人はこうやって共感される――。『起業1年目の教科書』シリーズでお馴染みの経営コンサルタント・今井孝さんが「話し方」のコツを具体的かつ実践的に解説するコミュニケーションの教科書『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、話し方・つながり方』より、一部を抜粋してお届けします。
会話にアドリブは必要ない
まず、目指さなくていい高レベルのスキルが「アドリブ」です。
そもそも、話し上手な人も、すべてアドリブではありません。
新入社員の時、私は部署のあるイベントで幹事をしていました。
そのイベントの最後で、部長に締めのあいさつをお願いしました。
すると、部長は「えっ!?」と驚いた顔をしました。そして、「聞いてないよ~」と言いながら前に出てきました。
伝達ミスで誰も事前にお願いしていなかったのですが、私はそれでも「部長は話がうまいから大丈夫」だと思っていました。
ところが、部長の締めのあいさつは、いつになくしどろもどろでした。
それを見て、ようやく気づきました。部長はいつも、きちんとスピーチの準備をしていたのだと!
他にも、飲み会やパーティで盛り上げるのがうまい人の話も、アドリブに見えてそうでもないことが多いのです。
何度か同じ場にいると、「あ、これ前と同じトークだ!」と気づきます。
要はウケる鉄板ネタを持っていたり、得意の切り返し方があったりと、すべてアドリブで盛り上げているわけではないのです。
また、お笑い番組で、エピソードトークでウケなかった芸人さんが、「あれ、おかしいな。このトーク、昨日何回も練習したのに」と言っていました。これを聞いて、プロであるほどアドリブでなんとかしようとはしていないのだと気づかされました。
ましてや、口べたな人にアドリブなんて必要ありません。
さらに次のように極力話さなくていい工夫もできるのです。
話さなくて良い仕組みを作る
友人に、話さなくても営業成績が抜群の人がいます。
その彼の秘密は、商品やサービスの「説明資料」を事細かに用意することです。
よく聞かれる質問はたいてい決まっていますから、あらかじめ1枚モノの資料にしておいて、口頭で説明しなくて良いようにしています。
また、口べたのフリーランスなのに、交流会に行くたびに仕事が取れる人もいます。
彼の場合は、名刺にみっちり仕事の情報を書いています。
名刺交換した相手が興味を持って質問してきたら、名刺を指さしながら話せるので、トークに頼らなくて良くなります。
また、後日名刺を見た時に思い出すし、WEBサイトにも事例などの情報をしっかり掲載しているため、あとから問い合わせが来ることも多いそうです。
このように、よく話したり聞かれたりすることを、自分の代わりに伝えてくれるツールを持っておくと、毎回緊張しながら説明しなくてすみ、結果も得やすいわけです。
また、職場やチームの人間関係を良くしたいから、雑談などを通じて親交を深めたいということもあるかもしれません。
もちろん、雑談も素晴らしいのですが、それ以外にも手段はあります。
要は、「相手を信頼・尊敬していること」や「仕事に一生懸命取り組む気持ち」が相手に伝われば良いわけです。
それなら、「口べたですが技術で貢献します!」などと、チームメンバーにメッセージを送るだけでもいいのです。
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この続きは書籍『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、話し方・つながり方』でお楽しみください。