『白い巨塔が真っ黒だった件』に、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんこと、内田剛さんからアツいレビューが届きました。内田さんは「何に震えた」のか!?
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人は生きているうちに一体何度、病院に行くのだろうか。そして一体何人の医者のお世話になるのか。超高齢化社会となった今、その頻度はますます高まっており、これまで以上に、人々の暮らしと医療は切っても切り離せない関係になっている。
いまや「衣食住」よりも生活に欠かせないのは、「衣食住」よりも医療だ。まさに「医食住」の時代ともいえるほど、誰にとっても医療問題は誰にとっても実に切実なテーマなのだ。
個人的な話で恐縮であるが、これを書いている僕はコロナ直前まで約30年間、書店店頭でおもに文芸書の担当として勤務していた。時代小説やミステリー、ケータイ小説にライトノベルなど、ジャンルに流行りや廃りはあれども、棚で根強い人気があるのが医療をテーマにした小説だ。テレビドラマや映画など映像化でベストセラーとなった作品もたくさんあるが、その中でもとりわけ現役医師による著作には根強いファンが目立っている。医療という身近なテーマだけに興味関心の深い読者が多いためであろう。
本書は、医療という並みいるライバル作品が多いジャンルの中でも、そのリアルさでは群を抜いている。
もちろん著者が現役大学病院教授であり、その実体験に基づいたく内容であるから間違いないのだが、それにしても、ここまで暴露してよいのだろうか。まさに小説の皮をかぶったノンフィクション。ほぼ実話であろう生々しい筆致に鳥肌が消えず、読んでいて背筋が凍りっぱなしだった。
タイトル通り「白い巨塔」が実は「真っ黒だった」というストーリーなのだが、その壮絶さは想像を遥かに凌駕する。白と黒が明確になるというより、グレーゾーンという闇があまりにも深いところがショッキングだ。
物語の導入部分から「すごいところにきてしまった。(P.12)」という本音が炸裂。病院は一体誰のためにあるのか。医学を志した者たちの崇高な理念はいったい何処へ消えてしまったのか。大切な命を預かる病院は身の毛もよだつ伏魔殿で、仁義なき教授戦は底の見えない蟻地獄のよう。
このままでいいはずはない。理不尽な組織と真向から闘いを挑みながら、たったひとつの真実を書き残さねばならないという、著者である大塚篤司先生の並々ならぬ決意と覚悟も伝わってくるのだ。
ただ貫かれている己の正義を綴っただけではない。本書で披露されたエピソードによって明らかになった知られざる病院の現実は、数多の理不尽な常識で成り立っていることが分かる。つまりは大いなる問題提起の一冊でもあるのだ。著者の強烈なメッセージが込められた雄弁なペンは、長い年月をかけて「白い巨塔」にこびりついてしまった澱を、根こそぎ剥がすメスにもなっている。
医療の世界に大きな一石を投じた本書はまた、真っ直ぐに未来を照らしていることにも気づくだろう。たくさんの読者に読まれるほど、この社会を浄化させるパワーを持っている一冊だ。
まずは興味本位のような「怖いもの見たさ」がきっかけでも構わない。とにかく最狂のホラー小説より恐ろしい読書体験で全身を震わせてもらいたい。
そう、知ることからすべてが始まるのだ。
―ー内田剛(ブックジャーナリスト)
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白い巨塔が真っ黒だった件
実績よりも派閥が重要? SNSをやる医師は嫌われる?
教授選に参戦して初めて知った、大学病院のカオスな裏側。
悪意の炎の中で確かに感じる、顔の見えない古参の教授陣の思惑。
最先端であるべき場所で繰り返される、時代遅れの計謀、嫉妬、脚の引っ張り合い……。
「医局というチームで大きな仕事がしたい。そして患者さんに希望を」――その一心で、教授になろうと決めた皮膚科医が、“白い巨塔”の悪意に翻弄されながらも、純粋な医療への情熱を捨てず、教授選に立ち向かう!
ーー現役大学病院教授が、医局の裏側を赤裸々に書いた、“ほぼほぼ実話!? ”の教授選奮闘物語。
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