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始める力

2024.07.01 公開 ポスト

ダイエットが続かない理由を「PST分析」で解説 続けるコツは「すぐ」&「確か」な結果石田淳

英会話、資格の勉強、ダイエット、禁煙など、始めたいのにできない人には共通の傾向がある……! 行動科学マネジメントの第一人者、石田淳さんが誰がやっても成果を出せる実践的メソッドで「始め方」を指南する幻冬舎新書『始める力』より、一部を抜粋してお届けします。

得られる「結果」には、いろんな種類がある

あとで得られる結果は、目先の結果に負けてしまう

これも、「始めたことが続かない」大きな理由になります。

今度は、ダイエットに挑戦しては挫折を繰り返す、女性会社員のSさんに登場してもらいましょう。

ケーキを前に喜ぶ女性の写真

Sさんは、とにかく甘いもの好き。とくにケーキには目がありません。会社でのストレスフルな時間を過ごしたご褒美に、夕食後にケーキを食べるのが最大の楽しみです。でも、ケーキを食べ過ぎたら太るのはわかっています。

実際にケーキのせいで体重は増え続け、スマートな同僚と同じ制服を着ていると、自分の「ぽっちゃり」がどんどん目立つようになって嫌になります。脚が長くてもともとのスタイルは悪くないSさんですから、やせたらかなりイケルという自覚があります。だから、やせたいのです。ケーキを食べるのをやめたいのです。

 

このときの、Sさんの先行条件(A=Antecedent)は、「やせたい」「かっこ良く制服を着こなしたい」というものです。

行動(B=Behavior)としては、「ケーキを食べる」ではなくて、「ケーキを食べる代わりにノーカロリーのガムを噛む」などにしたいわけです。

では、それらの行動の結果(C=Consequence)はどうなるでしょうか?

 

「ケーキを食べる」の場合

(1)「美味しい!」と満足する

(2)「また食べちゃった」と後悔する

(3) 体重が増える

 

「ケーキを食べる代わりにノーカロリーのガムを噛む」の場合

(4)「美味しくないし物足りない」と感じる

(5)「なんとか我慢できた」とほっとする

(6) 体重が減る

などが考えられます。

 

これらを見ていると、人の行動によって得られる結果には、いくつかの種類があることがわかってきます。

たとえば、(1)や(4)はすぐに得られるけれど、(2)や(5)は少ししてから、さらに(3)や(6)はかなりあとから得られる結果です。また、(1)(5)(6)はポジティブで、(2)(3)(4)はネガティブな結果です。

こうした結果の種類に着目すると、さらに面白いことがわかってきます。

ポジティブだけど時間がかかる不確実な「結果」では、人は動かない

行動科学マネジメントでは、人の「行動」で得られる「結果」について、「PST分析」と呼ぶ3つの座標軸で分類しています。

  • タイプ   「P=ポジティブ」か「N=ネガティブ」か
  • タイミング 「S=すぐ」か「A=あと」か
  • 可能性   「T=確か」か「F=不確実」か

すべての結果は、この3つの座標軸の組み合わせ。つまり、次の8種類の結果が存在することになります。

  • (1)「ポジティブ」で「すぐ」で「確か」な結果
  • (2)「ポジティブ」で「すぐ」で「不確実」な結果
  • (3)「ポジティブ」で「あと」で「確か」な結果
  • (4)「ポジティブ」で「あと」で「不確実」な結果
  • (5)「ネガティブ」で「すぐ」で「確か」な結果
  • (6)「ネガティブ」で「すぐ」で「不確実」な結果
  • (7)「ネガティブ」で「あと」で「確か」な結果
  • (8)「ネガティブ」で「あと」で「不確実」な結果

このうち、人に行動を繰り返させるのに、最も効果的な組み合わせは(1)です。「ポジティブな結果が、すぐに&確かに得られる」と知っていれば、人は積極的にその行動を取るようになります。

とくに「タイミング」は重要ファクターで、「あと」から得られる結果よりも「すぐ」に得られる結果に、人の行動は左右されます。

 

