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次元上昇日記

2024.06.25 公開 ポスト

2024年6月21日 200年前の風習辛酸なめ子

大森貝塚を発見したモース博士についてのページを読んでいたら、江戸時代末期から明治時代にかけての若い男女についての記述がありました。(本のタイトルは『外国人が見た古き良き日本』)

「娘は必ず一人でいるか、他の娘と一緒にいる か、母親と一緒にいるかである。青年が異性の一人に向ってお辞儀をしているのを見ることさえ稀である」

江戸時代は男性は、好意を抱いた女性のお尻をつねってアプローチしたそうですが、明治になってくると禁欲的になるのでしょうか。

 

モース博士は、福井氏という青年に、若い女性の知人はいるか、一緒に博覧会に行こうと言える相手はいるか聞きました。すると「若い娘なんぞは只の一人も知らない」と答えたそうです。モース博士は、米国では若い男子が女子を、馬車遊山やピクニック、音楽会、帆走(ヨットでしょうか)などに誘うと話したら、福井氏は「そのような社会的風習は日本では知られていない」とびっくりしていたとのこと。とにかく男女が自然に知り合う機会が少なく、友人を訪問した時に妹や姉などがいても、彼女は丁寧にお辞儀をして座を外す、という風習が。また、往来で偶然出会えば、娘は日傘なり雨傘なりを低く傾け、彼は顔をそむける。これはとくに武士の家で見られた習わしだそうです。傘は異性に顔を見られないためにあったんですね。いつか活用したいです。モース博士が別の男性にも聞いたら、「自分は、 若い淑女は只の一人も知らぬ」という硬派な答えが返ってきたとか。「男女7歳にして席を同じくせず」という論語の教えの影響があったのでしょうか。

夫婦で一緒に道を歩くときは、妻が5フィート~10フィート(1.5~3メートル)後ろを歩いていたそうです。明治頃から男性が上、という思想になってしまったのでしょう。

そんなストイックな世の中で、どうやって男女が出会っていたのかというと、友人や親族など信頼できる人の紹介が多かったようです。ある男性が結婚したい意思を告げると(女性主導のケースはなかったのでしょうか)、友人や親類が動いて、ふさわしい女性を探し出して、まずは家族と文通し、自分の希望などを述べます。そのあと実際に会って、良さそうだったら話が進むそうです。

モース博士が話を聞いた日本人男性は、「米国風に男女が知り合うと、女性側は男の心を引くように装うので真実と違う姿になる」と話し、信用できる人が身辺を調べた上で知り合うのが一番良いという価値観だったそうです。たしかにマッチングアプリなども男女とも盛った写真やプロフィールを載せていそうです。

モース博士が観察したところによると、こうして紹介やお見合いで知り合った夫婦は穏やかで幸せそうだった、とのことでした。東京都でマッチングアプリの事業が始まりましたが、友達同士で入会し、友人に良さそうな人をすすめる機能とかあったら、良い結果に結びつくかもしれません。

先日観た、東京ステーションギャラリーでの「どうぶつ百景」も、江戸時代や明治時代の風習が興味深かったです。明治時代にあったという、レールの上を馬車が走る「馬車鉄道」などにも驚きました。これが「馬車馬のように働かせる」の語源になったんですね。江戸時代は、虫の声を聞いたり、「うずら合わせ」といううずらの鳴き声を競い合う遊びがあったり、猫カフェの元祖かもしれない鹿見茶屋や孔雀茶屋があったそうです。

江戸時代について興味が高まったのは、江戸時代の川柳についての本の仕事をしていたからかもしれません。原稿を書きはじめて10年くらい、途中5~6年、寝かされた時期を経て、ついに『川柳で追体験 江戸時代 女の一生』(三樹書房)を出させていただけることになりました。気付いたらこちらも時代の変化で、印刷代や物流代、紙代などが上がったそうで本の値段が2600円(税抜き)と心苦しいですが……。カラー図版も入っていてページ数も多めだということを申し上げさせてください。江戸時代のご先祖への尊敬がわいてきて先祖供養にもなるかもしれません。

書店さん用のサインをカードに書かせていただきました。7月初旬、お見かけしたら何卒よろしくおねがいいたします。

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辛酸なめ子

近著に「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「無心セラピー」(双葉社)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)、「女子校礼讃」「辛酸なめ子の独断! 流行大全」(中公新書ラクレ)など。

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