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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2024.06.28 公開 ポスト

あらゆる宗教はカルトから始まる…宗教学者が教える「宗教とカルトの違い」とは?武器になる教養30min.編集部

安倍晋三元首相の銃撃事件以降、「カルト」がますます問題視されるようになりました。しかし、みなさんは「宗教」と「カルト」の違いをきちんと説明できるでしょうか……? 『日本の10大新宗教』につづく人気シリーズ第2弾『日本の10大カルト』の中で、「あらゆる宗教はカルトから始まる」と指摘する宗教学者の島田裕巳さんに、わかりやすく解説していただきました。

*   *   *

キリスト教もかつては「カルト」だった?

──本書の成り立ちについて教えてください。

以前、『日本の10大新宗教』という本を幻冬舎新書から出したのですが、このときは世の中から「カルト」と呼ばれている集団については取り上げませんでした。

ところが、安倍晋三元首相の銃撃事件以降、旧統一教会を中心にカルトが問題視されるようになりました。そこで、前回の本では取り上げなかったカルトについて、改めて考えてみようと思ったんです。

 

──宗教とカルトはどう違うのでしょうか。

本書にくわしく書きましたが、はっきり分けることはできないと思います。そもそも宗教にはある種の反社会性というか、社会に対して抵抗する意味合いが込められています。言ってみれば、すべての宗教はカルトから始まるのではないでしょうか。

キリスト教も、当時の社会からはカルトと見なされていたがゆえに、あれだけ弾圧を受けたわけです。それが時代を経るにしたがって、カルト性を弱めていった。あらゆる宗教は、こうした道筋をたどるものと考えています。

 

──初期キリスト教もカルト、初期イスラム教もカルト、釈迦が死んだあとの仏教もカルトだと、この本には書かれていますね。

今回、取り上げたカルトと呼ばれる団体も、今すぐに危険な行動に出たりするわけではありません。ところが、世間の多くの人は内情をよくわかっていません。本書で内情を知っていただいたうえで、みなさんには判断してもらいたいと思っています。

 

──定義も線引きも難しい中で、カルトという言葉がなんとなく使われていますが、簡単に説明するとしたらどうなりますか?

カルト(Cult)という言葉には、もともと「熱狂」という意味合いがあります。ですから、「熱狂的な集団」という言い方はできるでしょう。天理教などの新宗教は、時代を経るにしたがって穏健化していきました。その穏健化がまだ十分に始まっていないのが、カルトと言えるかもしれません。

そして、その熱狂を支えているのが教祖です。カルトにとって、教祖という存在は非常に大きい。信者たちが教祖に対して熱い信仰を持っている段階の集団が、カルトと言えるのではないでしょうか。

 

──イエスの弟子たちはキャラクターも立っているし、話もうまそうだし、熱心な弟子たちがつくり上げたと言えそうですね。

パウロが典型ですね。パウロがいなかったら、キリスト教はローマ帝国に広まらなかったと言われていますから。ということは、世界宗教になることもなかったわけです。ユダヤ教という民族宗教の段階で終わっていたかもしれない。布教する信者の存在は非常に大きいと言えるでしょう。

「カレーライス」でカルトに入信?

──カルトや新宗教の信者の増加と、その国の景気や経済状態は関係あるのでしょうか。

関係していると思います。日本の場合、高度経済成長と呼ばれる1950年代半ばから70年代の初めくらいの時期に、創価学会をはじめとする新宗教が急速に拡大しました

韓国は日本に遅れて経済成長しましたが、そのとき広まったのはキリスト教でした。といっても韓国のキリスト教は新宗教やカルトに近いもので、統一教会もそのとき規模を拡大しています。

 

今だと中南米で起きていることが近いと思います。中南米というとカトリックのイメージが強く、ブラジルはカトリックの牙城と言われるくらい多くの信者がいます。ところが今、プロテスタントの福音派やペンテコステ派という、キリスト教の中でも熱狂的な信仰が盛んになっています

既成宗教は基本的にムラの信仰で、共同体の中で信仰されてきました。ところが中南米では今、経済発展によって都市に出る人が急速に増えています。

共同体から離れる、あるいは共同体が解体されることによって、新たなコミュニティを求める人々がこれまでとは異なる信仰へ向かう。それはいつの時代も、どこの国でも共通していると思います。

 

──その原動力となるのは、やはり寂しさですか?

はい、一番大きいのは寂しさや孤独だと思います。地方で暮らしていると、みんな生まれたころから知り合いで、密な人間関係がありますよね。ところが、都市に出てしまうと自分を支えてくれる人間関係がありません。

 

──地方から東京に出てきた大学生が勧誘を受けやすいのも、同じ理由ですね。

旧統一協会の場合、「ホーム」と呼ばれる共同生活の場があります。勧誘した学生をそこに呼ぶのですが、そこで何をするかというと、カレーライスをご馳走するんです。これがどうも効くみたいです。

 

──学食のカレーとは違った味がするんでしょうね。

みなさんはカルトに対して恐ろしいイメージを持っているかもしれませんが、現実のカルトは新しく来てくれる人に対してすごく親切です。この親切さが、カルトが人を引きつける理由の一つだと思います。

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】島田裕巳と語る「『日本10大カルト』から学ぶ客観的な宗教の見方〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら

書籍『日本の10大カルト』はこちら

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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。

幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。

この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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武器になる教養30min.編集部

AmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』を制作する編集部です。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにした番組です。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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