人はこうやって共感される――。『起業1年目の教科書』シリーズでお馴染みの経営コンサルタント・今井孝さんが「話し方」のコツを具体的かつ実践的に解説するコミュニケーションの教科書『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、話し方・つながり方』より、一部を抜粋してお届けします。
「大阪のおばちゃん」は海外でも動じない
さあ、ここから本題です。
まず、話し方で重要なポイントを最初に書きます。
「今の自分」を受け入れられていると、
話し方にコンプレックスを感じることはない。
これが本質です。
口べたでも、初めての場所でも、格上の相手にも、動じることがないのです。
これを説明するために、ちょっと極端な例で説明させてください。
その例というのが、「大阪のおばちゃん」です。
私は大阪出身なのですが、いわゆる「大阪のおばちゃん」と呼ばれる人たちには言葉の壁なんて存在しません。
日本中どこでも大阪弁だし、海外でも身振り手振りと大阪弁と、ちょっぴりの現地の言葉だけで乗り切ってしまいます。
ホテルでも、観光地でも、高級ブランド店でも、屋台でも、自分の言いたいことを伝えて要求を通します。
英語が話せない多くの人は海外でうろたえるのに対し、大阪のおばちゃんたちは動じることがないのです。
これはいったい何の違いでしょうか?
実は、大阪のおばちゃんたちは、こう思っています。
「私は大阪の人間なので英語なんて話せなくて当然」
どこに行っても大阪弁で貫くのは、「大阪の人間」と自分のことを認識しているからです。
つまり、自分のキャラ設定がありのままで明確なのです。専門的な言葉で言うと、自分自身のアイデンティティや自分軸をしっかり持っているということですね。
「ありのままの自分」を自分のキャラ設定に
一方で、「英語が話せないから会話ができない」という人は、自分が何者なのかということより、「こうあるべき」という考えに囚われてしまっている状態なのです。
「海外では英語で話さないといけない」
「要求が通じないのは英語が話せない自分のせいだ」
と思ってしまうわけです。
実は、話し方やコミュニケーションの問題の多くもこれが原因です。
- よく理解していない会議なのに、「良い意見を言わなければならない」と自分でハードルを上げてしまう。
- 初めての勉強会や交流会で、「知識がない自分が恥ずかしい」と思って何も話せなくなる。
- よく話す人を見て、「自分はあんなにうまく話せない」と落ち込む。
このように、自分のキャラ設定を間違っていて、さまざまな「こうあるべき」に? まれて自信を失っていくわけです。
しかし、自分のキャラ設定が「ありのままの自分」であればどうでしょうか?
例えば、大阪のおばちゃんがインフルエンサーを見ても、「私はあんなうまくできへんわ!」と思うだけでしょう。
また、勉強会や交流会の場でも、「みんな頭いいねぇ、すごいわ」くらいの感想を、気楽に話すのではないでしょうか。
自分は大阪のおばちゃんなので、それを知らなくて当然だし、うまくできなくて当然と考えていて、「うまくやらなければならない」とは考えないのです。
ですので、どんな場所でも緊張しないし居心地の悪さがありません。
「うまく話せない」と悩んでいる時は、話し方のテクニックの前に、自分のキャラ設定を間違えていないか? をまず確認してみてください。
あなたはいったい何者なのでしょうか?
その場所で「良いこと」を「うまく」話す必要があるのでしょうか?
きっとそんな必要はないはずなのです。
そして、居心地の悪い思いをする必要もないのです。
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この続きは書籍『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、話し方・つながり方』でお楽しみください。