広告の嵐!日本で抱く違和感
フィジーから日本に帰国すると、いつも感じることがあります。それは、大量の「広告」が視界に飛び込んでくることです。
ネットやテレビの広告はもちろん、街を歩いているときに見かける看板やポスター。電車に乗っているときも、中吊り広告やデジタルサイネージなど、常に商品をアピールしてきます。
観光で日本にやってきた友人のフィジー人(30代男性)と一緒に電車に乗っていたとき、広告の異様な多さに興味をもった彼が「この広告には何て書いてあるんだ?」と尋ねてきました。
それはシワ取り治療の広告で、「おもいきり笑うためにシワを取ろう」ということが書いていると伝えると、彼の反応は「日本ではシワがあると笑ってはいけないのか?」と不思議そうでした。
フィジーでは、日本ほど広告を見かけることがありません。予算的なものもあるかと思います。日本では著名人やモデルさんが使われるテレビCMも、フィジーだとその辺にいる一般の方が演じていたりします。それに、商品がそれほど魅力的でもありません。たとえば絵葉書。フィジーは観光立国であり、ビーチはとても美しいのですが、それを伝えるべき絵葉書の写真も、画像が荒かったり、そもそも素人レベルの人が撮影した感じだったりと、あまり買いたいと思えません。
広告が悪いと主張したいわけではありません。
ただ、世の中にあふれる広告には「今のあなたは足りていないよ」というメッセージが含まれています。「あなたは不完全なんだからこの商品を買うべきなんだよ」と広告は僕たちに訴えてきます。
あなたは足りていない、あなたは足りていない、あなたは足りていない…。
そんなメッセージを集中砲火されたら、自己肯定感が下がり続けますし、高いお金を払ってでもその商品を購入したくもなります。特に、日本の広告はキャッチコピーの巧みさや、写真・映像の美しさなど、フィジーの広告と比べると、圧倒的にクオリティが高く、とてもに誘惑性が強いと感じます。以前の記事(時間泥棒「やったほうがいい」に要注意!)でも書いたように、日本人はカイゼンを繰り返そうという「better志向」が強いため、「あなたは足りていない」というメッセージが刺さりやすいのかもしれません。
人生の貴重な時間を使って獲得したお金。それを投じて商品を買うわけですから、自分にとって本当にその価値があるのかの見極めも大切です。精度の高い広告によって不安をあおられ、お金を溶かしてしまうのは避けたいところ。またお金を補充すべく、仕事時間を増やすなどして、余白タイムが減ってしまいます。
価格帯の高い商品であれば、購入するかどうか、即断はなかなかできません。悩む時間も消費しますし、スムーズに選択できず、決断を先延ばししてしまう自分自身に無力感を抱いたりと、悪いスパイラルに入ることもあります。広告は僕たちの時間を奪うだけでなく、精神的な余裕も奪っていきます。
広告に惑わされないために、「知足変化」でいこう
日本の秀逸な広告に翻弄されないために僕たちは何ができるのでしょうか。
例えば、電車内で広告を見ないように目を閉じて瞑想するのも一つの方法ですし、YouTube Premiumなど有料プランに加入して広告なしで動画配信サービスを視聴するのも良いでしょう。
ですが、五感に押し寄せてくる広告をすべてシャットアウトするのはほぼ不可能です。
そこで重要になってくるのが、「ありのままの自分でいい」と自己肯定感を高めるメッセージを自分で作り出すことではないでしょうか。キーワードは“足るを知る”です。
僕はオンラインスクール「余白と変化の学校」を運営しています。そこで掲げている校訓は「知足変化」です。四字熟語として辞書に載っている言葉ではなく、造語です。
この意味は「“知足=足るを知る”を大前提として“今のままの自分で十二分”という満足感をもち、それを噛み締め、そのうえで変化へと進んでみよう」というニュアンスです。
今の時代、リスキリング、アンラーニング、DXなど、社会からいろんなタイプの変化の圧力を感じます。自分が納得した前向きな変化ならいいのですが、「足りていない」や「やらなければ」という不安感や義務感で変化しようとして、「足るを知る」という感覚をスキップし続けると、徐々に心の余裕が消えていきます。
広告に目を奪われたら「ありのままでいいんだ」ということを思い出して、商品が「本当に自分にとって必要なのか」をあらためて考えてみてください。
「あなたはそのままでいい」
そんなメッセージを真っ直ぐに伝えてくれる友人がいたら、それは大きな支えになります。フィジーの人たちは、言葉よりもハグでそのメッセージを伝えてくれることがよくあります。
広告は皆さんに商品を買わせるために、心を揺さぶってきます。
「あなたは足りていない」の波に飲み込まれることなく、自分が本当に必要なことに使える余白時間を死守していきましょう!
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余白をつくる練習
効率的に仕事をしても、それで空いた時間に別のことを入れて、一向にタスクが終わらないと感じたことがある人も多いはず。
私たちはいつになったらゆったりした時間を持てるのでしょうか。
世界100カ国を旅したあと、世界幸福度ランキング1位のフィジー共和国へ移住した著者が伝える、人生に自分時間を取り戻す「余白のつくり方」。