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ラグビー妻の頭んなか

2024.01.16 公開 ポスト

誕生日の儀式、お餅つき大会、極寒の試合…大忙しの新年に現れた「妖怪フンデ」マフィあずさ

新年……とはいえ、シーズン真っ只中のラグビー界。

アマナキ・レレイ・マフィ選手(横浜キヤノンイーグルス所属)のパートナー、マフィあずささんが、新年のエピソードを4本立てで綴ってくださいました。

シーズン中のラグビー選手とその家族は、新年をどのように過ごしたのでしょうか? ぜひお楽しみください。

*   *   *

世界で二番目に幸せな洗濯

1月11日。
夫はいつものように朝、練習へ行き夕方帰宅。いつも帰宅したら洗濯機の前にその日使った練習着を大きなタオルの中にぐるぐるに巻いてまとめてボンと置いていくのだが、今日はなんだか様子が違う。

 

 

ぐるぐるがめちゃくちゃ重い。
なぜだろうと思い開封してみると、全てがビッショビショに濡れていた。なぜ……。今日は晴れのはず。そこでふと思い出した。

あ、今日誕生日やからか。
ラグビー選手はなぜか「誕生日の日の練習後、チームメイトから水をぶっかけられる」という儀式がある。他のチームはよく分からないが、よく見る光景だ。それでか。それでこんなに濡れているのか。みんなに祝ってもらって幸せだな、と洗濯機に入れながら思った。

世界一幸せな洗濯と言われるお産前の水通しぐらい幸せなことだ。世界で二番目に幸せな洗濯と名付けよう。

お誕生日おめでとう。

そんな夫アマナキ34歳。
好きな歌手は西野カナ。

先日朝ごはんを作ってから家事や子供達の支度やらでバタバタとしていた私を横目に優雅にトーストを食べていた夫。(嫌味じゃないよ)
バターを塗りながら携帯から何やら音楽を流し始めた。いつもはトンガの歌なのだがその日は西野カナの「トリセツ」だった。なんでそれねんと思いながらも、なんかそのチョイスがやけに面白くて「ナキのトリセツの歌やったら曲50分ぐらいになるやろな」と笑いながら話しかけたら、「ナニガ?」と言われた。

整理しよう。

まず、トリセツの意味が分かってない。
2、そもそもこの曲の趣旨を分かってない。
3、西野カナの声だけ楽しんでる。
この3つの説が濃厚だ。

そうかそうか。今日も楽しい会話をありがとう、夫よ。

南アフリカの大スターが参加する「お餅つき大会」

そんな夫はただいまラグビーシーズン真っ只中。新年であろうが何やら色々大変だ。
毎年所属チームが選手の家族も呼んで「お餅つき大会」を開催してくださるのだが、それに今年も参加させていただいた我が家。南アフリカの大スター、デクラーク選手がついたお餅を食べれるのは世界でここだけである。毎年金髪ロン毛をなびかせて、ついてくれる。

最近はありがたいことにチームの方に会うと「コラム読んでるよ」と声をかけていただく事があるのだが、この日は「読んだよ! いつもナキのお世話大変だね!」と言われた。しかし私は分かっている。チームの方々の方が大変だ。なので「そうなんですよ、でも気持ち分かりますよね?」と聞くと「うん、分かる。」と言われた。やはり。(笑)私のコラムやnoteを前から読んでくださっている方には伝わると思うのだが、手のかかる34歳トンガ人は職場でもちゃんと手がかかっているらしい。申し訳ない。本当にいつも感謝だ。

そんなお餅つき大会。監督が「縁起いいからみんな餅つけよ」とおっしゃっていて、身体に痛い箇所がある選手などは積極的にお餅をついていた。
これは夫にもやらさなければ……!! 夫の隣に行き「お餅つきぃや」と声をかけると、「ダメ、オレ、メチャ胸イタイ……」と顔をしかめていた。どうやら先ほどの練習で接触して打撲したらしい。ずっと胸をさすっていた。

