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今宵も、夢追い酒場にて

2024.06.21 公開 ポスト

「トイレ行ったん誰や!」普段は優しい尼神インター渚さん唯一の怒りポイントは…薄幸(納言)(芸人)

お笑い男女コンビ「納言」薄幸さんの初著書『今宵も、夢追い酒場にて』。大酒飲みで知られる薄幸さんの笑いに満ち溢れた酒エピソードを収録した本作品から一部を特別公開! のんべえの人はもちろん、下戸の人も酔ったみたいに楽しくなれるおつまみ話を、ぜひご賞味ください。

何をしても怒らない尼神インターの渚さん

イメージもあって、初めは説教されんじゃないかとビビり倒したけど、仲良くなると渚さんは本当にあったかくて優しい姐さんだった。何をしても怒らない。

一度、飲酒ロケ終わりに渚さんに飲みに誘って貰った事がある。

まだ時間も早かったし、もちろん飲みたい私は「行きます」とLINEを送り、渚さんの居る店までタクシーで向かった。

飲酒ロケで思ったより酔っていたのだろう。タクシーに乗ってから、しばらく経った頃に気付く。携帯と煙草以外、なーんにも持っていなかった。財布も持ってないくせに、生意気にタクシーで向かっていた。

店に着く頃に渚さんに電話をする。

「すみませ~ん! 財布忘れました! タクシー代お願いします!」

クソの極みだ。

そんなクソの極みにも渚さんは、

「ああ、分かったわー」

そう言ってタクシーまで来てくれて、タクシー代を払ってくれた。

もう店に入ってからは、何の記憶もない。携帯と煙草だけ握りしめて、ほぼ寝ていたのだろう。

後日渚さんから聞くと私は店に着いて1、2時間で、

「もう限界ですよ~帰りましょう~」

そう言ってまた帰りのタクシー代を貰って帰宅したらしい。

財布もない奴が頼んでもないのにタクシーで来て、タクシー代を払って貰った上に短時間で限界を迎え、帰りのタクシー代を奪って帰る。

こんな奴全然袋叩きにしたって問題ない。何を帰りもタクシーで帰ってんだって話だよ。電車で帰れ。いや、時折道ゆく人に土下座をしながら徒歩で帰れ。

そんなアホッタレ後輩なのに、渚さんは懲りる事無くいつも飲んでくれる。

怒りポイントそこっすか!?

そんな優しい渚さんだけど、怒っている姿を見た事が一度だけある。

ルームシェアをしていた家に来てくれた時、渚さんが2階にあるトイレへと上がった。

トイレを済まし、2階から1階のリビングに戻って来る渚さんの階段の足音が、何だかいつもより大きい。

どうしたんだろう? 何だか嫌な予感がする。

リビングに戻るやいなや、渚さんが強めの口調で聞く。

「うちの前にトイレ行ったん誰や!」

「はい、僕です」

同居人の大原さんが自首をする。

「うんこしたか?」

何て下品な質問なんだ。

「しました」

大原さん、うんこしてた。

「うんこした後トイレットペーパーちょっとだけ余らすなや! あんだけなら取り替え! まあ予備のトイレットペーパーあったからええけどやあ」

めちゃくちゃ怒ってた。

怒っている渚さんの姿を見たのはこの一度きり。

トイレットペーパーには厳しい人だった。

 

渚さん以外の関西人は躊躇する、豹よりも豹柄のシャツとか、誰を殺してきたんだって位のどす黒い赤のジャージとかを好む、一見怖そうな渚さん。

でも、仲良くなると信じられない位優しい最高の先輩だった。

何をしても怒らない渚さん。

ただ、トイレットペーパーを少しだけ余らせて取り替えないと、信じられない位怒られる事は、渚さんに関係する全ての人に覚えておいて欲しい。

関連書籍

薄幸(納言)『今宵も、夢追い酒場にて』

オズワルドや空気階段ら同じ第7世代の愛すべきのんべえ姿から、カズレーザー、尼神インター渚らとの先輩芸人たちとの抱腹絶倒酒エピソードを収録。その一方、夢を挫折した過去、今は会えないあの人への思いも綴っている。

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今宵も、夢追い酒場にて

やさぐれ女芸人、初の著書は「芸人×お酒」の笑いに満ちた酔いどれエッセイ!
酒好きはもちろん、下戸でも愉快に。おつまみ気分で楽しめる1冊、ぜひお召し上がりを。

大酒飲み、ヘビースモーカーなやさぐれキャラとして大注目の、お笑い男女コンビ『納言』のみゆき。味のある文章を書くことでも話題をよび、このたび満を持して初の著書を上梓!  本書は、みゆきの日常に欠かせない「芸人×お酒」の2つを合わせた酔いどれエピソードを収録。オズワルド、インディアンス、ジェラードン、空気階段といった同じ第7世代との酒場交流。さらに、カズレーザー、尼神インター渚、バイク川崎バイク、トレンディエンジェルたかしら愛すべき先輩芸人との抱腹絶倒飲みエピソードも。一方で、かつて挫折した役者の夢、今は会えないあの人への想い、普段は口にしない相方への思いなど、酔いにまかせた意外な本音も綴っている。

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薄幸(納言) 芸人

1993年生まれ、千葉県出身のお笑い芸人。小学5年生から子役養成事務所に入るも、16歳のときに女優の夢を断念。以後、芸人を目指し、2015年テレビ番組内でビートたけしより現在の芸名を拝受。2017年に安部紀克と『納言』を結成。「三茶の女は返事が小せえな」「渋谷はもうバイオハザードみてえな街だな」など、街のディスりネタで人気に。令和の時代に珍しいほどのヘビースモーカーな様子や大酒飲みのやさぐれキャラクターでも注目を集める。『今宵も、夢酒場にて』が初の著書。

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