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地球の中心で何が起こっているのか

2024.05.21 公開 ポスト

「海洋底拡大」を地質学の第一人者が図解 プレートテクトニクスのメカニズムとは巽好幸(理学博士)

なぜ日本ではこんなにも頻繁に地震が起きるのでしょうか。世界が認める地質学の第一人者が解き明かす地球科学の最前線、幻冬舎新書『地球の中心で何が起こっているのか』より、一部を抜粋してお届けします。

硬いプレート=「リソスフェアー」
柔らかくて流れる部分=「アセノスフェアー」

既に述べてきたように、地球の中心と表面では、5000度もの温度差がある。この温度差を解消しようとして、固体のマントルは、対流してせっせと熱を地表へと運んでいる。

では、マントルが対流すると、何が起こるのだろうか?

それこそが、「プレートテクトニクス」と呼ばれるものなのである。

固体地球の表層は十数枚の剛体の板(岩盤)で覆われていて、これらのプレート(地球科学者は「リソスフェアー」と呼ぶことが多い)の運動と相互作用によって、いろんな地球現象が起こる(図1-7)。これがプレートテクトニクスの要点だ。大切なことは、プレートは硬くて変形しないこと。それと、硬いプレートの下には、「アセノスフェアー」と呼ばれる柔らかくて流れる部分があることである。

つまり、プレートとその下の部分の区別は力学的なものであり、物質の違いによるものではない。先に述べた地球の層構造と比べると、プレートとして振る舞うのは、地殻とマントルの最上部である。つまり、地殻とマントルの境界である「モホ面」は、プレートの底ではなく、プレートの中に位置する

 

では、なぜ同じマントル物質であるにもかかわらず、硬いプレートと柔らかいアセノスフェアーとなるのだろうか?

硬いか柔らかいか、それを表す指標が「粘性」だ。そして、粘性は温度によって大きく変化する。つまり、プレートの底は、温度が決めていると言ってもよい。非常におおざっぱに言うと、900~1000度の等温線が、プレートの底と一致すると考えてよいだろう。

海洋底拡大のメカニズム

プレートは、太平洋や大西洋などにある、大洋の海底大山脈「海嶺」で作られる(図1-7、1-8)。海嶺は、プレートが両側に引っ張られてできた地球の巨大な裂け目だ。このことから、海嶺は、「プレート発散境界」とも呼ばれる。

しかし、決して裂け目がどんどん大きく、深くなっていってプレートが壊れてしまうわけではない。裂け目を埋めるようにマグマが作られて、それが固まって「海洋地殻」が作られているのだ。

 

海嶺では、このようにマグマが作られているためにプレートの温度は高い。

ところが、プレートは自身の重さのために年間数センチほどのスピードで海嶺から離れていく。この過程でプレートはだんだん冷えていってしまう。先に述べたように、プレートとアセノスフェアーの境界はある等温線に相当するので、プレートは海嶺から離れるにしたがって、厚くなっていく(図1-8)。

海嶺は、もとから海の中にあったわけではない。「地溝帯」と呼ばれる大陸の中の割れ目(図1-8)が広がって、やがて大陸が分裂し、海となった場所の名残りだ。

 

アフリカ大陸には大地溝帯と呼ばれる大地の割れ目が、紅海からエチオピア、ケニアを縦断してモザンビークまで6000キロを超えて分布する。紅海はすでに海になっているが、他の部分でも割れ目は広がり、あと数百万年すれば、西アフリカと東アフリカは分断されると予想されている。

分裂した大陸と大陸の間には、海が入ってくる。

アフリカ大陸とアラビア半島の間のスエズ運河によって地中海と結ばれている「紅海」が、この段階にある海だ(図1-7)。

夕暮れの紅海(ヨルダン、アカバ)

もともと地溝帯として裂け始めた所に海が入り、海嶺が走っているのだ。この海嶺はインド洋の真ん中を走る海嶺へと繋(つな)がっている。そう、地溝帯は海嶺となり、さらにプレートが作り続けられることで、海洋底は広がっていくのである。

 

これが、「海洋底拡大」と呼ばれるプレートテクトニクスの基本となる現象だ。太平洋や大西洋も、現在でもプレートが生産されて移動しているので、海洋底拡大が続いている。

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地球の中心で何が起こっているのか

なぜ日本ではこんなにも頻繁に地震が起きるのでしょうか。世界が認める地質学の第一人者が解き明かす地球科学の最前線、幻冬舎新書『地球の中心で何が起こっているのか』より、一部を抜粋してお届けします。

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巽好幸 理学博士

1954年、大阪府生まれ。理学博士。専門はマグマ学。独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球内部ダイナミクス発展研究プログラムディレクター。78年、京都大学理学部卒業。83年、東京大学大学院理学系研究科(地質学)博士課程修了。京都大学総合人間学部教授、同大学大学院理学研究科教授、東京大学海洋研究所教授を経て、現職。2011年5月に幻冬舎より刊行された『パワーストーン 石が伝える地球の真実』を監修。

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