生き方
先日、九州を旅行したときのことだ。長崎市郊外のコンビニで、本書の著者である繁延さんと待ち合わせをした。一年半ぶりの再会を喜ぶまもなく、ふたたび車に乗り込み、彼女についていく。車は国道を外れて坂道を登り、狭い農道を進んでいった。突き当たった柵の向こうには、山と小川に挟まれたなだらかで明るい土地が広がり、細長い小屋が何棟か並んで建っていた。聞いてはいたが、本当だったのだ。彼女のご主人が昨年はじめた、養鶏場の鶏舎だ。明るい茶色のふくふくとしたニワトリたちが、コッココッコと小さく鳴きながら、歩きまわったり啄んだりしている。周囲の風景とあいまって、長閑で微笑ましい光景だった。けれど、「養鶏」に行き着くまでの道のりは、繁延家にとってはけっして微笑ましいことばかりでなかった。
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