オナ禁? いやだわ下ネタけがらわしい。あれでしょ、厨二的童貞男子がありえない願いを叶えるために1ヵ月とかオナニーを我慢するやつでしょ。ほんと不潔。ほんと無意味。まじイミフ。
ってうるせええええええ! 結論から言う! オナ禁は効く!! オナ禁は夢を叶えてくれんだよ!!
僕はここでオナ禁の精神的な部分への効果(集中できるとか)を語るつもりはありません。もっと物理的なところ、現実的なところで、オナ禁は効く。これはまじで間違いないんです。これからその事実を、みなさんにご説明していきたいと思います。
あれは僕が熊本の高校3年生の頃でした。
当時僕は、お付き合いしていたオガッチという同級生の女子から「あんま好きじゃない」という明快かつ致命的な理由で振られて、失意のどん底におりました。で、付き合って振られるのって、ほんとしんどいじゃないですか。そのしんどさから抜け出すためには、何か前向きに努力できることを見つけないといけないですよね。色々あると思います、部活に打ち込むとか、勉強頑張るとか、ファッションに目覚めるとか。
僕の場合、オナ禁でした。
ふざけてるつもりなんて一切なかった。まじで、ガチでした。藁をもつかむ思いで、オナ禁にすがりついたんです。今思うと頭狂ってるとしか思えないのですが、そんときはガチでした。ほんとそれ以外、考えられなかった。
オナ禁を一ヶ月やると決めたその日から、地獄が始まります。思春期の童貞少年にとってオナニーとは、息をすることと同義であり、生きる意味と言っても過言ではありません。オナニーを奪われた僕は、日中はすぐオナりたくなる弱い自分と向き合い、夜は夢精するかもしれないという恐怖に怯える毎日を過ごします。
そしてとうとうオナ禁開始から31日目、ちょうど一ヶ月たった日曜日の夕暮れ。
僕は、熊本の繁華街の道沿いに置いてあるテーブルに同級生男子の林と腰掛け、林に愚痴を聞いてもらっていました。好きな思いは未だ変わらないとか、でも学校ですれ違うと緊張して顔も見れないとか、そんなどうでもいい愚痴です。
で、「おがっち、なんかそろそろ新しい彼氏とかできそうな気がすんだよな……」そう僕がつぶやいた瞬間。僕のPHSが鳴ります。非通知設定。嫌な予感。悲しい内容の電話な気がする。林はふざけて「オガッチじゃね?」なんて言ってきます。「んなわけねーだろ」って電話に出たら、オガッチでした。
まじすか。
ていうかこれ間違いなく新しい彼氏できた報告的なやつだ。めちゃくちゃきついやつだ。僕は反射的にそう思いました。「……どうしたとね、何かあったと?」すんげえビビりながら尋ねる僕に、オガッチはこう答えました。
「別れて初めて気付いたんだけど……あたし柴田君のことがやっぱり好き」
あ、そうなの~そういうことってよくあるよね~ってまじすかおいいいいいいいいい!!! こんなことほんとにあんの漫画みてえじゃん、てかオナ禁まじ凄すぎでしょうがああああああ!!!
僕の激しいリアクションを見て、林も何が起こったのか理解したのでしょう。テンションガチ上がった林は、まだ電話中にも関わらず僕のPHSを奪おうとしてきます。それを「やめろ~(笑)」って避ける僕。しまいには二人、繁華街を駆け出し始めました。
で、公衆電話ボックスが見えたんですよ、走り出したその先に。その中で電話してるの、オガッチだったんです。
オナ禁もう、なんなんすか。どこまで夢を叶えてくださるんですか。まさかの奇跡に、オガッチもびっくり(可愛かったなあ)。ちょうど空は暗くなり始めてて、繁華街にはイルミネーションが輝き出してて。林はいつのまにかいなくなってたから、僕はオガッチと二人、きらきら輝く街を一緒に歩いて帰りました。
以上、脚色無し、ガチの実話です。オナ禁すごいでしょ。オナ禁まじやべーんだよ。皆さん、これから何か願い事があったら、とにかくオナ禁しましょう。オナ禁で幸せになりましょう。
ちなみにオガッチにはこの一ヶ月ぐらいした後に「やっぱあんま好きじゃない」という明快かつ致命的な理由で振られました。くすん。
忘れらんねえよ柴田の「世の中ばかばっか」
戦うバンド、恋するバンド、フラれてもつきまとうバンド、忘れらんねえよ。
今年の忘れらんねえよ主催ライブ「ツレ伝」シリーズは、大盛況でSOLD OUTが続出した。
数年前のライブで、わずかしか観客のいなかった忘れらんねえよが、なぜ、この熱狂を生んでいるのか?
音楽はもちろん、歌詞に猛烈な力がある。柴田の紡ぐ言葉の力は、ハンパじゃない!
「あの娘のメルアド予想する」「Happy birthday!とはいえ俺は誕生会に呼ばれていない」「俺を守りたい」「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」「 ブログを覗き見る」――これらは、忘れらんねえよのアルバムや楽曲のタイトルだ。
そんな柴田が、世の中に吼えるべく、このたびの連載スタートとなった。
で、何に向かって吠えるのかって? ……とにかく、読んでください。そのスケールの小ささに、呆れるか、爆笑するか、驚愕するか、共感するか……。