町を歩いていると、並んで歩いていた知人がふと足を止めた。
「××がありますよ」
知人は道路の向こう側にあるお店の看板を指さしていた。距離にしておよそ10メートル先。わたしは、ああうん、なんていう不明瞭な声を出しお茶を濁そうとする。すると知人は不思議そうな顔をして、もう一度確認するようにゆっくりと言った。
「××、ありますよね?」
その視線があまりにまっすぐだったので、わたしは観念して、本当のことを言ってしまう。
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愛の病
恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。