当選確率1%以下といわれるアメリカ合衆国グリーンカード(永住権)のくじが奇跡的に当選! 職なし、コネなし、英語力なしで2020年からNYに移住した黒川祥志さんが、キラキラとはほど遠いNY生活を赤裸々につづってきた連載もいよいよいったん最終回。
最終回に向けて原稿を書いていた黒川さんですが、オーナーから急に部屋を「1週間以内に出ていけ」と言われてしまい…!?
* * *
はい、どうも~! 呪われたニューヨーカー黒川です。
今日もNYにひそむ呪霊の領域展開「七転八倒」のなかで、術式の押し合いに負けて転げ回っております(呪術廻戦ネタ)。ボブ・ディランぐらいライク・ア・ローリングストーンをしています。
というわけで今回は、いち段落をつけるための「最終回(仮)」です。
最終回にしようと思った理由
なぜ、このタイミングでいち段落をつけるかというと、書くことがないからだ。ネタ切れだ。
正直な話、自宅と会社の往復だけを続ける毎日を過ごし、友達も彼女もいない、低賃金だから遊ぶ金もないため休日は部屋でダラけるおっさんに、人さまに読んでいただくような出来事など起こるはずないわけで。
しかも、たいした文章力もないのだから、こんな有名な出版社のサイトに寄稿しつづけるなど、できるはずがない。
まぁ、わかりやすい理由を先に書いたが、ネタ切れが最大の理由ではない。仕事が忙しい、というのもあるが、そんなのは経験上、がんばればなんとかなる。
最大の理由は、自分のネガティブな感情に疲れたからだ。
ビジネスネガティブをしているわけではなし、本当にいろいろと大変だが、嫌なことやキツかったことを思い出して、ここに書いていると、好きで移住したはずなのに、アメリカやNYのことが本当に嫌いになってきた。
まぁ、ハワイは最初からキライやからエエんやけど。
しかも、ネガティブな感情はここに書いたことが全てではない。
書けないほどイヤな感情とか、怒りとかが湧き上がってくると、書いている途中で日本に帰りたくなるし、アメリカ(NY)にいる意味が分からなくなり、感情の整理ができなくなる。
笑いに昇華できれば問題ないのだが、昇華できないようなことも起こってきた。
NY在住の仲のいい日本人にああだこうだと感想を言われるのはいいのだが、たいした関係値もないNY在住のバカにいろいろ言われると、さすがにイラっとする。
そんなのに「お前の楽しかった体験の話は読んでて面白くない」みたいなことを言われると……。
これ以上進むと汚い言葉が出そうなので、やめておく。
あと、これは映像を作っていてもときどき思うのだが、作ったものに対してリアクションを見られないというのは結構キツい。
リアクションがわからないと、続けていくうちに、自分の中でのアクセルとブレーキのバランスが取りづらくなる。
実際、編集のMさんにはこういうポイントで苦労をかけている。
「女性読者もいるから、こういう表現は避けて」とか「もう少し解説してください」「このネタはいらないんじゃない」というような添削が入るたびに、自分のポイントと世間のポイントの違いに悩まされてきた。
という感じで、自分の無能さを誤魔化しながら言い訳してきたが、こういうことを書いている裏でも、いろいろと大変でイヤな出来事は起こる。
ここから先はネガティブなNYの愚痴に飛び込むので、キラキラとしたポジティブなNYを見たい方は、オシャレなインスタグラマーのアカウントに移動してほしい。
治安の悪い地域でパンチの利いたルームメイトと暮らすことに
治安をテーマにした回で、「Bed-Stuyという地域の治安が悪い」と書いたが、実は僕は今(2023年9月)、いろいろあってBed-Stuyのド真ん中に引っ越した。しかも、ちゃんと治安が悪いエリアだ。
家から駅まで徒歩15分強かかるのだが、朝の出勤時に駅に向かって歩いていると、路上で座り込んでタバコではない植物を吸っているオッサンに「F**Kin’ Ni**er」と大声で怒鳴られた。
イヤイヤ、こっちは何もしてないし。ただ前を横切っただけやのに。
100歩譲って、Fワードはエエわ。その日のオッサンの機嫌が悪かったんや、仕方ない。
ただ、なんでNや。別に人種でどうこう言うつもりはないが、どうみてもコッチはゴリゴリのアジア人やで。その悪口は腑に落ちんて。
ちなみに、Bed-Stuyは黒人の方が多いため、Nワードを街中で頻繁に耳にするが、彼らが使うのは問題ない。ただ、僕のようなアジア人がBed-StuyでNワードを使うと、ちゃんと命を落とす。
