長期投資のプロである澤上龍さん(さわかみ投信株式会社・代表取締役社長)の新刊『理想の投資と結婚する方法』が発売。発売を記念して、澤上さんのインタビューを公開します。知識ゼロの方でも「投資の本質」が丸わかりです!
節約だけでは一千万円。投資すれば三千~四千万円
──前半で生活感で選ぶことが「理想の投資と結婚する」ベストな方法と学びました。ではそんな企業に投資すると、どれくらいリターンが期待できるものなんですか?
澤上 22歳、入社と同時に月収の5%を貯金したとしたら、60歳の定年までに一体どれくらい貯まるものなのか? 実は以前、試算したことがあるんです。 国税庁『2021(令和3)年民間給与実態統計調査結果』によると、日本人の給与所得の平均は443万円ほど。それを前提に毎月の給料の5%をずーっと貯金したとしたら……。どれくらい貯まると思います? 意外や意外、たった一千万円ほどしか貯まらないんです。月収の5%の貯金を、40年近く続けてですよ! 4年ほど前の2019(令和元)年、金融庁が「老後をつつがなく暮らすには二千万円必要」と発表したのを受けての試算でしたが、だいたいこんな数字になりました。老後に必要な二千万円には、とても足りない数字ですよね。
ではこの一千万円を年利5%の複利で投資したとしたら、一体どうなるか──?私が計算したところでは、60歳で三千万円、65歳で四千万円ぐらいになりました。「老後の生活費二千万円問題」は、投資することで無事解決することが出来るんです。
それほど違いが出るというのに、なぜみんな預金ばかりだったかと言えば、ちょっと前まで銀行に預けておけばおよそ10年で倍になったから。一千万円を10年間銀行に預けておけば、二千万円にすることが出来たんです。だから銀行に預けておくのも、意味がないわけじゃなかった。ところが現在では、定期預金の金利はわずか0.002%ほど。百万円を銀行に預けても、利息はわずか20円です。みんなの目が投資に向かうのも、無理はない話でしょう。
──でも投資ですから儲かることもあれば損をするおそれもある。投資信託にしたって、年利5%を割り込むこともありますよね?
澤上 はい、その通りです。弊社さわかみ投信の『つみたて投資』は1999年の開始以来年率6.1%の実績がありますが、相場が悪くなれば、3~4%になることもあり得ます。
ですが前半でも言ったように、相場とは上がる時もあれば下がる時もあるのが本質。瞬間風速ということで切り取れば「アレレ?」って時もありますけど、長い目で見て年利の平均が5%もあればいいんです。これだけあれば三千万円から四千万円は資産形成できますから、老後はつつがなく暮らせます。
むしろ一般投資家にとって最も重要なのは、その瞬間にどれくらいのリターンがあるかじゃなく、辞め時だと思いますね。つまりは「その資金が必要になるのはいつなのか?」です。それまではリターンの上がり下がりに一喜一憂することなく、むしろ投資していることなんて忘れているぐらいでちょうどいい。
ただし1点だけ注意することは大切で、それは間違ったものに投資しないことです。間違ったものを買うと長い時間、それこそ20~30年といった時間をドブに捨てることになるのでこれはマズイ。けれど間違っていないならば、一時の上がったり下がったりなんて、実はどうだっていい。今言った通り、資産形成とは、長い目で行うものであるからです。
経済紙は「読み手の心理を考えながら読め」
──投資にも興味があるし、経済も知りたいと、就職してから経済紙を読むように心がけています。でも、どうも生かし切れていない気がしてなりません。
澤上 これは私の場合ですが、経済紙は記事を読んだ読者がどう考え、どう行動するかを考えながら読むようにしています。
「この見出しだと多くの読者が悲観的になるな」「だとしたらこういう心理状態になるだろうから、そろそろこんな行動に出るな」とかですね。つまりファクトはただのきっかけにすぎないと考えて、個人の行動と、その行動が世の中にどう影響するかを見に行くようにしているんです。
