人はこうやって共感される――。『起業1年目の教科書』シリーズでお馴染みの経営コンサルタント・今井孝さんが「話し方」のコツを具体的かつ実践的に解説するコミュニケーションの教科書『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、話し方・つながり方』より、一部を抜粋してお届けします。
論破して売れる店員さんはいない
もう1つ、論破もエネルギーの浪費です。
理屈で勝っても動いてもらえなければ意味がないからです。
例えば、服や鞄を買いに行った時に、欠点の部分を尋ねると、「そんなことはない」と論破してくる店員さんからは、やはり買わないでおくことが多いです。
一方で、欠点があっても気持ちよく買った経験がありました。
それは、あるお店にジャケットを買いに行った時のことです。
気に入ったものを試着して鏡を見ながら、
「良いですね。でも、綿のジャケットは、テカテカになってくるんですよねえ」
と、店員さんと会話していました。
コットン素材のジャケットは表面が擦れて色あせて、ワンシーズンでくたびれることを経験済みだったのです。
その時、店員さんは、その欠点を認めて、こう言いました。
「はい。そうなんですよね。
ですので、それを踏まえた価格にさせてもらっています」
論破せずに私の気持ちを理解してくれて、その上で価格の適切さを伝えてくれたので、私は抵抗なく買うことを決めました。
相手を動かすためであれば論破は逆効果です。
相手の意見を否定しないほうが、相手を動かせます。
余裕を持って議論から降りよう
逆に、あなたが論破された時はどうでしょうか?
周りはそれを見て離れていくでしょうか?
実際はそんなことはありません。
SNSで議論に巻き込まれた時、私はそれを実感しました。
いくら丁寧に返信しても、相手は論点をズラしたり言葉の揚げ足を取ったりするばかりで、まともにとりあおうとしません。
なんでわかってくれないのかと、イライラが募ってきました。
その時、それを見ていた別の人から、
「変な人にからまれて大変ですね」
というコメントが来ました。
それを読んで、やっと私は冷静になれました。
相手は匿名だし、真に受けていても時間のムダです。
論破されたところで、周りは、「今井は議論に負けたから間違っていたのだ」と判断するわけではありません。
周りの良識ある人たちは、
「あの人、言いがかりをつけてきて、ちょっとおかしいよね」
ぐらいにしか思わないのです。
ですので、そこでわざわざ同じ土俵に立たず、余裕を持った態度で議論から降りましょう。
論破するより、大人の対応をするほうが信頼されます。
* * *
この続きは書籍『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、話し方・つながり方』でお楽しみください。