このエッセイをお読みの方はご存じかもしれないが、私は大のバッグ好きである。そんな私が皮革産業の本場、フィレンツェを訪れたら何をするか。決まっている。バッグ工房の見学である。
イタリア、フィレンツェのなかでも、アルノ川のほとりに位置するサンタクローチェ地区は、13世紀以来、大量の水を要するなめし工場が集中していた。何世紀にもわたって、革製品がつくられてきたが、第二次世界大戦後、戦災孤児に職業技能を身につけさせる目的で、地元の革職人が協力してScuola del Cuoio(直訳すると「革の学校」)という革製品専門の職人育成学校を設立した。サンタクローチェ修道院内の古い寮を使って始まったこの学校は、それから七十年以上、世界中から生徒を受け入れ、革職人を育てている。バッグ好き、革製品好きにとってはまさに夢のような場所だ。英語対応をしているので、事前にメールで見学を申し込んだ。
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帆立の詫び状
原稿をお待たせしている編集者各位に謝りながら、楽しい「原稿外」ライフをお届けしていこう!というのが本連載「帆立の詫び状」です。