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今宵も、夢追い酒場にて

2024.05.31 公開 ポスト

トム・ブラウン布川さんが納言みゆきにタメ口で話すようになったきっかけは…薄幸(納言)(芸人)

お笑い男女コンビ「納言」薄幸さんの初著書『今宵も、夢追い酒場にて』。大酒飲みで知られる薄幸さんの笑いに満ち溢れた酒エピソードを収録した本作品から一部を特別公開! のんべえの人はもちろん、下戸の人も酔ったみたいに楽しくなれるおつまみ話を、ぜひご賞味ください。

恋愛ドラマの企画で○○の話をしてくる布川さん

パパ芸人の中だと、トム・ブラウンの布川さんがダントツで一緒に飲む事が多い。

どういう人生を歩んだらそんなに人に優しくなれるのか不思議な位優しくて、誰に対しても腰の低い布川さんは、ほとんどの後輩に敬語で話す。

2年ほど前、ライブの打ち上げで一緒に飲んだ時、自分では全く覚えていないのだが、布川さん曰く、私が居酒屋で、とてもじゃないけど女から出る音ではない湿っぽい屁をしたらしい。

その瞬間布川さんは、

「こんな湿っぽい屁をする奴に、敬語を使っている場合じゃない」

そう思ったらしく、その日からタメ口で話してくれる様になり、その日からよく一緒に飲んでくれる様になった。湿っぽい屁をして良かった。

 

そこまでは良かったけど、先日『お願い!ランキング』でトム・ブラウンさんと一緒になった時。

どうしてそんな事するのか訳分からないのだが、収録中に布川さんは堂々たる態度で、私の湿っぽい屁の話をしてきやがった。あんなポップな番組で、湿っぽい屁の話なんて使われる訳ないじゃないか。MCから「みゆきさんは湿っぽい屁をするの? どうでしょうか、布川さん?」そう質問されたのなら分かる。そうじゃない。恋愛ドラマを作って演じる企画だ。

実際の質問は「みゆきさんの恋愛の演技良かったよね? どうでしょうか、布川さん?」だ。

その返答が「そうですね! みゆきは、湿っぽい屁を~」。

……何でよ? 

QとAが違うじゃん。湿っぽい屁をする奴だとスタジオに居る人だけにでも伝われば。そう思って話したとしか考えられない。

もしかしたら、布川さんも優しくないのかもしれない。

ちょっとだけ不器用な布川さん

トム・ブラウンさんとは、地方の営業で一緒になる事が度々ある。

昔、営業の帰りの新幹線でたまたま布川さんと隣の席になった時。せっかくだし一緒に飲みながら帰ろうと、新幹線に乗る前の駅のホームで布川さんが2本ずつ酒を買ってくれた。

新幹線の席で飲み、お互い酒が2本目の残り3割位になったタイミングで、もう1本車内販売の酒を買い足そうという事になった。

キョロキョロ辺りを見回す。

ちょうど行ってしまった所なのだろう。売り子さんが全然来ない。どんどん減るお酒。待てど暮らせど来ない売り子さん。

すると突然「わ」と、でっかい布川さんから、ちっさい悲鳴が上がる。

慌てて布川さんの方を見ると、布川さんが缶に口をつけている。

缶に口をつけている、というのは、飲み口に口をつけている訳じゃない。

缶の周り。缶の上じゃなくて缶の横。本来ならば手で持つ所に口をつけている。

何をしているんだ、この人は。売り子さんが来ない不安と焦りで、おかしくなっちゃったのか? 

困惑する私に、布川さんが言う。

「何か穴開いちゃった」

詳しく聞くと、おかしくなっちゃった訳じゃなくて売り子さんが来ない不安と焦りから、自然と通常の数十倍の握力が入り、気付いたら缶に穴を開けてしまっていたらしい。

穴から酒が溢れちゃうから、缶の横から酒を飲んでいただけなんだとか。やっぱ、おかしくなっちゃっていた。

1滴もこぼす事無く見事酒を飲み干した器用な怪力男は、その後行った荻窪の居酒屋で、ちょっとだけ切れた口をずっと押さえていた。

ちょっとだけ不器用だった。

関連書籍

薄幸(納言)『今宵も、夢追い酒場にて』

オズワルドや空気階段ら同じ第7世代の愛すべきのんべえ姿から、カズレーザー、尼神インター渚らとの先輩芸人たちとの抱腹絶倒酒エピソードを収録。その一方、夢を挫折した過去、今は会えないあの人への思いも綴っている。

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今宵も、夢追い酒場にて

やさぐれ女芸人、初の著書は「芸人×お酒」の笑いに満ちた酔いどれエッセイ!
酒好きはもちろん、下戸でも愉快に。おつまみ気分で楽しめる1冊、ぜひお召し上がりを。

大酒飲み、ヘビースモーカーなやさぐれキャラとして大注目の、お笑い男女コンビ『納言』のみゆき。味のある文章を書くことでも話題をよび、このたび満を持して初の著書を上梓!  本書は、みゆきの日常に欠かせない「芸人×お酒」の2つを合わせた酔いどれエピソードを収録。オズワルド、インディアンス、ジェラードン、空気階段といった同じ第7世代との酒場交流。さらに、カズレーザー、尼神インター渚、バイク川崎バイク、トレンディエンジェルたかしら愛すべき先輩芸人との抱腹絶倒飲みエピソードも。一方で、かつて挫折した役者の夢、今は会えないあの人への想い、普段は口にしない相方への思いなど、酔いにまかせた意外な本音も綴っている。

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薄幸(納言) 芸人

1993年生まれ、千葉県出身のお笑い芸人。小学5年生から子役養成事務所に入るも、16歳のときに女優の夢を断念。以後、芸人を目指し、2015年テレビ番組内でビートたけしより現在の芸名を拝受。2017年に安部紀克と『納言』を結成。「三茶の女は返事が小せえな」「渋谷はもうバイオハザードみてえな街だな」など、街のディスりネタで人気に。令和の時代に珍しいほどのヘビースモーカーな様子や大酒飲みのやさぐれキャラクターでも注目を集める。『今宵も、夢酒場にて』が初の著書。

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