彼女が出産したという投稿が偶然SNSで流れてきて、心の底から「ああ良かった」と、思った。
出産が確実に幸福に結びついているわけではない。それは分かってる。でもそれを報告する彼女の言葉や写真はぴかぴかしていて、少なくとも今現在、彼女が誰かや何かに愛されたり愛したりしているのだと信じることができた。
ああ良かった。
彼女は今も元気に暮らしている。それだけでとにかく良かった。なにか重いものを下ろせた気がした。そうして彼女の出産報告を眺めながら、わたしは思わず泣いてしまったのだ。彼女とは会ったこともないというのに。
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愛の病
恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。