僕らは「やったほうがいいこと」に囚われすぎている
「結局、今日もゆっくりできなかった…」
誰もが休日終わりに感じたことがあるのではないでしょうか。
将来が不安だからと、お金の勉強の動画に見入ってしまったり、取引先の商談の話題ででたアメリカ大統領選について、さわり程度は知っておいたほうがいいと関連記事を深ぼってしまったり、ふと頭をよぎった週明けの仕事のミーティング資料を確認してしまったり…。
だらだら過ごしていたつもりはないのに、どこかにいってしまったゆったりする時間。そこには「やったほうがいい」と考えてしまう「better志向」の存在が隠れています。
「better志向」が悪いと一方的に否定するつもりはないのですが、本連載のテーマは「余白」なので、「余白を取り戻す練習」という視点で日々の行動を見直してみると新たな発見があるかもしれません。
日本人は上限設定が苦手?!
「日本人の特徴をひとつだけ挙げよ」と言われれば、「カイゼン好き」と答えています。「トヨタ式カイゼン」が有名ですが、「カイゼン」は「kaizen」は英語の辞書に掲載されています。少しでも「より良く(better)」を継続的に目指す日本人の精神があるおかげで、日本は世界でトップクラスの経済大国になりました。
カイゼンを繰り返そうという「better志向」は日本人の素晴らしい武器でもありますが、逆にいえば「上限設定が苦手」ということでもあります。「足るを知らない」ともいえるかもしれません。
例えば、飲み会のお店を選ぶときに「betterな選択」をするために、いろんなサイトのレビューをチェックしたり、SNSの口コミを見たりして、気がついたら時間がたってしまっていたなんてことはありませんか?
フィジーで生活をしている私は、この辺りはとっても楽ちんです。商品や店など、選択肢が圧倒的に少ないからです。あれこれ比べる時間が必要なく、あっという間に決断できます。
脱「better志向」
日本のように選択肢が豊富なことは一見良いようですが、豊富すぎることに余白を奪う「罠」が潜んでいます。「これで十分に満足だ」という「enough志向」をもっていないと、さきほどのお店選びのときのように時間をどんどん奪われてしまいます。
「Time is Money」ではなく「Time is Life」です。
余白を取り戻すために、まずは「その“better”は時間(命)を捧げるに値するものなのか?」と自問することを習慣化していくことから始めていくのがいいと思います。
例えば、私たちの行動には大きく分けて以下の3つがあるとします。
(1)やらなければならないこと(must)
(2)やったほうがいいこと(better)
(3)やらなくていいこと(no need)
多くの人は「1>2>3」という優先順位をつけると思いますが、
「1>2>3」という優先順位で考えていると、2が底なし沼になりがちです。
ちなみに私は余白を得るために「3>1>2」で考えるようにしています。
え?「やらなくていいこと」が最優先?やらなくていいことは、やらなくていいやろ?そう思われることでしょう。
私の場合「やらなくていいこと」の代表格は「将棋」です。趣味の1つとしてフィジーにいながら世界中の人とオンライン対局を楽しんでいます。間違いなく「やらなくていいこと」です。
対局に没頭しているとき、周囲の雑音から切り離されて日常の義務や責任から解放されています。余白とは、単に何もしない時間を指すのではなく、損得勘定抜きに心から楽しみ、自己充電できる時間でもあります。「やらなくていいこと」を意図的に選んで実践することは、自由な時間の過ごし方として究極の贅沢です。このような自由を感じることができると、それが精神的な余裕やリラックスへと繋がっていきます。
お金の運用も、早めに勉強し始めたほうがいい。
アメリカ大統領選のニュースも、知らないよりは知っといたほうがいい。
飲み会も、納得のいくお店で開催できたほうがいい。
それはそのとおりです。
でも、「やったほうがいい」=「better志向」は最強の時間泥棒であることもお忘れなく。
スケジュール帳が「must」と「better」の予定ばかりで埋まっていませんか?
もし「better志向」の傾向が強いと感じるのであれば、「enough志向」を意識してバランスをとっていきましょう。そして、「やらなくていいこと」にもう少し目をむけて、日常に余白を取り戻してみてください。
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余白をつくる練習
効率的に仕事をしても、それで空いた時間に別のことを入れて、一向にタスクが終わらないと感じたことがある人も多いはず。
私たちはいつになったらゆったりした時間を持てるのでしょうか。
世界100カ国を旅したあと、世界幸福度ランキング1位のフィジー共和国へ移住した著者が伝える、人生に自分時間を取り戻す「余白のつくり方」。