住んでいる地域の治安が悪いだけではない。
新しい家はそれなりに綺麗で、部屋もそこそこ広いが、ルームメイトがなかなかパンチが利いている。
前に住んでいた家にはルームメイトが2人いて(アメリカ人男性とメキシコ人女性)、どちらも食器を洗わずシンクに置きっぱなしにするタイプの方々だった。
しかも、何度言っても忘れるのか、トイレの大も流さずに置きっぱなしにするハードコアだったので、新しいルームメイトはどんなのがきても平気だろうとは思っていた。
だが、ここはBed-Stuy。ルームメイトは現在3人(メキシコ人男性2人とアメリカ人女性1人)いるのだが、その中の1人(アメリカ人女性)の格が、想像の右斜め上を行くレベルでハードコアだった。
引っ越して数日経った平日の朝、騒ぎ声がリビングから鳴り響き、目が覚めた。
ダルいなー、と思いながらタバコを手に取り、リビングの向こうにあるバルコニーでヤニを入れようと部屋のドアを開けた瞬間、見たことのない光景が広がっていた。
リビングでルームメイトの女性と友人らしきLGBTのGとTの方々4-5人がパーティをしているのだ。平日の朝なのに。
夢の続きにしては濃すぎて、頭がクラクラした。
なんとか正気を保ちながらヤニを入れようと、リビングを越えてバルコニーに出ると、GとTを足して2で割ったような方々が3人、タバコではない植物を吸いながら、気だるそうに「Hi, How are you?」と声をかけてきた。
通常なら「Good」と返答できるが、目覚めのこの状況、数秒かけてタバコに火をつけ、なんとか「Sleepy(眠い)」と返すのがやっとだった。
おそるべしBed-Stuy、な朝だ。
なぜこんな場所に住むようになったかというと、前の家を追い出されたのだ。
8月頭にルームメイトの1人(女性)が家賃滞納で追い出され、もう1人(男性)が月末に引っ越すことになり、その家は9月から僕1人になる予定だった。
だが、8月下旬にオーナーが急に「9月からファミリー向け用にリフォームしたいから、お前も1週間以内に出ていけ」と言い出したのだ。
これは違法行為で、アメリカでは警察以外が家から住人を急に追い出すことはできないし、出したい場合は最低でも1ヶ月の猶予が必要だ。
だから違法にならないよう、オーナーは別の家を紹介すると言って、僕を新居候補に連れて行ったのだが、恐ろしいくらい汚かった。
さすがにそこには住めないと思い、「9月末に引っ越すから新しい家を探す時間が欲しい」と伝えると、オーナーは「他の奴の家賃(3部屋分)を払うなら9月もいてもいいけど、金がないなら選択肢あると思うな」と言い出した。
だから家を出た。
正直言うと粘ることはできただろうが、この状況で粘ることが正しいとは思えなかった。
前の家は部屋に喫煙所があり、駅からも徒歩2分と、いい点もあったが、ボロボロでゴキブリとか見たことない虫が四季を問わず湧いていたので、住み続けるのもキツかった。
粘っても現状のキツい状況が続くだけで、プラスになることなどないのだ(ちなみに紹介された家は同じレベルで汚かった)。
しかも、僕はこのオーナーのような分別のないバカが嫌いで、関係を続けることに何の価値も見出せない。
だったら、バカとは関係を切った方が精神的に楽だと判断し、数日で新居を見つけ引っ越した。
とまぁ、いろいろありましたし、今もいろいろと大変ですが、とりあえずはこの回を持って一旦ネガティブな感情は忘れて、アメリカ(NY)での生活を見つめ直すべき時が来たのだろうと思ったので、ここで一度閉めさせていただきます。
次回は、ドロドロしたポジティブかキラキラしたネガティブか、ネタが溜まったらまたいつかお邪魔させていただきます。
グリーンカード当選男のNY移民ぐらし
当選確率1%以下といわれるアメリカ合衆国のグリーンカード(永住権)のくじを引き当て、NYに移住した41歳の著者。しかし英語もできないまま移民となった著者を待ち受けていたのは、キラキラとは無縁の泥臭いNY生活だった。グリーンカードにはどうやって応募するのか? 当たったあとはどんな手続きが待っているのか? アメリカに渡ってからの生活はどんな感じか? グリーンカード当選者が不器用に生きるリアルな日常を、赤裸々につづります。
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