プログラマーの清水亮さんとアニメプロデューサー・石井朋彦さんによる対談講座「生成AIと人間の才能の可能性~感動の境界線はどこにある?~」が11月19日(日)に開催されます。当日を迎える前に、清水さんの著書『教養としての生成AI』より「はじめに」をご紹介。石井さんとのトークは、「生成AIの本質」をさらに掘り下げることになるでしょう。どうぞお見逃しなく。
本書の執筆にはGPT-4をフル活用
21世紀、人類はテクノロジーとともに飛躍的な進歩を遂げてきました。そして、その中心に位置するのが、人工知能(AI)です。特に生成系AIは、私たちの創造力と知性を拡張し、あらゆる産業や生活の面で革新的な変化をもたらしています。
本書『教養としての生成AI』は、生成系AIの基本原理から具体的な応用例、倫理的・法的課題、そして未来の展望までを網羅し、この興味深い分野についての理解を深めることを目的としています。
本書は、私たちの創造力を拡張し、未来を切り開く力となる生成系AIに関する知識を広めることを目的としています。技術の進歩とともに、私たちの生活は大きく変化し続けています。しかし、その変化に適応し、より良い未来を築くためには、生成系AIの可能性を理解し、適切に活用することが重要です。
本書が、読者の皆様に生成系AIの魅力や可能性をお伝えできるとともに、AI技術の適切な活用に役立つ情報や知識を提供できることを願っています。人工知能と創造力が融合した未来の世界を、共に探求しましょう。
GPT-4・著
ここまで読んで、これが完全にAIによる文章だと判別できた読者はどのくらいいるでしょうか?
2023年3月、GPT-4が公開されました。
GPTは、OpenAIという研究所が開発している人工知能で、まるで人間のように言葉を紡ぐことができることから、2022年末から世界中を巻き込んで大きな話題になっています。OpenAIのサム・アルトマンCEOは2023年4月に来日した際、岸田文雄首相とも面会したことでニュースにもなりました。それほどこの分野が注目を集めているということでもあります。
こうしている間にも、毎日のように新しい技術、新しい発見、新しい実験が繰り返されていて、きっと本書が書店に並ぶ頃にはもっとすごい何かが発明されていることでしょう。
これほど動きの速い分野は、ほかにちょっと考えられません。
なぜこれほどまでにAI分野の進歩が速いのかといえば、いくつかの複合的な理由があります。
まず、そもそも人工知能という分野の研究がかなり長い間続けられてきたこと。人工知能の研究の歴史は、コンピュータの研究の歴史と言っても過言ではないくらいに古いのです。最初に人工知能についての議論が交わされたのは実に70年近く前、1956年のダートマス会議まで遡ります。
次に、2000年代からゲーム機が発展し、2010年代にはスマートフォン、特にiPhoneとAndroidが普及したこと。一見すると無関係に思えるのですが、実はGPU(グラフィックス処理ユニット)という、もともとは非常に高価だった部品が低価格化し、同時に高機能化していることが大きく貢献しています。
最後に、インターネットの普及。インターネット自体の歴史は古いのですが、一般の人に浸透してきたのは1990年代末期から2010年代までの間です。特にスマートフォンが発明されるまでは、インターネットにアクセスするのはかなり限られた人々でした。
実は人工知能の研究はかなり昔から行われてきたにもかかわらず、なかなか成果が出せなくて悩ましい時代が長かったのです。
その理由は大きく2つありました。一つは、コンピュータの能力が非力すぎたこと。もう一つは、人工知能に学習させるべきデータが少なすぎたことです。
インターネットの普及により、データは爆発的に増えました。
Twitterに誰かがつぶやくたび、Instagramに誰かが写真や動画を上げるたび、データは増えていきます。人々の日常が何気なくインターネットにアップロードされるようになったのは、実は非常に重要なことだったのです。
高性能なゲーム機の開発競争は、1994年にソニーのプレイステーションが発売されたときから始まりました。プレイステーションはそれまでのゲーム機とは異なり、リアルな三次元コンピュータグラフィックスを表示するため、GPUを使うことにしました。
このGPUの開発競争が、そのままゲーム機同士の開発競争につながりました。
いくつかのGPUメーカーが互いに切磋琢磨し、GPUはどんどん高機能になっていき、同時に家庭用ゲーム機に載せるためにどんどん低価格になっていきました。
気がつくと、GPUはひと昔前のスーパーコンピュータと同じような構造に進化していました。あるとき、高性能化したGPUをグラフィックス処理以外の目的にも使えるのではないかというアイデアが生まれます。それを人工知能に適応してみると、これまで全く歯が立たなかった問題が次々と解決していったのです。
こうなると、長年の研究の蓄積がものを言ってきます。これまで理論だけはあってもコンピュータが非力で実現できなかったようなことが次々と実験され、改良され、大規模化され、そこから小規模でも同じことができるようにたびたび改善されるというループが、ものすごい速さで繰り返されました。それが現在の、まるで情報の洪水のようにAIが毎日ニュースになる日々に至っている理由です。
本書では、最近特に注目を集めている「生成系AI」について、できるだけ速くて正確な情報を、できるだけ面白く、わかりやすく伝えることを目的としています。
本書の執筆には、最新の生成系AIであるGPT-4をフル活用しています。
GPT-4だけを使って文章を書くと、一見正確そうですが、よく読むと間違っていたり矛盾していたりすることも少なくありません。本書では、そうしたGPTの欠点を人間の著者が補いました。
なおかつ、GPT-4は2021年9月までの情報しか学んでいないため、最新の情報については何も知りません。最新の情報は人間の方が詳しいというのは皮肉な話ですが、これもそう遠くない未来、ひょっとしたら本書が発売される頃には改善されている可能性も大いにあります。
まずは、あまりにも流れの速いここ最近の生成系AIのニュースに惑わされることなく、このブームがいかにして起きたのか、その背景を整理していきたいと思います。
清水亮×石井朋彦「生成AIと人間の才能の可能性~感動の境界線はどこにある?~」
日時:11月19日(日)14:00~15:30
場所:幻冬舎本社/オンライン
人間が一から作った文章や映像、画像が訴えてくる感動の源を生成AIの現在と比較しながら、「表現するヒト」の存在価値を、「才能」や技術や芸の「継承」という側面とともに考える機会にしたいと思います。詳しくは、幻冬舎大学のページをご覧ください。