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築60年の団地でDIYをしながら心地良く暮らす

2023.12.23 公開 ポスト

はじめてのDIYで無垢の杉材を部屋中に敷くことになったフジイサミ(アクセサリー作家)

アクセサリー作家のフジイサミさんが、狭小物件からいまの家に引っ越したのは約5年前。「部屋のイメージを変えるのは床」ということに気付き、初めてのDIYで部屋中の床に杉材を敷き詰めることになりました。

部屋に杉の板が敷き詰められていて、ニーチェアが置かれている。

 

自然豊かな場所に引っ越す

今から5年前、都心から電車で30分程度のベッドタウン、自然に囲まれた丘の上に立つ団地へ引っ越した。周りには林や森があり、朝から昼にかけて野鳥の鳴き声が響き渡り、時々たぬきを見かける。まさに高畑勲監督のアニメーションの平成狸合戦ポンポコのロケ地のような場所だ。

その物件は築50年ほどで広さは55平米、元々は3LDKだった間取りから壁を一つ取り除いて2LDKに改築されていた。前に住んでいた賃貸は1K17平米だったので、ここに引っ越して大幅に居住空間が広がった。ところで、人間不思議なもので、一度大きな物件に住んでしまうと、すぐに順応して荷物が増えて手狭になってしまう。これは常に悩みどころだ。

この物件は50年間で何度かリフォームされていて、水回りは10年以上経っていそうだが床やクロスは最近変えたばかりなのか綺麗で、チグハグだった。しかし間取りがよく、周りの環境も自然豊かで気に入ったので、この物件を自分で好きな空間に自分自身でリノベして住むと決断した(第一回参照)。

部屋の印象は床で決まる

当時は、ものづくりで生計を立てたいという夢を追いかけながら、始めたばかりの事業であるアクセサリー作り、高層ビルのガラス清掃、ピザの配達のトリプルワークで多忙の日々だったが、その合間に少しずつDIYで手を加えていった。

初めに取り掛かったのは床だった。この賃貸はすでに住める状態ではあるけれど、木目調のシートを貼り合わせた床だったので好みではなく、1番どうにか変えたい部分でもあり、ここを変えてしまえば、かなり雰囲気が良くなると思った。床はなんせ面積が広くよく目に入る。引越しの際にネットサーフィンをしてたくさんの部屋の画像を検索し、好みの部屋を調べたのだが、共通して床の質感がとてもいいのがわかったからだ。床はインテリアの礎とも言える。いきなりかなり気合いのいるDIYから始まるのだった。

DIYの要は「やればなんとかなる」

リノベ覚悟で引っ越したのだが、実は木材を使ったDIYの経験はない。過去に木材を扱ったのは中学校の時に角材を切って何か作るという授業以来だ。

行き当たりばったりな生き方をしてきたのもあって、「やればなんとかなる精神」が炸裂し、気付けば床材をネットで購入していた。

床材は、クッションフロア、敷くだけシートタイプなど気軽かつ簡単に床を変えられるアイテムもあるが、「床の質感」にこだわりたかったので、無垢の杉フローリングを選択した。これはとにかく質感が良いのだがデメリットも多くある。複合フローリングという合板状のものと比べて湿度変化による伸び縮みが激しく、杉は柔らかいため傷つきやすい。逆にある程度の調湿効果と、柔らかさによる加工のしやすさがあるともいえる。まさに一長一短である。

床の面積をざっくりと測定して、ネットショップのホームページに書かれていた一畳あたり何枚必要かの情報を頼りに少し多めに注文。そして、大分から3箱に分かれて届いた。一箱あたり50kgで3箱でなんと150kg。届いた瞬間にとんでもないものを買ってしまったと感じた。ネット通販でこれだけの重量のものを買う機会は人生で滅多にない体験だ。

木材が入った段ボール箱が3つ

ちなみに冷蔵庫もそこそこ重いだろうとふと思って、ドアの内側にあるラベルをみたら430リッターのサイズで90kgだった。やはり床はとんでもなく重かった。杉は木材の中でもかなり軽い方なので、違う品種だったらさらに重かっただろう。

ノコギリと格闘し、2週間で完成

フローリングの敷き方は本来ならば一枚ずつ釘や接着剤などで固定しながら施工するのだが、賃貸なので現状復帰のことを考え、敷くだけの方法にすることにした。

端から一枚ずつ敷いていき、長さが余った部分をカットして、その余りを隣の列の最初に敷く。そうすることでランダムな並びになるが、そのほうが好みだ。しかも板のロスが少なく、最後まで敷くことができる。

大量の木材カットと精度が必要なので電動ノコギリがあるといいのだが、金なし、ビビリのDIY初心者なのでアナログな手ノコで全てカットすると決断。

ノコギリが木材に充てられている

さすがに手ノコでは精度が足りないので、ノコギリのガイドを利用した。直角、45度など好きな角度に合わせて真っ直ぐにカットできる優れもの。これのおかげで思いの外、順調に作業が進んだ。

おそらくちゃんと休みがあれば3日ほどで完成するのだろうが、トリプルワークで仕事の休みがなく、夕方に毎日2時間くらいコツコツと進めてなんとか2週間で敷き終わった。

床に木材が敷き詰められている

実は完成直後、気が抜けたのか、手ノコで作業したことの代償が襲いかかってきた。ガラス清掃の仕事で水の入ったバケツを4つ同時に持ったりと過酷な労働が重なったせいもあるかもしれないが、朝起きたら腰痛で立ち上がれなくなり、なんと1週間も寝込んでしまったのだ。

もしDIYでフローリングを敷こうと思っている方がいたら機械に頼ることも大事だとお伝えしておきます。

腰痛を代償に完成したフローリングの床だったが、おかげで理想の部屋づくりの第一歩を踏み出すことができた。

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築60年の団地でDIYをしながら心地良く暮らす

アクセサリー作家であり、「腰は大事」ステッカーの生みの親、フジイサミさんが、昔ながらの団地でDIYをしながら、自分にとって心地よい暮らしを探究していく様子を綴ったエッセイ。

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フジイサミ アクセサリー作家

シルバー、真鍮をメインにした、シンプルで付け心地のよい、使い続けたくなるアクセサリーを「銀・真鍮」という屋号で作っている。SNSで受注告知をするとたちまち予約殺到。自宅兼アトリエとして築60年の団地に住んでおり、その暮らし方が人気を博している。

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