事態は急展開。転んだ母が骨折で入院することに。手術かリハビリ病院への転院か…とにかく仕事にならない。中川右介

10月1日 日曜日

＜介護1068日＞

『アルツハイマー征服』読了。母も服用している、認知症の薬、アリセプト開発までが前半。アリセプトは認知症を治すことはできず、8か月から一年半、進行を遅らせる効果がある。飲まなかったらどうなっていたかは、分からない。信じるしかない。

本の後半は、アリセプト以後の認知症治療薬開発の話。承認されたレカネマブについて、文庫化にあたり加筆。化学式やらは理解不能なのだが、専門用語が多いわりには、読みやすく、プロジェクトX的な面白さの本だった。新薬は先に作れば儲かるから、開発競争となる。

それでいいのかと思うが、公的研究機関がやってたら永遠にできないような気もする。今日も事件はなし。しかし、「ここはどこ？　いつから、ここにいるの？」と言う。

アリセプトで進行を抑えてられても止められない。本にはこの後どうなるかの症例も書いてあった。気にしても仕方ない。新薬レカネマブは初期の人にしか効かないらしいから、母には関係ない。

18時半就寝。

10月2日 月曜日

＜介護1069日＞

デイサービスへ。クルマを待つ間。「どこへ行くの」「デイサービス」「行ったことない」「毎日行ってるよ」「知らないけど、あなたが知っているなら、いいわ」「みんな、優しくしてくれるよ」「でも、知らない人よ。どこで生まれ、どう育ったかも知らない。そんな人に、私の運命を預けていいのかしら」「運命？　夕方には帰ってくるよ」「もう、ずっといるんじゃないのね」と話していたら、クルマが来た。

今日は執筆。午後、重版祝い。テレビはジャニーズ事務所記者会見。

デイサービス、帰りのクルマ、20分遅れる。夕食、18時半就寝。

10月3日 火曜日

＜介護1070日＞

デイサービスへ。

執筆。午後、『ザ・クリエイター』試写会へ。

今日は定刻に、デイサービスから戻る。夕食。18時就寝。

10月4日 水曜日

＜介護1071日＞

今日はデイサービスなし。午前中に買い物へ。

とくに事件なし。執筆。魔除けの南野陽子で邪魔されることはなかった。

18時に寝た母が21時半過ぎ、起きてくる。

「さっき、みんながいた時、写真を撮ればよかったわね」「みんなって？」「卒業生たちが来てたでしょう」「何の卒業生？」「分からないけど、若い女の子がたくさん来て、あなたとそこに座っていたでしょう」「そうだっけ」「もう帰ったなら、いいわ」

女の子に囲まれた覚えはないのだが。南野陽子と混乱したか。

10月5円 木曜日

＜介護1072日＞

デイサービスへ。見送って、歌舞伎座へ。

12月に出る『沢田研二』の校閲ゲラを受け取る。

デイサービスの帰りのクルマは断っておいたので、迎えに行く。一瞬、この人誰？　という表情。バスで帰り、17時半帰宅。

夕食作り、18時から。19時就寝。

10月6日 金曜日

＜介護1073日＞

事件なく、デイサービスへ。見送って、永田町へ。来年予定の本の打ち合わせ。

＊　　　＊　　　＊

※連載は終了しましたが、著者への感想、コメントはしばらくの期間、こちらのフォームで受け付けています（非公開）。これまでも様々なご感想をお寄せいただき、誠にありがとうございました。