東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理(プレディケット)』で第51回メフィスト賞を受賞してデビュー。2017年『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』が「2017本格ミステリ・ベスト10」の第1位となる。

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