AIに小説や俳句は作れる?――AI時代にアイデアを生み出す最強の手法を解説する幻冬舎新書『「超」創造法 生成系AIで知的活動はどう変わる?』より、内容を抜粋してお届けします。
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AIが 作る俳句は 駄作だけ
ChatGPTが俳句を作れるかどうかを実験してみました。「俳句を作ってもらいたいのですが、どのようなプロンプトを書いたらよいですか?」とChatGPTに尋ねたところ、つぎの事項を指定せよとの回答でした。
- (1) 季語(テーマや季節感を表すもの)
- (2) 表現やイメージについての要望。
そこで、季語を「クレマチス」とし、庭でクレマチスの花が咲き始めている状況を説明する、いささか長めの文章を書いて、〈新しい俳句を作ってほしい〉と指示したところ、直ちにいくつかの俳句が得られました。しかし、どれもひどい出来です。
「GPT、俳句は詠めてもひどい出来」
「クレマチス」というカタカナは俳句には向かないのかと思い、〈クレマチスと春という言葉が入っている俳句で、これまでに作られたものを10点教えてください〉と指示したところ、直ちに示してくれました。
これを見る限り、この言葉が俳句向きでないとは言えないようです(なお、これらが、現実の人間によって作られたものかどうかを尋ねたのですが、曖昧な答えでした)。
要するに、人間を感動させるほどの俳句を作る能力は、ChatGPTにはないことが分かりました。俳人の方々は、どうかご安心ください。
前節で述べたように、小説や映画の筋書きを書いてほしいという要望に対して、ChatGPTはまことにお粗末な答えしか出してくれません。それと同じことです。
ChatGPTが作った俳句や、小説・映画の筋書きはなぜだめなのか? そう問い詰められても、「こういうのではダメなんだよ」と言うしかなく、うまく説明できません。
第6章の2で、「人間の創造的活動は『審美的洞察力』に導かれて行なわれる」というポアンカレの言葉を紹介します。この言葉を用いれば、「人間は審美眼を持っているが、ChatGPTは持っていない」ということです。
ChatGPTの創造能力を判定するには、俳句の出来栄えを見るのが一番簡単だと思います。判定する側から言えば、長い文章を読まなくとも、わずか17字で判別できるからです。作る側から言えば、わずか17字で、これまでにない新しい作品を生み出そうというのですから、大変なことです。
しかも、いまの場合は、「クレマチスという言葉を使え」と制約しているので、残りは12字しかありません。12個の文字の組み合わせで、これまでになかった世界を作り出そうというのは、極限の創造活動と言えるでしょう(ただし、そうであっても、可能な組み合わせの数は膨大です。これについては、第6章の2で、具体的な数字を示します)。
ChatGPTの能力がいまのレベルである限り、創造的な仕事に従事している人は、あまり心配しなくてよいでしょう。むしろ、人間が持っている創造力の価値が上がると考えてよいでしょう。
ChatGPTが俳句を作るプロセス
以上の実験で、興味深いことが分かりました。
それは、ChatGPTが俳句を作るプロセスです。「クレマチス」という言葉を含んだ俳句を参照し、それらの俳句で使われている表現を、真似ているようなのです。
なぜそう考えられるかというと、前項で述べた10点の既存俳句例の中で使われている表現が、ChatGPTの作った俳句に、そのまま現れるからです。
人間も、これまでに作られた俳句に影響を受けているでしょう。しかし、それらは、いったん記憶の中に取り入れられ、無意識のレベルにまで沈んだあとに、いま作ろうとしている俳句に、無意識のうちに影響を与えるのではないかと思います。
それに対してChatGPTの場合には、過去に作られた俳句の利用が、もっと直接的・機械的に行なわれているように思えます。
俳句以外のことに関しても、ChatGPTは同じようなプロセスで出力をしているのでしょう。俳句の場合にはわずか17字しかないので、これがはっきり分かってしまうのだと思います。
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この続きは幻冬舎新書『「超」創造法 生成AIで知的活動はどう変わる?』でお楽しみください。