日本テレビ系列で毎週月曜19時から放送されている「有吉ゼミ」。2024年4月15日放送予定回に九重部屋さんと工藤公康さんがご出演されます。【グルメすぎる相撲部屋】こと、九重部屋さんの「食」と「体のつくり方」とは?
プロ野球界・相撲界のレジェンドと、国内外の名リーダーが師事する「心身統一合氣道」の継承者が忖度なく語り合った、出色の指導者論にして勝負論。工藤公康氏、九重龍二氏(元大関・千代大海)、藤平信一氏による『活の入れ方』より「第2章 自分を守る体づくり」の一部を再編集してご紹介します。
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力士の立派な体をつくる秘訣
相撲界には“朝が早い”というイメージがあります。工藤公康さんは、それに影響されたと言っています。
「力士は、朝早くに起きて稽古をして、その後で食事をすると聞きました。『強い体をつくるうえで、それは理にかなっているからだ』と。それで私も、朝起きて水は飲みますが、運動とトレーニングを終えてから、食事を摂るようになったんです。
やってみて実感したんですが、体のサイクルがすごくいいんですよ。運動した分だけ食事を摂ると体調がいいし、体がよく動く。それが感覚的にわかってきました。
実際のところは、どうなんですか?」
この工藤さんの問いかけに対し、九重龍二さんは、次のように話しています。
「たしかに、食事は稽古の後にします。朝の6時から昼前まで稽古をして、その後が食事です。医学的、栄養学的、生理学的に、それが正しいかは、正直、わかりません。
でも、そうやって稽古の後で食べるほうが、吸収しやすくなるというか、エネルギーに変えられることは、経験的に知っています。
稽古の後、お昼ぐらいから、いわゆる“ちゃんこ”を食べるんです。炭水化物もたんぱく質も脂質も、すべて一気に摂る。食事が終わるのが、だいたい午後2時くらいです。
その後、掃除をします。体を軽く動かすんですね。そして4時間くらいいったん寝るんですが、この睡眠で、体が回復したり、成長したりするんです」
睡眠時の力士の体に異変が起きることも?
九重さんは次のように続けられます。
「夜の睡眠もそうなんですけど、骨がきしんだり、肉が割れたりして、目が覚めたことがあります(笑)。ウソみたいでしょ。でも本当なんです。
キシキシッ……ピキピキ、ビキッ、と音がして、驚いて飛び起きたんですね。もしかして、と鏡を見たら、肉割れができていて、体がバーンと張って、でかくなってるんですよ。稽古の後に食べるといい、って俺らは教わって、本当にそうやって体をでかくしてるんです。
本来ならば、おにぎり1個とかバナナ1本とか食べて練習するほうがいいって聞いたこともあるんですけど、実際にはできません。そんなこと考えられないです。
だって、稽古では、バチーンと胃袋の上にパンチが入ってくるわけです。立ち合いとか、かちあげとかで。胃袋に何か入っていたら、全部戻しちゃいますよ(笑)。
だから、稽古前には、体が食べ物を受け付けません。だったら、もう食べないほうがいいということで、稽古後に食べることが習慣になったんです」
名横綱、千代の富士関の体の凄まじさ
成長期に骨がキシキシ伸びる音がする、というのは聞いたことがありますが、バキッと腹の肉が割れる音がする、というご本人ならではの体験談は、大迫力のリアルさです。
心身統一合氣道会には、数名の力士が稽古に来ています。また、かつては、現役時代の千代の富士関が、私の師匠(父・藤平光一)の教えを受けていたことは、知る人ぞ知る話です。私も子どもの頃、千代の富士関に抱っこされ、膝の上に乗せてもらった記憶があります。
九重さんが“鬼”と語った人ですが、私の中ではニコニコと笑う優しい力士でした。しかしながら、体は鋼のようであったことも覚えています。
力士の体に関しては、九重さんは、こう話しています。
「親方の場合は、鍛え方が違いますからね。別格です。鬼と言われるゆえんです(笑)。
ふつう、力士の体というのは脂肪があります。と言っても、みなさんが想像するような、やわらかいプニュプニュした脂肪ではありません。外側はやわらかくても、内側は硬い筋肉なんです。“ゴムまり”のようだとも言われます。
ぶつかり合いでは、激しくぶつかり合うので、防御ができなければなりません。ボーンとはね返すというか、受け止める。でも、瞬発力が何より大事な競技なので、大きくて太い筋肉も必要です。つまり、やわらかさと硬さを兼ね備えた筋肉なんです。幕内クラスにでもなれば、筋肉はガチガチですよ」
なるほど。たしかに特別な肉体です。ムキムキで、腹筋がシックスパックに割れているような“筋肉むき出し”の体では、ぶつかり合った際にはね飛ばされるか、損傷してしまうでしょう。力士の特別な肉体をつくるには、長年の経験に基づいた食事習慣が必要ですね。しかも、人間の体は一日にしてつくられるわけではなく、日々の積み重ねが必要なのです。
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続きは幻冬舎新書『活の入れ方』でお楽しみください。
活の入れ方
どんな仕事もスポーツも、勝って成果を上げるためには、妥協を許さない厳しさ、貪欲に自分を鍛える必死さが欠かせない。
だが、それをどう教えればいいのか?
重要なのは、ぶれないこと、押し付けないこと、腹を割って話すこと、愛ある厳しさで臨むこと
――プロ野球界・相撲界のレジェンドと、国内外の名リーダーが師事する「心身統一合氣道」の継承者が忖度なく語り合った、出色の指導者論にして勝負論。