ChatGPTは教育のあり方を変えるかもしれません。AI時代にアイデアを生み出す最強の手法を解説する幻冬舎新書『「超」創造法 生成系AIで知的活動はどう変わる?』より、内容を抜粋してお届けします。
* * *
圧倒的多数が「人間の家庭教師よりChatGPT」
アメリカの教育関係のサイトIntelligent.comが2023年6月8日に公表した調査:New Survey Finds Students Are Replacing Human Tutors With ChatGPTの結果は衝撃的です(801人のアメリカ人に対して、オンラインで5月に行なわれた調査の結果)。
それによると、「人間の家庭教師よりChatGPTが優れている」とする高校生、大学生が回答者の85%、学齢期の子を持つ両親の96%を占めています。
すでに、完全にChatGPTに切り替えてしまった高校生、大学生が、回答者の39%、両親は30%います。切り替えによって、成績が上がったとの回答が95%。
切り替えた科目は数学が最も高く、ハードサイエンス(化学や生物)、外国語が続きます。
無料だし、いつでも利用できるというのは、確かに圧倒的な競争力と言えるでしょう。
理想の教育は「個別指導」
「勉強といえば学校で行なうもの」というのが、多くの人の考えです。しかし、昔からそうだったわけではありません。
ヨーロッパの伝統的な社会において、貴族社会での教育は学校ではなく、チューター(1対1で教える先生)によって個別に行なわれていました。
チューター制度は、オックスフォード大学やケンブリッジ大学などのイギリスの大学でも継続されています。学生は分からないことをチューターに相談します。チューター制度は、アメリカの大学院ではTA(Teaching Assistant:教員助手)として広く展開されています。
理解度は個人によって違うのですから、個別の指導が望ましいことは間違いありません。ただ、チューター制度の問題点は、コストがかかることです。
学校を置き換えるのではなく、家庭教師を置き換える
学校は、単に知識を学ぶ場としてだけでなく、集団生活を経験し、友人を作るのにきわめて重要な役割を果たしています。ですから、現代社会から学校がまったくなくなってしまうようなことは考えられません。
しかし、知識習得のかなりの部分がChatGPTによるチューターで置き換えられる事態は、十分あり得ることです。
ChatGPTは教育課程そのものを置き換えるのではなく、学校教育のよさはそのままにして、これまでチューターが担っていた役割をChatGPTに置き換えるという変革が生じるのではないでしょうか。
あるいは、これまでチューターが利用できなかった人に対して、ChatGPTがチューターの役割を果たすのです。社会人の場合には、こうしたケースが多いでしょう。
貧しい家庭の子供たちが勉強できる効果はきわめて大きい
ChatGPTによる学習の最も大きな特徴は、柔軟性です。いつでも学習を行なうことができます。朝早くでも、真夜中でも構いません。また、学習内容を自由に変えることも可能です。
そして、理解できなければ、質問のやり方を変えて、理解できるまで説明してもらうことが可能です。数学や統計学などでは、このような学習が可能であることは大きな利点です。
貧困のために進学できない子供たちは、発展途上国には、まだたくさんいます。それらの子供たちが独学することによって学ぶ可能性が広がることは、非常に重要な意味を持つでしょう。
先進国でも、丁寧な教育サービスを受けられない子供たちがたくさんいます。これまでは豊かな家庭の子供たちしか利用できなかった個別指導が、貧しい家庭の子供たちでも無料で利用できるのは、大変重要な変化です。こうしたサービスが利用できるようになって、貧富の差が縮小することが期待されます。
なお、ChatGPTをチューターとして用いるのは、必ずしも学齢期の学生に限ったことではありません。ChatGPTは、社会人の勉強でも、家庭教師役を務めてくれます。
* * *
この続きは幻冬舎新書『「超」創造法 生成AIで知的活動はどう変わる?』でお楽しみください。