先ほどの例を振り返ってみましょう。

「ケーキを食べる」の場合

(1)「美味しい!」と満足する→(1)「ポジティブ」で「すぐ」で「確か」

(2)「また食べちゃった」と後悔する→(7)「ネガティブ」で「あと」で「確か」

(3) 体重が増える→(8)「ネガティブ」で「あと」で「不確実」

 

「ケーキを食べる代わりにノーカロリーのガムを噛む」の場合

(4)「美味しくないし物足りない」と感じる→(5)「ネガティブ」で「すぐ」で「確か」

(5)「なんとか我慢できた」とほっとする→(3)「ポジティブ」で「あと」で「確か」

(6) 体重が減る→(4)「ポジティブ」で「あと」で「不確実」

 

Sさんにとって、本来最も重視すべきである体重が減るという結果は、「ポジティブ」ではあるけれど、かなり「あと」から表れるものですし「不確実」です。

ところが、「美味しい!」と満足するのは、「ポジティブ」で、しかも「すぐ」で「確か」なことなのです。

だから、Sさんはどうしても「ケーキを食べる」という行動を取ってしまうわけです。

挫折しないための「PST」な結果は、自分でつくれる!?

ここまでで充分に理解できたと思いますが、あなたが「始めた」1つの行動を、「続ける」に持っていくためには、PSTの結果、つまり「P=ポジティブ」&「S=すぐ」&「T=確か」に得られる結果が効果的に作用します。

この、PSTの結果は自ら用意するということもできます

それには、始めたことの本来の結果とは別のルートを模索するのも一法です。

新しいルートのイメージ画像

勉強にしろ、ダイエットにしろ、あなたが本当に欲しがっている結果は、「ポジティブ」ではあっても、どうしても「あと」&「不確実」なものです。だから、途中で挫折しやすいのです。

そこで、ちょっと違うご褒美を「すぐ」&「確か」に自分に与えてあげます

 

ある資格専門学校の講師は、公認会計士を目指して勉強する受講者に対して、「火曜日の午後だけ、ご褒美時間にしろ」と指導しています。

べつに、火曜日の午後でなくてもいいのでしょうが、1週間のうち、半日だけは思いっきり遊ぶことを提案しているのです。

そして、「その火曜日の終わりには、次の火曜日になにをして遊ぶかを決めてしまいなさい」とも言っています。

「公認会計士の資格試験に合格する」という「ポジティブ」な結果は、「あと」からのものだし、あまりにも「不確実」で、受講者のモチベーションがなかなか保てません

でも、「1週間頑張れば、次の火曜日には必ず○○ができる」というご褒美があれば、勉強を続けることができるわけです。

 

「1週間先だなんて、全然、すぐではない!」

というなら、その日のうちにご褒美を与えてあげてもいいでしょう。

「今日の朝、30分勉強できたら、仕事帰りにいつもより高い缶ビールを買おう」

「思いきってスポーツクラブに入会できたら、その足でかっこいいウェアを揃えよう」

「8時までカフェで参考書を読んで、それから映画を観に行こう」

なんでも結構。あなたがわくわくするようなご褒美を用いて、続ける仕組みをつくってみてください。

*   *   *

始めかたや行動科学マネジメントについてもっと詳しく知りたい方は、幻冬舎新書『始める力』をお求めください。

関連書籍

石田淳『始める力』

英会話、資格の勉強、ダイエット、禁煙など、始めたいのにできない人には共通の傾向がある。「次の機会に」が口癖、情報に振り回されがち、など。そんな人に向けて、頑張らない、小さなゴールを複数設定する、形から入る、モデルケースをなぞる、記録し「見える化」する、など17のヒントを紹介。行動科学マネジメントの第一人者が、誰がやっても同様の成果を出せる実践的メソッドで、始められない人の悩みも、始めたが続かない人の悩みも、スッキリ解消。あのときどうして始められなかったんだろう? と後悔しないための本。

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