人はこうやって共感される――。『起業1年目の教科書』シリーズでお馴染みの経営コンサルタント・今井孝さんが「話し方」のコツを具体的かつ実践的に解説するコミュニケーションの教科書『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、話し方・つながり方』より、一部を抜粋してお届けします。
プレゼンは半分伝われば上出来!
あまりにも緊張するという時は、原因があります。
それは、「うまくやろう」という気持ちが強すぎるということです。
「良いプレゼンをしてみんなから拍手喝采を浴びるぞ」
と自分からハードルを上げてしまって、逆に本番で力が入りすぎるのです。
この状況を回避するにはどうすればいいでしょう。
実は、すごく簡単な方法があります。
それは、「半分伝わればいいや」と、力を抜くことです。
実際、どれだけ事前の準備で頑張ったとしても、本番で相手に伝わるのは自分が思っている6~7割程度にすぎません。下手したら半分ということもあります。本番はうまく話せなくなるものなのです。
元々そういうものだと割り切って、肩の力を抜いて本番に臨めばいいのです。
私は趣味でクラリネットを習っていて、年に数回だけ人前で発表する機会があります。
演奏のあとに、いつも言うのがこの言葉です。
「練習はもっとうまいのに……」
まあ、そんなものなんですよね(笑)。
このように本番で7割しか出せないのであれば、練習でプレゼンのクオリティをとことん上げなければいけません。
もうこれ以上はない、というくらいまで練習できたら、あとは本番の自分に委ねましょう。
練習はとことんする。
本番は結果を手放す。
これが人に伝える時の基本です。
原稿を読み上げるだけでも良い
うまく話せないのであれば、極端な話、原稿を読んで話しても構いません。
それで思いが伝われば良いのです。
以前参加した、歌の発表のイベントでのことでした。
そこでのライブの時間に、出場した女性が用意していた原稿を読み上げていました。
会場の他の参加者は思わずじっと聞き入っていました。
「私は15年前に突然夫を亡くし、女手一つで子育てしてきました。
いつも子ども優先でやってきて、自分のために何かをする余裕はありませんでした。
ようやく子どもが手を離れ、少しずつ余裕が出てきました。
そんな時このライブを知り、参加することにしました。
本当はずっと歌うことは好きだったけれど、自分のために時間を取る暇がありませんでした。
だから、この機会に思い切り体験しよう、と思い立ったのです」
原稿の通りにとつとつと読むだけでしたが、彼女の言葉の一つ一つには思いがこもっていました。
それが、聞く人たちの心をぐっと掴んだのでしょう、うんうんとうなずく人もいれば、涙を拭っている人もいました。
スピーチをした彼女は、特別に感動させようと思っていたわけではありません。たまたま、どういう経緯があって参加したのかを語る機会があったので話しただけです。
それでも、そこまで乗り越えてきた出来事への思いが言葉に染み込んでいたからこそ、人々の心を強く揺さぶったのでしょう。
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この続きは書籍『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、話し方・つながり方』でお楽しみください。