古今東西の哲学から、マンネリを抜け出し、ものの見方が変わるノウハウを教えてくれる話題の新刊、『「当たり前」を疑う100の方法』。本書の著者で、異色の経歴を持つ哲学者の小川仁志さんは、「哲学は人生やビジネスに使えるツールである」と語ります。難解でとっつきにくいイメージのある哲学。そのイメージがガラリと変わるインタビューをお楽しみください。
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本はアウトプットするための材料
── お忙しい毎日だと思うのですが、先生はどんな方法で情報をインプットしているのでしょうか。
いまだに本がいちばん多いですね。以前、『アウトプット読書術』(星雲社)という本を出したことがあるのですが、本はアウトプットのための材料だと私は思っています。
どうすれば効果的に情報をアウトプットできるかを最優先しているので、ためらいなく書き込んだり、ふせんを貼ったり、折り曲げたりします。この部分を自分に印象づけて覚えたいと思ったら、ぐるぐるマルをつけることもあります。
── 古本屋さんには売れないですね。
絶対に売れないです。1行でも書き込んだら終わりですから。やらないのは破ることだけです(笑)。でも、それは愛なんですよ。自分のものにしたい、自分の身体の一部にしたいという思いでやっているんです。
同じ本を何回も見返すことがあるのですが、ぐるぐるマルをつけている場所を見ると、自分はこれを読んだときここがすごくいいと思ったんだよな、と記憶がよみがえります。
すると、さらに印象が強くなって、本を見返さなくても語れるようになったりする。つまり、ぐるぐるマルをつけたことによって、血肉になっているということですね。
── ふせんを貼ったところを見返したりもするんですか?
しょっちゅうあります。とくに哲学の古典の場合は、何回も読み返すことがありますね。原稿を書くときに引用することも多いので、ふせんがついているところは何回も見ています。
「この古典について語ってください」とか、本を要約して紹介するような仕事も多いのですが、さすがに最初からぜんぶ読み直すのは難しいですよね。そんなときは、ふせんをつけたところをバーっと見てアウトプットすることも多いです。アウトプットの下ごしらえをしておくようなイメージでしょうか。
哲学を好きになって人生を変えてほしい
── 先生はどのような経緯で哲学の研究を始めたのですか?
話すと10時間くらいかかるんですが(笑)、ダイジェストでお話ししますと、私はもともと商社で働いていたんです。
あるとき海外に赴任して、世の中を変えようとしている人たちの熱い姿を見る機会がありました。その姿に感動して、自分も世の中をよくするようなことがしたいと思ったんです。
そんな思いで会社をやめたのですが、当時はなんの能力もなく、人助けをしたくても何もできませんでした。変にプライドだけ高くて、それが邪魔をしてボランティアもできなかった。
それで挫折して、だんだん引きこもりのようになっていきました。心身ともに病んでしまって、そんなときに自分を立て直すために何かないかとすがるような思いで探していたら、哲学に出会ったんです。
他のものは「これを信じなさい」とか、「私についてきなさい」とか、そういったものばかりでした。でも、哲学だけは違っていました。「疑いなさい。そうしたら幸せになれる」と書いてあったんです。
どんどんのめり込んでいって、哲学を専門にやっていこうと決めました。そして、市役所で働きながら大学院で勉強することになったんです。
── すごい行動力ですね。
哲学のおかげですね。自分が哲学に救われたので、哲学者になってからも、哲学を専門的に勉強したことのない人のために、たくさんの入門書を書く活動をしています。
そして、それを自分のライフワークにしながら、かつてできなかった世の中をよくすることを、哲学を使ってやっているつもりです。
── 最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
私がどれだけお伝えしても、哲学ってまだまだ敬遠されがちなんです。それより経済のほうが役に立つとか、スポーツのほうが楽しいとか、そう思われて当然だと思います。
でも、こうして二千数百年もの間、受け継がれてきた学問ですから、やはり有益だと思うんです。私自身、人生に挫折して、哲学に救われた経験をしていますから。
私は、哲学というのは人生やビジネスに使えるツールだと思っています。どんな人にとっても役立つツールだと思うので、ぜひ哲学を好きになってもらって、人生を変えてもらえたらなと思います。
私はいろんな媒体で、いつも最後にこう言っています。「あなたの人生に哲学を」。たとえば、誰でもご飯を食べるし、服を着ますよね。それと同じように、哲学があってもいいと思うんです。
あるいは、部屋に花を飾ることもありますよね。人生に花があるって、素敵じゃないですか。それと同じようなイメージで、「人生に哲学を」と言っているんです。
「あなたの人生に哲学を」。この言葉を、最後のメッセージとしたいと思います。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】小川仁志と語る「『「当たり前」を疑う100の方法』 から学ぶものの見方が変わる哲学思考」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書
AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。
『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。
幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。
この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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