なぜ日本ではこんなにも頻繁に地震が起きるのでしょうか。世界が認める地質学の第一人者が解き明かす地球科学の最前線、幻冬舎新書『地球の中心で何が起こっているのか』より、一部を抜粋してお届けします。
地球の年代はどうやって調べるのか
何でも、1番はいいものだ。地球最古の岩石や鉱物を見つけたら、さぞかし快感であろう。ほぼ確実に「ネイチャー」や「サイエンス」といった超有名雑誌に掲載されるし、何よりも地球誕生や初期地球の様子を探る上で、貴重なデータとなるからだ。
では、地球やそれを構成する岩石の年代(年齢)は、どうやったらわかるのだろうか? これを説明するためには、少し、「元素」の話をしなければならない。
そう、あの周期表に並んでいるやつだ。因みに、文部科学省「一家に1枚シリーズ」の周期表は、簡単にダウンロードできるので、是非お試しを!
元素は陽子の数(原子番号)で識別される。同じ元素でも中性子の数が違うものが存在する場合、これらを同位体と呼ぶ。同位体の中には、放射線を出して、元の元素(親元素)から別の元素(娘元素)に変わる「放射性同位体」がある。「放射崩壊」と呼ばれる現象だ。
放射崩壊は、周囲の温度や圧力とは全く関係なく、専ら時間経過とともに一定の割合で起こる。
図2-2では、初期量の親元素が半減期λで放射崩壊する場合の親元素量(P)、娘元素量(D)の時間変化を示している。この性質を用いると、岩石や鉱物中の親元素と娘元素の数を測ってやれば、放射崩壊した時間(t)を求めることができる(図2-2)。
これが「放射年代測定」と呼ばれる方法だ。
ここで重要なことを覚えておいていただきたい。
例えばマグマが固まってできた鉱物や岩石について、放射年代測定を用いてある年代が得られたとしよう。この年代値が意味するのは、マグマから鉱物ができた年代や、マグマが冷えて固まって岩石となった年代なのである。放射崩壊という時計は、娘元素が固体の結晶の中に固定された時から動き始めるのだ。
年代ハンターの標的となる鉱物・ジルコン
形成後に変成作用や変質作用の影響を受けた岩石は、意味のある放射年代値を得ることが難しい場合が多い。
一方で、岩石を構成する鉱物の中には、化学反応を起こしにくく安定であるために、信頼度の高い年代を得ることができるものがある。その代表格がジルコンである。宝石質のジルコンはヒヤシンス色を呈することから、この鉱物の漢字表記は風信子(ヒヤシンスの異名)鉱である。
ジルコンには放射性元素であるウランやトリウムが多く含まれるために、精度の高い年代測定が可能なのである。西オーストラリア、パースの北約1000キロに位置するジャックヒルズは、変成作用を受けた堆積岩の中に、40億年を超す年代を示すジルコンが含まれることでよく知られている。年代ハンターたちの格好の標的なのである。
現在最も古いとされるジルコンは、44億400万年前のものである。またこのジルコンの化学組成を解析すると、この鉱物はもともとは花崗岩に含まれていたらしい。花崗岩は、プレートの沈み込みによって生じたマグマがゆっくり冷え固まった岩石である。
つまり、44億400万年前には、地球表面の一部は硬いプレートで覆われて、既にプレートテクトニクスは作動していたのだ。さらに、このジルコンの特徴から、当時海水が存在したと考える人もいる。
地球の中心で何が起こっているのか
なぜ日本ではこんなにも頻繁に地震が起きるのでしょうか。世界が認める地質学の第一人者が解き明かす地球科学の最前線、幻冬舎新書『地球の中心で何が起こっているのか』より、一部を抜粋してお届けします。