世界のビジネスパーソンにとって、アートは共通の必須教養! 世界97カ国で経験を積んだ元外交官の山中俊之さんが、アートへの向き合い方を解説する『「アート」を知ると「世界」が読める』より、一部を抜粋してお届けします。
ルネサンス以前にアーティストは存在しなかった
原始の洞窟アート、古代(メソポタミア、エジプト、ギリシアなど)のアート、古代ローマ帝国のアートは、中世に入ると「キリスト教のアート」となります。
イコン画のビザンチン、アーチ型を用いた石造の大聖堂で知られるロマネスク、天まで届けとばかりに尖塔が際立つ大聖堂が象徴するゴシックなどの様式で、教会や宗教画が多くつくられました。
「でも、それだけがアートなの? 神は素晴らしいけれど、人間のリアルを描きたい。自分を表現するには、キリスト教以前の古代ギリシア・ローマを見直したい!」
こうしてフィレンツェを中心に起こったのが芸術復興で、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロが登場──世界史の授業的に駆け足でまとめれば、「そういえば……」と思い出した世界史選択者も多いのではないでしょうか。
さらに「ルネサンスは、遠近法や明暗法の採用によるリアリティの探究をもたらした」というのも、よく知られた美術の基礎知識です。
ビジネスパーソンがルネサンスで押さえておきたいのは、「アーティストの誕生」です。
ルネサンス以前にアーティストは存在せず、画家も彫刻家も「名もなき職人」でした。
絵画でも建築でも彫刻でも、教会や王侯貴族の依頼どおりに精緻に完成させることが求められ、どんなに才能があっても、つくり手はあくまでも裏方です。
サインを残すこともありましたが、単純に「制作者を明らかにするメモ」という意図であり、「自己表現するアーティストとしてのサイン」が始まったのはルネサンス以降です。
ルネサンスをきっかけに、つくり手が職人からアーティストへと昇華し、つくり手の哲学──高尚で深淵なテーマ──も徐々に反映されるようになりました。
もっとも、ルネサンスを経ても、ミケランジェロ・ブオナローティのように「作品自体が私の表現だ」と、自分のサインをほぼ入れていないアーティストもいます。バチカンの世界遺産・システィーナ礼拝堂天井画はミケランジェロの代表作であり、「創世記」を題材にした作品。何度か修復を経ていますが、「ミケランジェロ」というビッグネームの作であってもなくても、見る人を圧倒する素晴らしさは色褪せません。
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