2024年3月31日をもって、32年間続けてきた放送作家業と脚本業を辞めることを表明した鈴木おさむさん。マンネリを捨てることで、働く意味、人生の目的、幸せのカタチが見えてくるといいます。著書『仕事の辞め方』の一部を再編集してお届けします。
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島田紳助さんにも「代わり」がいる
芸能界での「代わり」の話をしましょう。
2011年、東日本大震災から5ヶ月後。夜22時から行われた異例の記者会見。会見したのは、当時、超人気司会者の島田紳助さんでした。
まさかの引退会見でした。引退理由はわざわざここでは書きませんが、日本中が驚きました。レギュラー番組を多数持ち、全てが人気番組。なのに突然の引退。
テレビ界がパニックになりました。明石家さんまと島田紳助。ノリにノっていた超人気司会者の一人が突如芸能界からいなくなる。
テレビ界は宝を失い、「もうテレビがおもしろくなくなってしまう」と思った人も少なくなかったでしょう。
でも、この年からある人がテレビ界で、注目を集めていきます。コメンテーター出演はしていましたが、自分の冠番組を持ち始め、大きくブレイクしていく。
それがマツコ・デラックスさんです。
マツコ・デラックスさんは、島田紳助さんがいなくなった後くらいから、その存在感を増していきました。
結果、レギュラー番組を多数抱えるテレビ界の新たな宝となったのです。
島田紳助さんがいたとしても、マツコ・デラックスさんは売れていたという人もいるかもしれません。
ですが、僕はそうは思いません。
島田紳助さんがいなくなったことにより、テレビ界は、新たなるスターを探すことを急務とするわけです。
そこで今までチャンスを与えなかった人にも与えるわけです。その中で、マツコ・デラックスさんが勝ち上がってきたと僕は思っています。
この人いなくなったらもう無理だよ……って人がいなくなっても、別の人が出てくるのです。それが世の中です。
大事な人がいなくなるとチームは強くなる
随分と前の話になりますが、1996年、当時、6人組だったグループ、SMAPは、 メンバーの一人だった森且行さんがオートレーサーになるため、芸能界を引退しました。
現役のトップアイドルが辞めてオートレーサーになることは日本中に大きな衝撃を与えました。
歌も芝居もうまかった森さんが抜けることは、SMAPにとって大きな打撃。
大丈夫なのか? と心配の声が多くあがりました。
が、5人になったSMAPは、森さんの抜けた分をお互いがカバーし合って、個々がより強烈な存在になりました。
僕も当時、『SMAP×SMAP』という番組が始まったばかりで、スタッフはみんな森さんが辞めることに焦りましたが、その大きな危機感が燃料となり、沢山のアイデアを出して、番組はよりおもしろくなっていきました。
大事な人がいなくなることにより、焦りと危機感から、チーム力・組織力はさらに上がり、前よりも筋力がついて力強くなれる。その実例ですね。
仕事の辞め方
2024年3月31日をもって、32年間続けてきた放送作家業と脚本業を辞めることを表明した鈴木おさむの著書。「仕事を辞める」と想像することで、働く意味、人生の目的、幸せのカタチが見えてくる。