餅つけよ! ったく。(鬼嫁)
今の我が家には縁起が必要や! しかし夫はイタイよぉ、とお餅をただモグモグしていた。

お餅つきの夜に現れた妖怪

そしてその夜。悲劇が起こる。

0時ごろ、ぐっすり寝ていた私に「あちゃん……あちゃん……」と何やら私を呼ぶ声。ふと目を覚ますと胸をさすりながらまだツラそうな顔をしてる夫が立っていた。「どしたん」と言うと
「チョット胸乗ってくれへん?」
……どゆこと? 今私がのび太くんなら眠すぎて目が3と3だ。全然意味が分からない。

むくりと起き上がり、もう一度聞き返すと「オレが寝転ぶから胸の上を足でフンデ」と言われた。夢であってほしい。

早速横で寝転ぶ夫。そして「ホラ、ココ」と打撲した場所を指さして待っている。もうこうなったら踏むしかない。正解が分からないままとりあえず指をさしている所にかかとを合わせてゆっくり体重をかけていく私。息を止める夫。しばらくしたら私の足をペチペチ叩いて終了の合図。

なんなんこれ(笑)

少し休憩をはさみ、「ハイ、もう一回」と言われる。またゆっくりかかとで踏んで体重をかけていく。
夜中の0時に私は、何をしているんだろう(笑)
するとそれが顔に出てしまっていたのか、夫が「ゴメンナ……」と言ってきた。

妻に足で踏まれながら謝る夫。どんな状況や。しかし言われた通りにするしかない私はそれを繰り返す。すると夫は
「はぁ、アリガトウ。メチャ楽やわ……」と去って行った。

ほんまかいな(笑)
まぁ、楽になれたならいいねんけどさ。

こうしてまた眠りについた私。
すると2時間後、「あちゃん……」と、また起こしてきた。

新生児かお前は!

なんや! つぎはなんや! と目を覚ますと「もっかいフンデ……」とお願いしてきた。受け取り様によってはかなりの変態である。しかし彼は真剣。かわいそうに、痛くて息がちゃんと吸えず、全く眠れないらしい。それを聞いて断るわけにもいかない。誰だ変態なんか言ってる奴は。仕方なくまた踏んづける私。
「ゴメンナ……」
足の下でまた謝る夫。

結局そのあと早朝にもう一度「フンデ」と起こされ久しぶりに鬼の寝不足になった私。しかもその朝、そのまま練習に行った「妖怪フンデ」。
私は日中眠い目をこすりながらも練習できてるかな、大丈夫かな……と心配だったが、その日帰宅した妖怪フンデはケロッとしていた。
「大丈夫?」と帰宅1番聞くと
「あ、胸? ダイジョブ」とあっさり言われた。

夢だったのかな?
トリセツに書いといてくれへんか。「たまに胸をフンデと起こす事があります」って。「こんな僕だけど笑って許してね」って。

極寒のラグビー観戦

そんなお正月早々から寝不足だったり、心配したり。相変わらずの心身バタバタ生活だったのですが、なんせラグビーシーズン真っ只中。
先週の土曜日は夫のチーム横浜キヤノンイーグルスの試合があり、子どもたち3人を連れて観戦に行ってきた。場所はニッパツ三ツ沢球技場。

ケガをして以来久しぶりのスタメンだったので、はりきって3時間前行動の我が家。最近はリザーブでも3時間前に出発がデフォルトになっており、いかに1日子どもたちと繰り広げられるドラマに臨機応変に対応できるかがポイントになってくる。(試合わい)

この日も意気揚々と向かったものの車を停める際、私たちの1台前で満車になるハプニングはあったのだがなんとか数分の待ちで駐車できた。
ふう、セーフ。
その後子どもたちを競技場前の公園にて放牧。ここで自分のチームや相手チームの奥様たちと井戸端会議。試合前の、束の間の癒しタイムである。そして時間になると、みんなスイッチを切り替えて戦闘態勢で応援席へ乗り込むのだ。