本書でも書きましたが、弊社ではお客様にお出しするお茶は伊藤園の製品です。もしもそんな伊藤園でスキャンダルが発覚したとしたら、まずは報道が真実か否かを確認しに行きますが、そのスキャンダルの本質を考えることのほうがもっと重要だと思います。
ちょっとした間違えがあったのか? それともスキャンダルの原因が同社の本質そのものになっているのか? 前半で投資を結婚にたとえましたが、その例で言うとしたら、「これはちょっとした出来心なのか?」「それとも浮気がクセになっているのか?」ですね。
もしもクセになっているのなら、これはもう離婚すべきでしょう。持ち株は売るべきだと考えます。だけど一時の過ちに過ぎなかったとしたら、むしろ買うでしょうね。株を安値で手に入れる絶好のチャンスだからです。
つまりは本質を見きわめてから動きを決めるので、ニュースの見出しだけで「これは大変!」とはならない。報道はある時点での真実しか伝えていないことが多々ありますから、どう解釈するかのほうを、ずっと大切に考えていますね。
新NISA、やるなら無理のない金額を気長にコツコツと
──数ヶ月後の2024年には新NISAが始まります。これをきっかけに投資を考えている読者も多いと思います。そうした読者にアドバイスをお願いします。
澤上 新NISAのもっとも大きな特徴を上げるとすれば恒久化、つまりは限度額内での非課税期間の無期限化でしょう。
これについては、政府の中でも財務省主税局と金融庁との間で相当もめたと聞いています。それでも無期限化を押し通したのは、国が国民の財産形成にとうとう本気になって、大きく一歩前に出たなという感じがします。
でもこれを先ほどの経済紙の読み方でお伝えしたようなうがった見方をするとしたら、政府がのどから手が出るほど株式の買手を欲しがっているんだろうと見ることが出来ます。
世界経済から日本経済まで、今、どこもみんな厳しいですよね。特に日本の株式相場は日銀が放り込んだお金で支えられているのが実情です。政府は手元に溜まりに溜まった株式の、買手を必要としているんです。
その国民を動かすためには大義名分じゃなく、儲けというニンジンが必要になる。
うがった見方をすれば、そのニンジンが新NISAという気もしますね。
ただし恒久化、非課税期間の無期限化というのは、これはもう特筆すべき大前進だと思います。
これまでもNISAはあった。一般NISAと積立てNISAです。でもこれ、非課税が5年と20年。もしも20代の若者が積立てNISAを始めたら、40代で売らなくちゃならない。老後を意識し始めるのなんて、40代以降だと言うのに。
それが無期限になったことで、人生の中の使いたい時に使えるようになったわけで、初めて個にマッチしたというか、個でカスタマイズできる制度になりました。
そうした意味では、とてつもない良い制度になったという気はします。
だから新型NISAは使い方次第だと思います。自分の生活リズム、先ほどの例でいうなら月収の5%の収入でやろうというなら、相場なんて関係ない。だけれど、新NISAで1800万円の枠がある。これを活用しようとなった瞬間、ドンと入れる人が増えます。ドンと入れて損したら、これはもう、つらいですよ。
新NISAがあろうがなかろうが、投資とは気長にコツコツとやるべきものです。
そしてそこに非課税期間が無期限の新NISAがあるのなら、使わない手はありません。ですから新NISAがあるから投資しようというのはきっかけであって、新NISAが本丸ではないということは、重々心得ておくべきだと思います。
まあ詳しくは、本書で確認してみてください。
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理想の投資と結婚する方法
長期投資のプロである澤上龍さん(さわかみ投信株式会社・代表取締役社長)が、知識ゼロの方でも投資のことがよくわかる本『理想の投資と結婚する方法』を発売しました。
発売を記念して、澤上さんのインタビューを公開します。どこに投資すればいいの? 投資ってギャンブルでしょ? いつが売りどき? タイトルに込められた意味は?など、このインタビューを読めば、本書が100倍おもしろくなります。