私は今回子どもたち3人と私だけの席を確保し、バックスタンドへ。席を発見すると、私たちの両隣もその周りも、ギッシリ人が座っていた。
「さぁ座って」と子どもたちを先に行かせようとすると次女がひと言
「いやだ」
いやだ? なぜ? 理由を聞くと知らない人の隣には座れないと。しかし私が端に座ると全員に手が行き届かなくなる。理想は(子 私 子 子)の順番なのだ。
まぁ(私 子 子 子)でもいいのだが、そうなると今度は端っこの子が文句を言う。

臨機応変だ。考えろ、私。
そこで下した判断は一旦去る。(笑)
立ってあーだこーだ考えるのは周りに迷惑なので一旦はけた我が家。作戦会議だ。そして思いつく。自由席にいこう!
警備のスタッフの方に指定席の我が家でも自由席に移動できるのかお伺いしてみた。すると本部の方に確認してくれ、すぐにOKを出してくださった。そして私は何も考えずに奥の自由席の方へ。周りに人が少ない一角を見つけ、そこに着席した。そしてひと息ついて気付く。

おもいっきり相手チームの応援席。

間違えちった! テヘ! 言うてる場合じゃない。もう移動する時間も元気もない。そこの一角は広々座れてスクリーンも近く、とても見やすかったし、何より、我が子たちは相手チームの応援団さんの太鼓で踊り狂っていた。とても楽しそうだ。楽しむことは大事である。

盛り上がる我が家

そしてやっと落ち着き「さぁ! 応援しよう!」と本腰を入れた瞬間、

「おしっこ」

でました、次女のスーパーミラクルバッドタイミングおしっこ。荷物を持ってみんなを連れて一旦お手洗いです。急いで次女を座らせて待つ私。
最近1人でおトイレができるようになり、その自信からなのかふんぞり返って座って用を足そうとするので、少し上半身を前に倒させるために「ほら、こんにちはしなさい」と言ったら、めちゃくちゃデカい声で
「こんにちは!!!」
と叫んだ次女。

ちがうねん、ちがうねん、ジャルジャルのコントみたいな事すな。

いつもなら笑いそうな事も私は早く現場に戻りたくて必死である。急いでズボンを履かせ、無事に試合に戻る。すると

雨が降ってきた。

なんでやねん! 予報では夕方からやん雨! 早くに用意して来たくせに雨具一式を忘れた私。何が3時間前行動やねん。「念には念を」ってタトゥーを入れろ。

子どもたちを濡らすわけにはいかないので、一旦キッズスペースに避難した我が家。子どもたちに塗り絵をさせながら、私はチラチラ携帯のオンデマンドで試合の行方を見守る。

後半、雨が少しやむ瞬間があり、その一瞬をついて観客席に戻った私たち。しかし極寒。夫が交代したタイミングでまた退散。(韻)
寒い寒いと文句を言う子どもたちの手を引きスタンドの階段を降りていると、ボランティアのスタッフの方が「これもし良かったら……」とホッカイロをくださった。泣きそう。その優しさが私の心に染み渡る。
感動しながら歩いてると目の前にラーメン屋さんのフードトラックが……。

みよ、この鼻水を。

ふいてもふいても現れるこの鼻水がこの日どれだけ寒かったかを物語っている。
試合は無事勝利し、極寒の中ではあったが、キッズスペースやボランティアスタッフの皆様のおもてなし、美味しいラーメンで身も心も温かった1日でした。

試合の事書けよ、私。

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ラグビー妻の頭んなか

マフィあずささんの夫は、 元ラグビー日本代表で横浜キャノンイーグルス所属のアマナキ・レレイ・マフィ選手。トンガ王国出身・189㎝・112kg・マイペース。

元気でやんちゃな3児と暮らす生活は、笑いあり、涙あり、疲れあり……。

ラグビーファンに大人気のくすっと笑えるコラムを、月1連載でお届けします。

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マフィあずさ

京都府出身34歳。パートナーのアマナキレレイ・マフィはトンガ出身のラグビー選手。横浜キヤノンイーグルス所属。

趣味で始めたブログラジオで子育てや日常の鬱憤を晴らし、日々奮闘中。

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